腎機能評価について

当院の処方箋を応需される保険薬局の皆様へ
~腎機能検査値について~

当院では2018年4月3日(火)より院外処方箋へ以下の血液検査結果(検査値)の表示を開始しています。

★検査結果(最近100日の検査から)

項目結果成人の基準値(単位)検査日
WBC4940 ~ 80(10^2/μL)2017年10月20日
HGB1414 ~ 18(g/dL)2017年10月20日
PLT2115 ~ 35(10^4/μL)2017年10月20日
好中球58.52017年10月20日
AST2813 ~ 33(U/L)2017年10月20日
ALT228 ~ 42(U/L)2017年10月20日
γ-GTP3810 ~ 47(U/L)2017年10月20日
血清 Cre0.60.61 ~ 1.04(mg/dL)2017年10月20日
eGFR114.5≧ 602017年10月20日
PT-INR1.352017年10月20日
HbA1c5.34.6 ~ 6.2(%)2017年10月20日
血糖値10570 ~ 109(mg/dL)2017年10月20日
Na140138 ~ 146(mmol/L)2017年10月20日
Ca9.48.7 ~ 10.3(mg/dL)2017年10月20日
CK10460 ~ 287(U/L)2017年10月20日
K4.33.6 ~ 4.9(mmol/L)2017年10月20日
LDL9065 ~ 139(mg/dL)2017年10月20日
HDL10241 ~ 96(mg/dL)2017年10月20日
身長179.4(cm)2017年10月20日
体重63(kg)2017年10月20日
体表面積1.63(m²)2017年10月20日

保険薬局で医薬品の投与量の確認や副作用のチェックが可能になることで、薬剤による治療の安全性の向上が期待されています。

はじめに・・・

腎機能低下患者に薬剤を使用する際の留意点は以下の2つがあげられます。

  • 腎機能低下患者では、投与する薬剤、あるいはその代謝物の体内からの消失が遅延し、副作用を引き起こすリスクが上昇する。
  • 投与する薬剤によっては腎毒性があり、さらに腎機能を低下させるリスクがある。

それぞれのリスクを回避するために、私たち薬剤師は、患者さんの腎機能を正確に評価する必要があります。

【腎機能を評価するマーカー】

当院院外処方箋に印字されている、腎機能を評価に用いる検査値は①血清Cre ②eGFR の2つです。それぞれの特徴、評価の注意点について確認していきましょう!

①血清Cre(基準値 男性:0.61~1.04 mg/dL 女性:0.47~0.79 mg/dL)

そもそもなぜ、血清Creが腎機能の指標になるのかを考えていきましょう。クレアチニンは、筋肉中に存在するクレアチンの最終代謝産物です。筋肉中のクレアチンは日々一定量が代謝されて、クレアチニンとして腎臓から排泄されます。

クレアチニンは100%糸球体から濾過され、尿細管での再吸収はなく、ほとんどそのまま尿中に排泄されます。(正確にはほんの少し尿細管分泌はあります。)

下の図は腎臓内でのクレアチニンの動きをイメージした図になります。

図からもわかるように、糸球体濾過量が低下(腎機能低下)すると、クレアチニンの排泄は低下し、血清Creが上昇します。つまり、血清Creの上昇は腎機能の低下を反映する結果となりますね!

では、血清Creが高ければ腎機能は悪く、逆に低ければ良いと単純に評価してよいのでしょうか?答えはNo!です。先ほどお話ししたように、クレアチニンは筋肉から産生されるため、その値は筋肉量の影響を受けます。基準値が男性の方が高めに設定されているのも、男性と女性の筋肉量の差を考慮した結果となります。例えば以下の状況を考えてみましょう。

左の男性のように、とても筋肉質な場合、おそらく血清Creの測定結果は基準値よりも高くなります。だからと言って、腎機能が低下しているわけではありません。逆に右の高齢の女性の場合、ADLの低下から筋肉量が低下していることが予想できます。血清Creは、基準値よりも低い結果となる可能性があります。しかし、筋肉量の低下から、そもそもクレアチニンの体内産生が低下しているため、腎機能が低下していても血清Creは低く出てしまうことがあります。(もちろん、すべての高齢者が該当するわけではありません!)

このように、検査値だけでなく、患者の状態から評価することは重要ですね!

次に、血清Cre値を用いて実際に腎機能の評価をしてみましょう!

血清Cre値を用いてクレアチニン・クリアランス(Ccr)を推定する計算式として、Cockcroft-Gault式というものが一般的に良く用いられます。

Ccr(ml/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×血清Cre) *女性は×0.85

(基準値:60~120 mL/min)

上記の式を用いると比較的簡便にCcrを求めることができ、腎機能に応じた薬物投与量を検討するうえでの手助けになるはずです。

例えば以下のようなケースを考えてみましょう。

例題)

76歳男性、心房細動を指摘されて以下のような処方が出ました。

Rp1)リバーロキサバン錠15 mg 1T 朝食後

Rp2)ビソプロロールフマル酸塩錠0.625 mg 1T 朝食後

処方箋に印字された検査値および、患者さんからの聞き取りで以下の情報を手に入れることが出来ました。

血清Cre:1.46 mg/dL

体重:51 kg

先ほど説明したCockcroft-Gault式に当てはめて、Ccrを計算してみましょう!

Ccr=(140-76)×51/(72×1.46)≒31 mL/min

リバーロキサバンの添付文書を見てみると・・・


*リバーロキサバン添付文書より

という記載を確認することが出来ますので、上記の処方は少なくともリバーロキサバンの投与量について、疑義照会が必要になるケースですね!

もちろん、紹介したCockcroft-Gault式も万能ではありません!注意すべき点は、体重の影響を受けるということです。

上の図の通り、同じ血清Creでも、体重によってCcrは2倍以上異なることがわかります。もちろん、100㎏の人の腎機能がものすごくいいわけでもなく、45㎏の人は腎機能が低下しているのか?といわれたらそういうわけではありません。では、極端に低体重の患者や、極端に過体重の患者に対してはどのようなアプローチをすればよいのでしょうか?参考になる考え方に、理想体重や標準体重を用いる方法があります。

理想体重(男性)=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54

理想体重(女性)=45.5+{2.3×(身長-152.4)}/2.54

少しややこしい式ですので、次の標準体重の式を用いても良いと考えられます。

標準体重(Kg)=身長(m)×身長(m)×22

どちらを用いるべきかの見解はありませんが、補正した体重を用いてCcrを求めることも、腎機能を評価するうえで時として重要になるかもしれません。もちろん、すべての薬剤にそこまでの評価をする必要はないかもしれませんが、上記のリバーロキサバンのようなハイリスク薬については慎重に評価することが望ましいと思われます。

②eGFR(推算糸球体濾過量)

血清Cre濃度をもとに推算された、糸球体濾過量のことです。CKDの重症度を分類する指標として用いられています。


*エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018より引用

eGFRを用いて腎機能を評価するうえでの注意点は、CKDの重症度分類のために用いられているeGFRは体表面積1.73 m²(170 cm、63 kg)で補正されているということでしょう。つまり、あくまでのその患者さんの体表面積が1.73 m²であった場合の仮の値です。どう考えても、すべての患者の体表面積が1.73 m²ということはあり得ませんよね。そのため、eGFRを薬物投与量の評価に用いる場合はその補正を外す必要があります。それが次の式になります。

体表面積補正を外した個別eGFR(mL/min)=eGFR(mL/min/1.73 m²)×(体表面積/1.73)

また、患者の体表面積を算出するためには次の、Du Bois式を用います。
体表面積(m²)=体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×0.007184

★まとめ

高齢化が進む中で、薬剤の適正使用において、必ず腎機能が問題になるケースが増えてくることが予想されます。患者さんの副作用防止や薬剤使用による腎障害を防止するうえで、薬剤師が腎機能の評価することは非常に重要な役割であると考えられます。今回ここに記載した内容を臨床の現場で活用していただければ幸いです。

*参考文献

  • エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018
  • レジデントのための腎臓教室 日本医事新報社
  • 腎機能に応じた投与戦略 医学書院
  • 腎臓病薬物療法専門・認定薬剤師テキスト じほう

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 薬剤室

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