東京ベイ臨床検査室の窓から  〜患者さんの血液や尿、組織が採取された後〜

こんにちは、臨床検査室です!
突然ですが、臨床検査技師という職業をご存じでしょうか?
恐らく皆さまには馴染みの少ない名前ではないかと思います。
私たち臨床検査技師は、“検査”と名前がついているように、様々な検査を行っています。
どんな検査をするかというと、大きく以下の2つがあります。

①採取された検体(血液、尿、組織など)の検査
②心電図やエコーなど、直接患者さんに接して行う検査(レントゲンやCTなど放射線を扱うものは除く)

当センター臨床検査室では検体検査室、微生物検査室、病理検査室、生理機能検査室の4部門が活躍しています。
体の中の見えない変化を捉え、医師へ報告することで、病気の診断や治療のお手伝いをしています。

今回は、①検体の検査 に関わる3部門についてご紹介させていただきます。

1.検体検査室

ほとんどの方は今までに一度は採血・採尿をした事があると思いますが、それら一般的な検査は、ほぼこの検体検査室で行われています。
健診で、「血糖やコレステロールの値が…」、「貧血があった」、「尿蛋白が引っかかっちゃった」などよく耳にしませんか?
こういった、血液や尿中などに含まれる様々な成分の検査や細胞の観察、輸血に関する検査を行っています。

検査機器によってほとんどの検査は自動化されており、人の手はあまり必要のないように感じられます。
しかしそれらの検査は多くの反応原理を利用して測定されるため、各々の特性を理解して検査を行わないと予期せぬ異常な検査結果となり、診療の妨げとなってしまう場合があります。
そういった異変に気がつく事ができるのは人である臨床検査技師だけです。
患者さんへの適切な医療の提供のため、集中してデータを確認し迅速かつ正確な検査結果を返すことのできるよう努めています。
また、命に関わるような異常な検査値が認められた場合は医師へ電話連絡し、すぐに患者さんの容体を確認できるような体制をとっています。
当検体検査室は24時間体制で検査技師が常駐しているため、外来・入院、あるいは救急外来の緊急検査や輸血にいつでも対応可能で、夜間でも日中と同様に検査を受けていただくことができます。
緊急時には医師や看護師から連絡があり、結果を至急報告して迅速な治療へ繋げることで、患者さんの命を守るお手伝いをしています。

2.微生物検査室

微生物検査室ではその名の通り、微生物に関する検査を行っています。
具体的には、細菌や真菌感染疑いの患者さんより採取した検体から原因となる菌を見つけ、どの抗菌薬が効くのか、効かないのかを検査しています。
医師はその検査結果を参考に患者さんに最適な抗菌薬を選択します。

また、感染対策チーム(ICT)の一員として活動も行っています。
ICTは院内で起こる感染症から患者さんとそのご家族、職員の安全、安心を守る事を目的とし構成された組織です。
医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師からなり、手指消毒や感染予防策が適切に行われているかの監視や指導を行います。
その中で微生物検査室は院内感染の発生時に情報発信の拠点となる為、耐性菌(抗菌薬が効かない菌)が検出された場合は医師やICTに迅速な報告を行います。
異常に早く気が付く事で、耐性菌の集団発生の予防や早期発見、そしてその対策を可能にします。
さらに耐性菌などの発生状況を集計した週報や月報を定期的にICTに配信することで、院内での感染拡大を防ぐことに役立てています。

3.病理検査室

病理検査室では、患者さんから採取された検体(組織や細胞)に様々な処理を施して標本を作製し、病理医が顕微鏡下で標本を観察し病理診断(組織診断と細胞診断があります)を行います。
最近では長瀬智也さん主演のテレビドラマ“フラジャイル 病理医岸京一郎の所見”の影響もあり、病理検査について知っている方も少なくないのではないでしょうか?
スーパー検査技師として森井という役が登場しています。
病理診断の二つの柱、組織診断と細胞診断の違いについてお話します。
まず組織診断を行うためには病理標本が必要です。
そのため私たち病理の検査技師は得られた検体を用いて標本を作製します。
手術などで摘出された組織を蝋で固め、数μmの厚さに薄切りにします。
それをスライドガラスに載せ、染色液で染めて標本が完成します。

病理医が正しい診断ができるように標本作製技術を磨き、常に精度の高い標本作製に取り組みます。

また細胞診断は、尿や喀痰など比較的侵襲の少ない検体が対象です。
細胞を集めてスライドガラスに載せて染色したものが細胞診断標本です。
馴染みの近いものだと、婦人科の子宮がん検診がこの検査にあたります。
当センターの技師は細胞検査士の資格を取得しています。
細胞診では標本作製に加えて異常な細胞が出ていないかチェックして病理医の診断をサポ-トするのも私たちの仕事です。

以上、臨床検査室では3部門に分かれて、日々患者さんが最適な治療を受けられるよう迅速かつ高い精度で検体検査を行います。

みなさま毎回の検査結果に一喜一憂することがあると思いますが、もしそれがでたらめなものだとしたらどうでしょう?
毎回バラつきなく正確に検査を行うことは、例えるならばダーツの矢を毎回的の同じ場所へ当てるような、なかなか難しいことです。
全ての検査でそれを可能とするために、検査機器の入念な整備や、スタッフ一同検査手技の均質化などに努めています。
正確で迅速な結果報告をもって診療に貢献することが、患者さんの安全と安心に結び付くと考えます。

今回お話した検査に関わる技師は残念ながら患者さんと直接対面することがほとんどありませんが、当センター2階にある検体検査室はガラス越しにその様子を眺めていただくことができます。
他病院では見られない、縁の下の力持ち、臨床検査技師の仕事風景をお時間のある方はぜひ覗いてみて下さい!

次回は②の検査を行っている生理機能検査室についてご紹介する予定です。お楽しみに!

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 臨床検査室

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