公益社団法人 地域医療振興協会
東京ベイ・浦安市川医療センター
管理者 神山 潤
寝ることは、当たり前なのですが、食べること、排泄すること、そして身体や頭を働かせることと共に、ヒトという動物が生きていくための基本的な営みの一つです。
しかし食べること、排泄すること、そして身体や頭を働かせることほどには、普段はあまり意識に上らない営みであることも確かです。
意識に上らないばかりか、疎かにしてしまいがちな営みと言えるのではないでしょうか?
あれもやりたいこれもやりたい、あれもやらなくちゃこれもやらなくちゃ、と追いまくられているうちに、眠りはいつの間にか疎かにされ、面倒くさいものにまでその地位を貶められてしまいがちです。
なんで寝なきゃいけないんだ、寝ないで済めば、あれもできるしこれもできるのに!
でも眠りを疎かにしていると、ある日突然身体が反抗します。
朝起きることができなくなります。昼間突然寝落ちしてしまいます。病気に違いない。
そうです。
朝起きることができなくなったり、昼間突然寝落ちしてしまう、といった症状は重大な病気の代表的な症状です。
なんという病気でしょうか?
睡眠不足症候群です!?単なる寝不足?
多くの方が寝不足を見くびっています。
寝不足かなと思ったら、ちょっとねむればすぐに取り返せるさ。
これが大きな間違いです。
数年前に大ヒットとなった「睡眠負債」の火付け役となったスタンフォード大学の西野教授の著書の中にもこんな実験結果が紹介されています。
「それまで7時間半の睡眠時間を取って普通に暮らしていた大人8人に参加してもらった実験で、実験は毎日ベッドで14時間横になってもらう」、という実験です。
脳波を測る測定器をつけて横になってもらうので、何時間寝ていたか分かる仕組みです。
問1.さてこの8人の方、初日には平均で何時間眠ったと思いますか?
そしてもう一つ。
問2.1週間後には、平均で何時間寝たと思いますか?
実験結果です。
答1. 初日は8人の平均睡眠時間は13時間、答2. 1週間後は9~10時間、そして3週間後以降、8.2時間で安定した、というものでした。
この結果から何が分かるでしょうか?
一つ目は、この8人の方にとって必要な睡眠時間は8.2時間であった、ということです。
そして二つ目は、この8人の方はそれまで7.5時間の睡眠時間を取っていたことからすると、毎日8.2-7.5=0.7時間の睡眠不足状態にあったと考えられます。
つまり0.7時間、42分の睡眠不足を解消するのに3週間必要であった、ということです。
もっともこの二つ目の結果については、この8人の方がいつから7.5時間睡眠とっていたのかは分かりませんので、正確な結論、とは言えないかもしれません。
ただし多くの方がお考えになっている以上に、睡眠不足を解消するには時間がかかる事はご理解いただけたのではないでしょうか?
外出自粛の中、できることは限られています。
ネット三昧の方もおいでとは思いますが、ひょっとしたら満員電車で通勤していたころと比べると、睡眠時間は増えているのではないでしょうか?
そして睡眠時間が増えた日常では、結構頭が冴えている、とお感じの方も少なくないのではないでしょうか。
これまでの日常が異常に忙しすぎたのではないか?
異常に忙しくさせすぎていたのではないのか?
働き方改革も叫ばれている昨今です。
この自粛生活を機に、ぜひご自身の眠りを見直してみてください。