臨床工学技士が支える安心な透析技術と安全な心臓カテーテル治療

みなさんは臨床工学技士という職種をご存知でしょうか。
最近では木村拓哉さん主演のA LIFE~愛しき人~で心臓手術中に木村拓哉さんから「技士さん!ポンプは?」などと声をかけられているのがそうです。
少し前だと医龍-Team Medical Dragon-では中村靖日演ずるコミュニケーションの図れない臨床工学技士が朝田(坂口憲二)らと共に心臓手術に臨み、子どもの命を助けるといった場面もありました。

このようにテレビなどでも徐々にその名前が知られてきている臨床工学技士。
やはり手術室での仕事がフューチャーされやすいですが、それ以外にも重要な仕事が数多くあり、皆様の安心と安全を守っていることをご紹介していきたいと思います。

腎不全に対する透析治療を技術で支える臨床工学技士

血液透析。
血液透析って何?
なんか先生からそろそろ透析をしないといけない。
なーんて言われてしまったんだけど一体どんなところで何をするのだろう。
そして臨床工学技士は透析にどう関わっているのかをお伝えします。

まず東京ベイ・浦安市川医療センターでの透析は透析室、ICU・CCU、HCUにて行われます。
透析室での透析は一般的に状態の安定している入院患者さん、もしくは自力で通院できる外来透析患者さんが透析を受ける場所です。
ICU・CCUやHCUと呼ばれる集中治療室における透析はより重症度の高い患者さんを対象に状態に合わせた最大24時間以上連続した透析を行ったりします。

そして透析というのはダイアライザーと呼ばれる筒に血液を通して、老廃物を除去し一緒に血液中の過剰な水分も除去してしまおうというものです。
そのためには内シャントとよばれる血管の動脈と静脈をつなぎ合わせたものが必要で、一般的に腕につくります。
それを作って使えるようになるまで約2週間ほどかかります。
その間透析をするために首の頸静脈からカテーテルと呼ばれる管を差し込み、一時的に透析をするための血液をとれるようにします。
この管は内シャントが使えるようになれば抜去します。
この管が首から出ている人を院内で見かけたら透析をしている人だ!と思ってもらって間違いないでしょう。
それ以外に、ちらっとその人を見ただけでは透析をしている人かどうかはわかりません。

東京ベイの臨床工学技士が提供できる安心で安全な透析技術

おそらく皆さんが最初に出会う臨床工学技士は鈴木さんでしょう。
東京ベイ透析室の臨床工学技士はこの鈴木主任を中心にローテーションで技術提供を行う臨床工学技士数名が常駐し患者さんへの穿刺、透析の開始と終了、透析における機械の操作全般、患者さんの状態把握に関わっています。

鈴木主任は東京ベイ開院から透析室を作り上げてきた方でいわば透析のプロ中のプロです。
きっと透析のことならなんでも答えてくれますよ。

東京ベイの穿刺は鈴木主任指導のもと、エコー下穿刺を取り入れています。
穿刺というのは目に見えない血管の中に針を留置しなくてはならない患者さんにとって大変ストレスのかかる行為です。
なかには穿刺する部位が皮膚表面から深い位置にある。
または、細くて触知しづらい患者さんもいらっしゃいます。
そんな時に超音波を用いたエコーを当てて血管を画像として描出。
どのような走行になっているかを目で確認することが出来ます。
そのもとで穿刺に入れるため飛躍的に穿刺成功率が向上します。
失敗されやすい難しい血管でも成功しやすくなるということです。
これは患者さんにとっては願ってもないことですね。
また私達臨床工学技士も日々エコーによる穿刺法修得、技術向上のため勉強を重ねています。

そしていよいよ透析の開始です。
機械を操作して血液をダイアライザーへ導き浄化してその血液をまた体へもどす操作も臨床工学技士が担当します。
機械には数値がたくさん並び、患者さんの状態を常に知らせてくれています。
これらの情報をもとに異常がないかを瞬時に判断し異常があればその原因特定と解除にはいります。
フロアには常に臨床工学技士が目を光らせ異常を報せる警報がなればすぐに駆けつけられる体制をとっています。
加えて30分に1回のバイタルチェックと機械チェックは異常を未然に防ぐ意味で患者さんにより安心を与えられていると思います。

透析の終了は血液を体に返すことからはじまります。
透析では約200ccほどの血液が常時体外へ出ていますのでこれらを急に体へ戻すと血圧の上昇や体調不良をおこしかねません。
安全に透析を終えるためにも我々臨床工学技士の出番です。
ゆっくりと患者さんの状態に合わせて血液を体へもどし、血液が返ったあとのダイアライザーや回路などから異常を発見するのも大事な役割です。
ここで血液が多く残ってしまっていたり、詰まりなどがみつかれば医師へ報告と改善策を提案します。

このように我々臨床工学技士は最初から最後まで透析をうける患者さんによりそった仕事をしています。
透析患者さんと臨床工学技士は切っても切れない関係なんです。
そんな臨床工学技士のことを少しでも知っていただけたら嬉しく思います。

臨床工学技士が活躍する狭心症や心筋梗塞治療は心臓カテーテル!

臨床工学技士は心臓カテーテル検査を行う血管造影室でも仕事を行っています。
東京ベイでは24時間365日いつでも緊急血管造影検査・治療を行える人員体制を整えています。
ここでは体中の血管の治療を行うのですが主に心臓の血管(冠動脈)に対する心臓カテーテル検査・治療が多数を占めるのでそれに関わる臨床工学技士の役割を覗いてみましょう。

まず心臓カテーテル検査とは手首の動脈へシースとよばれる管を留置し、髪の毛よりも細いワイヤーを挿入。
なんと心臓まで到達させます。
そのワイヤーを頼りにカテーテルと呼ばれる細長い管を心臓の血管へひっかけ、造影剤を流し入れて血管が詰まったり細くなっていないか放射線のチカラを使って確認していきます。
そして必要があればバルーン(細くなった血管を膨らませる風船)やステント(膨らませた血管を維持する筒型の金網)を用いて治療していきます。

この検査、治療に該当するのはよく聞く心筋梗塞が主な疾患です。
心筋梗塞で知り合いが病院に運ばれた!
その時には臨床工学技士がきっと活躍しています。

東京ベイの臨床工学技士が提供できる安心で安全な心臓カテーテル治療

そんな東京ベイ血管造影室にいるのは山本技士。
山本技士も鈴木主任と同様に開院当初からのメンバーでこの血管造影室をメインに5年目を迎えます。
山本技士は血管造影室におけるすべての検査・治療に精通しており、最近ではスタッフ教育も行っています。
東京ベイ血管造影室では山本技士主導のもと血管造影室では臨床工学技士が複数名体制にて患者監視装置(ポリグラフ)、血管内超音波診断装置(IVUS)、冠血流予備比計測などこれら機器の操作を行い安全な検査・治療を行っています。

ポリグラフでは12誘導心電図とよばれる波形から検査中の心電図変化を監視しています。
心電図のST部とよばれる部分が検査中はよく変化しやすく、見逃してしまうと重症な不整脈を引き起こしかねないので見つけたらすぐ医師へ報告です!

IVUSという機械では心臓の血管内を超音波で画像化、細くなってしまった部分の距離計測や、径の計測を臨床工学技士が行います。
医師らはそれをもとに心臓の血管へ留置するステントやバルーンのサイズを決定します。
この計測で今後患者さんの体へ一生留置されるステントのサイズが決まるのでとても重要な役割です。

冠血流予備比計測では本当に患者さんへ治療が必要なのかどうかを数値で表示し判断します。
この計測もポリグラフにて行われるため計測器具を医師が操作し臨床工学技士が計測を行います。

どの項目も医師1人では完結しないものばかりで検査・治療に関わるスタッフ全員の協力が必要な現場です。

また、患者さんの状態が急変しやすいのも緊急で行うこの検査の特徴でこの時に心臓や肺の働きを助ける機械にIABP・PCPSと呼ばれる機械たちがいます。
これらの機械は構造、操作とも複雑でそのスペシャリストとも言えるのが臨床工学技士です。
これらの機械は患者さんの身体へ留置するデバイスは医師が担当しますが、その後の開始操作設定は臨床工学技士が担当します。
日々の点検やメンテナンスもすべて臨床工学技士が担当していますのでその操作はもちろんのこと、緊急時における扱いも誰よりも安全に行うことができるんです。

臨床工学技士はMEやCEと呼ばれ病院内で重要な職種として認知され始めています。
「風邪をちょっとこじらせて病院にいった」ぐらいでは私達には出会えないかもしれません。
しかしその病院にも臨床工学技士がいるかもしれません。
透析室で、血管造影室で、今日も患者さんの安心と安全を守っています。

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