チーム力が決め手の大動脈弁膜狭窄症に対する最先端医療 TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)
当センターは2015年12月に経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI、タビまたはTAVR)の実施施設に認定されました。心臓血管外科の新設から2年という異例のスピード認定であり、当ハートセンターの実績が高く評価されました。TAVI(タビ)は、適応の判断(患者さんがTAVIに向いているかどうかの判断)から手技、術後のリハビリまですべてにおいて、チーム力が決めての治療です。当センターのTAVIチームはカテーテルが得意な医師だけで成り立っているチームではありません。心エコー・CTのエキスパート、カテーテル治療のエキスパート、心臓手術のエキスパート、心臓麻酔のエキスパート、医療機器や放射線装置のエキスパート、リハビリのエキスパート、すべての一流が揃うまれなチームです。開設以来ずっと科や職種の垣根を越えて診療をしていきました。まさに「チーム力の東京ベイ」が最も力を発揮できる治療であり、今後のさらなる発展にご期待ください。
心臓の出口である大動脈弁が硬くなって、出口が狭くなる病気、それは大動脈弁狭窄症です。
重症の大動脈弁狭窄症は命にかかわる病気であり、最も確実な治療は人工弁に置換する手術(大動脈弁置換術)です。TAVI(タビ)は、心臓以外の病気を抱えていたり、体力が低下していて手術に耐えられないような大動脈弁狭窄症の患者さんに対する最新治療です。手術は心臓を止めて硬くなった弁を人工弁に置き換えますが、TAVI(タビ)は小さな創で心臓を止めることなく、カテーテルを用いて硬くなった大動脈弁の内側に人工弁を植え込みます。
日本では2013年10月から医療保険が適用され、2016年末までに約5000例が行われています。
当センターは2015年12月7日(月)付にて、経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会が策定する実施施設基準を満たし、「経カテーテル的大動脈弁置換術実施施設」として認定されております。
ハイブリッド手術室は、手術室と同等に空気が清浄で、感染の危険を減らすことができます。
万が一カテーテル治療の合併症が起きた場合でも、他の手術室に移動することなく外科手術に切り替えることができるため、安全性が高まります。
最新治療は、利点だけでなく、欠点をよく理解することが重要です。高齢だから絶対TAVI、あるいは手術が難しいから絶対TAVI、というわけではなく、患者さんごとに本当にTAVIが適しているかを検討することが重要です。
当ハートチームは綿密な検査と総合的な評価によって、(1)TAVI (2)外科手術 (3)その他の治療(薬や風船で症状だけを取る治療など)のうちどれが最適かを患者さんと一緒に選択します。
利点
手術に比べて身体の負担が小さい。
出血量や輸血量が少ない。
入院期間が短い。
高齢で体力の衰えている場合や合併疾患のある場合など、開胸による外科手術にはリスクが高いとされていたケースでも、より低侵襲に治療を受けていただくことができるようになりました。また外科手術とカテーテル治療を組み合わせて、個々のケースに合わせた治療も可能です。
費用:高額療養制度が適用されます。治療と入院費の自己負担額は、年齢や所得、保険の種類などで変わりますが、約5〜20万円です。
欠点
自己の大動脈弁の内側に植え込むため、サイズや形で制限がある。
手術に比べて植え込みの精度はやや劣る。
長期(10年以上)の耐久性が不明。
TAVIで起こりうる合併症
日本におけるTAVI後の死亡率(術後30日以内)は約2%です。侵襲が低い治療と言っても、対象となる患者さんによっては、死亡や合併症の危険がないわけではありません。
以下のような合併症が起こりえます。
・血管や心臓の破裂、出血
・腎不全、透析(造影剤を使用するため腎臓に負担をかけます)
・心筋梗塞、心不全
・感染(創部感染、肺炎、感染性心内膜炎など)
・脳梗塞
・不整脈(ペースメーカーの植え込みが5~10%で必要になります)
・人工弁の脇もれ、人工弁の落下、カテーテルの回収困難
合併症が起こる確率は患者さんによって異なります。術前に十分な検査を行い、これらの合併症が起こるリスクを評価します。これらは術前に十分評価をすれば、予防できることが多いものです。万が一これらの合併症が発生した場合に備えて、どのような対応も迅速にできるような体制を取っています。
①経大腿アプローチによるTAVI
・経大腿アプローチ:脚の付け根の動脈から大動脈弁に至る
経大腿アプローチは、脚の付け根の動脈から大動脈弁に運びますので、胸部を切開せず最も侵襲の小さな方法であることが、最大の利点です。しかし、お腹や脚の血管に瘤があったり、血管が細い人や詰まっている人には不向きな方法です。
②外科的アプローチによるTAVI
・経心尖アプローチ:左胸を小さく切開して心臓の壁から大動脈弁に至る
・経大動脈アプローチ:胸部正面を小さく切開して大動脈から大動脈弁に至る
・鎖骨下動脈アプローチ:鎖骨の下(または上)小さく切開して、鎖骨下動脈から大動脈弁に至る
経心尖アプローチや経大動脈アプローチは、胸部を切開しますが、お腹や脚の血管に問題があっても行うことができます。
また、大動脈弁までの距離が近いため操作性が良く、より正確な植え込みが可能です。
TAVIは大動脈弁狭窄症患者さん治癒への新たな治療手段です。
当センターのハートチームへお気軽にご相談ください。
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