失語症患者さんの「伝えられない」を解決するために〜言語聴覚士として「本当に伝えたい言葉」を引き出したい〜

リハビリテーション室
言語聴覚士 祢津 沙也子

皆さんこんにちは、今日は私たち言語聴覚士(ST:Speech Language Hearing Therapist)の仕事についてお話させていただきます。まず、STは日本では1997年に制定されたリハビリテーション職です。理学療法士、作業療法士に比べて歴史が浅く人口も少ないため、私たちが普段どのような仕事をしているか、ご存じない方もいらっしゃると思います。

この東京ベイWEB通信では過去に何度か、摂食嚥下リハビリテーションと私たちの役割についてお話させていただきました。今回は私たちのもう一つの仕事内容についてご紹介できればと思います。

当センターにはご存じの通り脳神経外科があり、脳梗塞や脳出血といった疾患の患者さんが多くいらっしゃいます。このような脳血管疾患では、運動麻痺や感覚障害、視野欠損など様々な症状がみられますが、なかにはコミュニケーションが難しくなる「失語症」がみられる方もいらっしゃいます。

人は日常生活を送るうえで「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つの様相性を何気なく用いて、互いにコミュニケーションを図っています。そのため、一概に「失語症」と言いますが、病巣が脳の側頭葉であれば「言葉を聞いて理解する」ことが苦手になりますし、前頭葉であれば「言葉を話す」ことが苦手になります。「文字を読む」や「文字を書く」ことは頭頂葉や後頭葉が損傷されてしまうことで苦手になります。

言語聴覚士はそのような症状を持った患者さんに対して、コミュニケーションが少しでも図れるように、お手伝いをさせていただいています。当院は、昨日まで会話が出来ていた、仕事が出来ていたという方が入院される急性期病院です。患者さんご本人はもちろん、ご家族の方々も突然コミュニケーションが難しくなってしまった状況に、不安に思われたり混乱されることと思います。

私たち言語聴覚士は言語コミュニケーションの専門家です。脳の画像所見や患者さんとの会話などを通して、何が「苦手」になってしまったのか。また、何が「得意」なのかをきちんと知ることから始めます。

失語症の方は一度学習した言語を脳内から引き出すことが難しくなってしまいます。しかし、積み上げてきたもののすべてが失われてしまったわけではありません。「言葉」の引き出しから、今伝えたい言葉をスムーズに取り出せるように、私たち言語聴覚士は患者さんの得意な言語的側面を用いて、一人ひとりに合わせたオーダーメイドのリハビリテーションを行っていきます。

また、コミュニケーションは言語だけではありません。声色や表情、身振り手振りで伝えられることも多くあります。感染予防対策のため、リモート面会などの配慮はさせていただきますが、コロナ禍におひとりで入院されている患者さんもいらっしゃいます。そんな中で、言葉が不自由となり、意思疎通がうまくできなくなった患者さんは、他の方より大きな不安と孤独感を感じられていることと思います。

私たち言語聴覚士は、どのような方法を用いれば患者さんの気持ちをより受け取れるのか、どのようにお伝えすれば患者さんに安心していただけるのか、医師や看護師、多くの医療スタッフとともに日々考えています。

患者さんの「言葉を伝えられない不自由」を少しでも解決に導けるよう、橋渡し役として一人一人のお役に立てればと思います。
これからも、東京ベイの言語聴覚士チームをどうぞよろしくお願いいたします。

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