※本記事の全ての写真については、ご本人の許可を頂いて掲載しております。
皆さん、こんにちは。
リハビリテーション室から情報を発信させていただきます。
まず、リハビリテーション室の紹介をさせていただきます。
当センターのリハビリテーション室の構成は、リハビリテーション科医師2名、理学療法士17人、作業療法士4人、言語聴覚士2名、リハビリテーション室受付1名の合計26人と充実した体制でかつ、アットホームな雰囲気と勉強熱心なところが持ち味です。
今回は、患者さんに対して安心と安全の医療を提供していく過程の一つにある、リハビリテーション室と病院との連携をテーマとして活動の一部を紹介していきます。
〇健康を考える
早速ですが、ここで問題です。
皆さんの考える健康とはいったいどんなものでしょうか?
WHO(世界保健機関)が定義している“健康”の定義について見てみましょう。
WHOによると、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」としています。
ここでのポイントは、病気だから不健康、ではないということであり、肉体的な側面、精神的な側面、そして社会的な側面それぞれへのアプローチによって健康を再構築することが可能ということ。
ご入院される患者さん、外来受診で来られる患者さんから、このような声を聴きます。
「こんな病気になっちゃったから、自信がなくなっちゃったわ」、「退院しても病気と一生付き合っていかないといけないし不安になってしまう」と。
病気を持っているから不健康、そういった考えも出てきてしまうのは誰しもが思う事であり、当然のことです。
しかしながら、“健康”の定義で考えると、健康は取り戻せる可能性は十分あるということを忘れてはなりません。
そのための取り組みの一つとして、リハビリテーションがあります。
〇リハビリテーションは健康の再構築
正式名称「re-habilitation(リハビリテーション)」
一般の皆さんからは「リハビリ」もしくは「リハ」という愛称で呼ばれています。
定義はいくつかありますが、その中の「医学的リハビリテーション」の定義を見てみると、このように記載されています。
「個人の身体的機能と心理的能力、また必要な場合には補償的な機能を伸ばすことを目的にし、自立を獲得し、積極的な人生を営めるようにする」と記載されています。
先程の“健康”の定義と照らし合わせてみましょう。
健康を再構築していく上で、いかにリハビリテーションが重要であるかがわかるかと思います。
一方で、このリハビリテーションのイメージについて他職種スタッフや患者さんに聞いてみると、こんな答えが返ってきます。
運動、体操、体力づくり、歩く練習、脳トレ、発声練習、生活支援、修行、食事など。
みてわかるように、リハビリテーションとは、様々な訓練や指導を通じて自立を促していくものなのです。
しかしながら、こうした訓練や指導には患者さんの生活や目標を知らなければ、独りよがりなものになりかねません。
患者さんへの訓練や指導には、他職種と情報を交換し合い、生活状況を知ったうえで目標設定をしていかなければなりません。
つまり、リハビリテーションを通じた健康の再構築には、“連携”が必要なのです。
当センターでは、チーム医療を通じて情報を共有していきながら、健康を再構築するお手伝いを全力で実施しております。
情報共有の場では医師、看護師、リハビリテーション室スタッフ、栄養士、メディカルソーシャルワーカーといったチームで行っております。
では、その情報共有の場について紹介していきたいと思います。
〇リハビリテーション室の得意分野は「運動機能」と「認知機能」
カンファレンスの情報共有のお話の前に、各職種には得意分野があることをお話しておきます。
医師、看護師、リハビリテーション室スタッフ、栄養士、メディカルソーシャルワーカーといった各職種にはそれぞれの得意分野があり、様々な側面から一人の患者さんを評価することができます。
医師であれば内科的あるいは外科的な治療の必要の有無の判断、看護師であれば衣食住といった生活の質などなど。
お互いに情報を共有することで健康の再構築に妨げとなってくる問題点をもれなく抽出できるのです。
では、リハビリテーション室の得意分野はなんだろうか?
いくつかある得意分野の中で他職種に伝えるものは、特に運動機能と認知機能です。
運動機能でいうと、筋力を引き出せるかどうか、関節の曲げ伸ばしの妨げになっている要因はなんだろうか、触れているないし動かしているという感覚はどれくらいなのだろうか、飲み込む力はどれくらいなのだろうか…。
また、認知機能でいうと、話す力や聞き取る力はあるだろうか、一つのことに集中し続けることはできるだろうか、周囲に注意を向けることはできるだろうか、言われたことを覚え続けることはできるだろうか…。
健常者であれば、こういったことはふだん生活をしていく中では無意識に行えることですが、一度病気を有してしまうと無意識にできなくなることがほとんどです。
「今までできていたことが出来なくなってしまった…」、「歩くのもままならないし、これじゃぁ家に帰れない」。
健康が損なわれてしまっている状況ですよね。
リハビリテーション室スタッフは、この運動機能と認知機能について適切に評価し、改善に向けて運動療法や作業療法等を通じて訓練ならびに指導を行っていきます。
もちろん、ただやみくもにこれらの機能の改善を図るのではなく、その人の生活や希望に応じて、実践していきます。
そして、これらの評価結果に加え治療や訓練の経過を情報として他職種に発信していくのです。
〇当センターのカンファレンスの強み
カンファレンスは、退院に向けて必要なものは何かを考える場です。
加えて、一人の患者さんの健康の再構築について、お互いの考えを統一する場でもあります。
それぞれやっていることがバラバラでは話になりません。
お互いに患者さんの目標へ向けて道筋を確認していき、それぞれがその目標に対して介入を行っていきます。
当センターのスタッフの持ち味はなんといっても、お互いの得意分野を把握していることにあります。
必要な情報がある場合に、どの職種に聞けばいいのか把握していることで効率よく、的確に情報共有できるのです。
では、どのような情報が交換されるのでしょうか。
一例をあげてみます。
リハビリテーション室スタッフが一人の患者さんに介入できる時間は限られています。
1日は24時間あるわけですから、実施した介入が生活に反映できているのかは中々判断しづらいものです。
そこで、1日の生活を評価できている看護師へ情報をもらう必要がありますね。
一方、看護師からは1日の生活を評価していく中で、この人はどこまで動かせるのだろうかといった情報を聞いてきます。
そこで、リハビリテーション室スタッフは看護師に対して、現在の運動機能と認知機能を考慮した上で能力はどれくらいなのかを伝えるのです。
このように、お互いが情報を共有し合うことで、今何が必要なのか、今何を改善していくべきなのか、明確になっていきます。
お互いをよく知り、お互いに必要な情報を提供していく、こうした連携が患者さんの健康を築く上では重要なことなのです。
〇リハビリテーションは病院全体が行うもの
大事なことなのでもう一度、健康の再構築には他職種が連携をすることが必要です。
リハビリテーションはリハビリテーション室スタッフが行うものではなく、病院全体が取り組んでいくものなのです。
リハビリテーション室では、これを主体的に他職種へ働きかけることを役目としています。
安心と安全を提供していく上で必要不可欠なのです。
また、退院すれば終わり、という考えではなく退院後の生活を見据えて介入をしていきます。
退院後もずっと“健康”でいられるように、という願いをもってリハビリテーション室では患者さんへの介入を続けていきます。