患者さん一人一人の「転ばぬ先の杖」になりたい~私たちはリハビリの専門家としてKYT(危険予知訓練)から転倒を予防します~

KYT(K危険/Y予知/Tトレーニング)という言葉は、医療現場・特に看護師の世界では最近お馴染みの言葉となっており、知っている方も増えてきています。KYTは、元々は建築現場での事故予防で行われ始めたことですが、医療現場に関わらず昔から類似の取り組みは多く行われていると思います。我々リハビリ職は、医療専門職の中でも特に立ち上がり・移乗動作の専門家として見られる立場が多いですが、歩行練習・階段昇降練習、患者さんが椅子に座る時などに、アクシデントに繋がりかねないヒヤッとさせられる事例もあります。また当院は急性期病院ですが、急性期の患者さんは、「抜けたり切れてはならない中心静脈ライン、動脈ライン」や「人工呼吸器の設定」など注意すべき点が多くある中でリハビリを行いますので、患者さんのちょっとした動作中にも必ず医療スタッフによる十分な配慮が必要です。

そのため、2019年度は、リハビリ室では1年目主催でインシデント・アクシデントに繋がり兼ねない事例を通してKYT(危険予知トレーニング)を行いました。

~卒後1年目スタッフが勉強会を主催し、内容を企画する機会を持つ~

どのインシデント事例においても、その日のうちに振り返り・部署内共有を行っていますが、今回は1年目スタッフが1年間で起きたインシデント事例の中からピックアップして内容を企画・主催してもらいました。1年目となると、患者さんを担当することで当面は精一杯になります。また、担当患者さんに付随する勉強や、与えられる課題などをこなすことが主となる傾向です。そのため、あえて1年目スタッフが今年度の反省点なども踏まえて、どのようなKYTのような内容を行うか、時間配分等の計画を行ってもらいました。

~環境に慣れる=油断に繋がらないようにする~

職場環境に慣れる、経験を積むと、事前の予測や危険予知も可能となりやすいですが、かえって気が緩む可能性もあります。例えば、車の運転を考えますと、どんなに経験を積んでも事故や違反をしない人もいれば、10年以上運転していても事故を起こす、違反行為をする、毎年事故を起こす人もいます。これと同じで、経験を積んでもインシデントに繋がり兼ねないことや、実際にインシデントを起こすこともあります。その予防のために、卒後2年目になる前の気構えと、卒後10年目以上のスタッフの意識の見直しも含めて実施しました。

~実際の事例・シミュレーション~

今回は全て転倒に関わるヒヤリハット事例をとりあげました

  • 歩行器で歩行中の方向転換時に膝おれして、尻もち/転倒しそうになった事例
  • 平行棒内歩行で歩行中に、点滴・酸素などのデバイス挿入物が多い中での平行棒内
    歩行練習中に膝折れしかけた事例
  • 初回のリハビリ介入での歩行練習中に急に前方に崩れかけた事例

最初は1年目スタッフが実際の場面を再現し、その後、1年目同士での意見交換や、経験者/先輩や・室長などからの総括意見を聞きました。

同僚・先輩からの意見

自分の身体的特徴やカバーできる能力自体を把握しておくことが必要。そうすれば、事前に1人で移乗や移動せずに、安全に配慮できる。
脇・腋窩でしっかり支えてあげる方が良い。臀部・腰部を介助する傾向があるが、歩行・姿勢介助時は、腋窩で身体をコントロールしてあげる方が安全。介助時は、手で支えようとしやすいが身体全体で支えられるように身体で幅寄せして隙間を埋める工夫などもいる。
着座する際には、事前に声掛けをしっかりしないと、患者さんのタイミングで急に座られて転倒・転落に繋がりやすい。頻回に着座タイミングの声掛けが必要。
方向転換時のヒヤリハットは、事前にリハビリ職としての身体機能面評価が十分であったかという点が問われる。慎重に評価を。

リハビリ患者さんのためにスタッフ一人一人が「転ばぬ先の杖」になりたい ~プロフェッショナルとして一層の自覚と事前の心掛けを~

病院においては転倒事例が必ず発生し、経験者でも事例に関わる事があります。移乗・歩行等の専門家として慢心せず、どうすれば患者さんの転倒を防げるか、意識的に着目すべき点なども改めて確認する機会となりました。
これからもスタッフ一人一人が「転ばぬ先の杖」として患者さんの安全と安心を確保できるよう、リハビリにおけるKYTを推進していきます。

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