前回(2017年11月8日)放射線室からは、CTとMRIの違いについてお話しました。今回は、前回のMRIに加えてMRAという検査について比較してお話します。
脳内の健康状態については通常、健康診断では調べる機会がありませんが、脳ドックについての感心が高まっています。脳の血管に異変がないかどうか調べておくことで、脳梗塞、脳腫瘍、動脈瘤などを予防することができます。
●MRI(Magnetic Resonance imaging)=組織の異常がわかる
『隠れ脳梗塞』や『脳腫瘍』、『脳出血』など脳組織の疾患を発見
MRI(磁気共鳴画像)は強力な磁石の作り出す磁場の働きを利用して、人体の断面を映し出す検査です。頭部MRI検査とは、頭蓋内の断面を画像化して、頭部の病変の手がかりを調べる検査で症状のない脳梗塞や脳腫瘍、脳出血の痕なども発見できます。片麻痺や言語障害、意識障害などは、脳出血や脳梗塞のときに認められる最も大きな症状です。
●MRA(Magnetic Resonance Angiography)=脳血管の異常がわかる
MRAは磁場の働きを利用して造影剤無しに脳の血管を映し出す検査です。血管のつまりやこぶ、血管の変形などの有無を確認することができるため、脳動脈瘤(動脈のこぶ)や太い血管の閉塞、狭窄などを発見できます。よって脳動脈瘤の破裂、動静脈奇形(血管の奇形)が原因のくも膜下出血、血管のつまりが原因の脳梗塞などの予防につながります。血管内を流れる血流の状態を鮮明な画像にすることができ、脳血管の動脈瘤や狭窄、明らかな症状がなく細い血管が詰まる無症候性脳梗塞など、脳の血管内の異常を早期に発見することができます。
MRI・MRA検査の流れ
1.準備
強力な磁力を使用する検査です。正しい診断や人体への危険から守るため金属類や磁気を発生するものは全て外します。安全のために検査着に着替えていただくこともあります。携帯電話やクレジットカードなども磁場の影響を受けて使えなくなることがありますのでご注意ください。
- 指輪などのアクセサリー、ヘアピンなど金属がついているものは全て外します。
- アイシャドウ、マスカラなどの化粧品なども微量の金属が含まれているため、メイクは検査前に落としましょう。
- 眼鏡やカラーコンタクトは検査前にはずします(色のついてないコンタクトの場合は、事前に施設に相談してください)。
- 湿布などの貼り薬、塗り薬は検査前に取ります。
2.検査
MRI撮影装置のベッドの上に仰向けになり、頭部にコイルという鳥かごのような形をした器具をつけます。撮影中は大きな音が断続的に続くため、当センターでは検査中ヘッドホンを装着して音楽を流し騒音を軽減します。またお好きなCDを持参していただければ聞きながら検査を受けることができます。
検査中大きな音がするためうるさく感じますが痛みのない検査です。検査時間は約20分~、造影剤を使う長い検査で60分位です。
撮影中は仰向けになった状態で動かないようにします。撮影時間は、15分程度です。撮影された画像は専門医が確認し、脳の血管に異常がないか診断します。
脳血管障害の危険因子には、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、高尿酸血症、肥満、運動不足、不規則な生活、ストレスなどが挙げられます。何か頭部の症状があれば脳血管疾患を専門とする医師にご相談ください。頭部MRI・MRAなどの画像検査を通じて脳血管障害を早期発見できる可能性があります。
●MRI・MRAで早期発見!見つかってよかった脳の病気
それでは、脳ドックを受診された方や外来で「めまいがする」や「頭痛が続く」などの症状を訴えMRIやMRAを行い偶然病気が発見できた症例を紹介します。
めまいで受診されMRI検査をすると左側に白く光る急性期脳梗塞が見つかりました。拡散強調画像と呼び、発症数時間でも画像に写すことができる撮像方法です。
次は頭痛が数日続く患者さんです。CTではっきりしない微小な出血痕もMRIでははっきり見えます。左側MRIの画像は磁石の特性を利用した撮像方法で出血部分は黒く抜け、CTではっきりしない微小な出血でも明瞭に写します。
造影剤を使わずに写すことができるMRA検査。右側の内頸動脈が左側に比べると細く見えます。経過観察を必要とする場合でもMRAは造影剤を使用せずに血管を写すことができるので患者さんへの負担を少なくできます。
脳血管 MRA
最後に脳動脈瘤です。数ミリの小さい瘤から数センチの大きな瘤まで写すことができます。くも膜下出血の原因になる怖い病気ですが定期的に経過観察をして大きさを比較することができ治療のタイミングを計ることができます。
いかがでしたか?脳の病気には発症してからだと手遅れになってしまう病気も多くあります。ですが、普段から検査をしっかり行い定期的に調べておけば最悪の状態を防げることが多いです。自分は大丈夫と思わずに積極的に検査を受けることが大切です。
当センターにはMRI検査をする患者さんが多く1.5テスラと3.0テスラの磁場強度をもつMRI装置が稼動しています。3.0テスラは1.5テスラ装置よりもさらに高画質で小さい病気も映すことができます。MRI装置で1人でも多くの患者さんが喜んでいただけるよう私たち放射線技師は最善の検査が行えるようにプロ意識を常に持ち続けていきたいと思います。