2019年1月から、当センターリハビリテーション室では訪問リハビリ、退院前訪問指導を開始しました。対象は当センターに入院されていた患者さんのみですが、役割・目的としては、早期に退院し住み慣れた環境で安全に生活していただけるよう取り組んでおります。
~訪問リハビリ・退院前訪問指導とは~
訪問リハビリとは退院先の自宅か居住先となっている老人ホームなどに伺いリハビリテーションを行うことです。当センターのような急性期病院では、病院内に入院されている患者さんだけを対象としてリハビリテーションを実施する場合が多くありますが、それだけでは今後の情勢には対応できないことも多くなっています。
急性期病院の場合、医療的処置や緊急処置が必要な状態を脱した後はできる限り早く患者さんを退院に導くことが重要です。病院内は何かあったら安全といった印象ですが、自分で動かなくても看護師さんがやってくれる環境が整っているため、リハビリをしているのに入院中は動かず、生活の質を落としかねないということもあります。
そのようなことも考慮しながら、状態が安定した患者さんは、早期に自宅環境に応じたリハビリ訓練ができるように退院前訪問指導や自宅環境に合わせた動作練習、必要に応じた環境整備を行うよう取り組んでおります。
~急性期病院でのリハビリと在宅・訪問リハビリの違い~
病院内でのリハビリと訪問リハビリは、実際の生活場面での練習ができる環境と、リスク・安全管理のための方法や手段に違いがあります。
病院内では、転ばないように見守る、薬を飲む、状態悪化を見つけるなどについて、全医療スタッフが見てくれる環境であり心配ありませんが、家の中では同様の環境がなく、誰もいない場合の対応方法の決定から始まります。医療機器によるモニタニングがない中で、身体の状況にも気がつくことができる力も必要です。また、急性期リハビリの場合、状態が安定し「退院する」のがゴールとなりがちですが、「退院後の生活」という視点も重要です。
訪問リハビリ、退院前訪問指導の一例
今回は、患者さん御本人および御家族様より了解を得た一例を簡単にご紹介させていただきたいと思います。脳卒中にて入院後、幸い運動麻痺症状などは軽く済んだものの、おひとり暮らしであったため、ひとりで安全な生活や介助が必要なところ、自宅周囲の環境確認が必要と判断され、退院前訪問や退院後訪問にてリハビリテーションを行いました。
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患者さんは、歩くことは可能であるものの、認知機能低下があり1人で外を歩くと信号を確認しないなど、注意散漫を認める状況でした。家の外にある踏み台は不安定であり、転ぶ危険性もありました。そのため踏み台を移動し、御家族様には外出日程を決め外出時に付き添いができるよう調整していただくことをリハビリスタッフより助言をさせていただきました。
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脳卒中後、車の運転の希望もありましたが、色々な注意力の低下により運転は中止にした方が良い場合が多くあります。この方についても同様なケースであったため、車のキーを別世帯家族が保管することとさせていただくなど、環境整備を行いました(このような事例では、必要に応じて車の処分自体も検討する場合もあります)。結果、現在のところ、大きな問題なく生活されているとのことです。
急性期リハビリテーションの場合、「急性期」という領域のみでの関わりとなることが多いですが、リハビリテーションは回復期リハビリテーションや、在宅リハビリテーション領域も把握していることも必要です。これまで訪問リハビリテーションを経験してきたスタッフもおりますが、大部分は急性期リハビリテーションだけしか経験していかなかったスタッフも多いのが現状です。まだ開始したばかりで訪問件数も少ないですが、在宅環境でのリハビリテーションもできる限り経験し、患者さんの生活を支えていける存在にと考えております。
みなさま、今後とも東京ベイリハビリテーション室をよろしくお願いいたします。