なかなか良くならない小児のアトピー性皮膚炎・小児アレルギーエデュケーター(PAE)と取り組む治療戦略 ~3つのポイントを一緒に確かめて実践しましょう~

○アトピー性皮膚炎とは?

「かゆい湿疹が出たり引っ込んだりして、他に食物アレルギーやアレルギー性鼻炎、喘息などもあることが多い」というのが、アトピー性皮膚炎の定義です。

○アトピー性皮膚炎の治療 ~3つのポイント~

まず第一に、皮膚の炎症を取り除くための①『軟膏療法』と、皮膚のバリア機能を保つために汚れを落として保湿をするといった②『スキンケア』を徹底することが必要です。その上で、環境を整えたり睡眠・食事のバランスを保ちながらストレスをためないなどといった、③『悪化要因への対策』が重要となります。

①軟膏療法
●ステロイド軟膏
治療に使うのは主に『ステロイド軟膏』です。『ステロイド』と聞くと怖いイメージを持つ方がいらっしゃるかもしれません。ですが、ステロイドはもともと私たちの腰の上の方にある副腎皮質という臓器で作られているホルモンで、それ自体は決して怖いものではありません。また、塗り薬と飲み薬では吸収される部分や効果が違いますが、次のように混同されている方が一部にいらっしゃいます。

※ステロイド軟膏に対する「間違った認識」
・感染に弱くなる
・背が伸びにくくなる
・胃が荒れる
この3つは、ある一定以上の量を飲み薬として長い間使用したときの副作用で、軟膏で起こることはありません。
・皮膚が黒くなる
ステロイド軟膏の作用はむしろ「脱色」です。皮膚が黒くなるのは何回も炎症を繰り返した結果であり、ステロイド軟膏の副作用ではありません。
※ステロイド軟膏の「本当の副作用」
・皮膚が薄くなる
・毛細血管の拡張
この2つは、強いステロイド軟膏を毎日・何年ものあいだ使用し続けると起こる可能性がありますが、一定期間の使用には問題ありません。

●タクロリムス軟膏(プロトピックⓇ軟膏0.03%小児用)
ステロイド軟膏のほかに、2歳以上のお子さんであれば使用できる『タクロリムス軟膏』があります。この軟膏は、分子量が大きいため正常な皮膚からは吸収されにくいという特徴があり、湿疹のある所だけに効かせることができます。またステロイド軟膏と違って、長期間塗っても皮膚が薄くなるなどの副作用がないため、安全に使い続けることができます。

☆軟膏の量 ~どれくらいの量を塗ればよいですか?~
「ステロイド軟膏を塗っても全然良くならない」というお子さんの1番の原因は、塗っている軟膏の量が足りないことです。ステロイド軟膏・保湿剤どちらでも、必要な量は次の図のように「FTU=finger tip unit」で示されます。塗った場所の皮膚にティッシュペーパーをくっつけて、少し動かしても落ちないくらいのしっとり感がある量が適切です。


②スキンケア
スキンケアとは、しっかり「洗浄すること」と「保湿すること」です。アトピー性皮膚炎の治療で最も大切なのは、この『スキンケア』です。ステロイド軟膏だけ塗っていても、スキンケアがきちんとできていなければ湿疹は良くなりません。というのも、アトピー性皮膚炎の原因が「皮膚の乾燥や様々な原因で起こる皮膚のバリア機能の低下による炎症」だからです。このバリア機能の低下は、汗や汚れ、ペットの毛やフケ、細菌(バイ菌)や真菌(カビ)の感染、などが引き起こすことがわかっており、これらを除去することが重要です。

☆スキンケアのポイントは?
●石けんをしっかり泡だてましょう~泡石けんもオススメです~
石けんの洗浄効果は「泡で汚れを包むこと」で発揮されます。しっかり泡が立っていない固形・液体石けんで洗っても、汚れが落ちないうえに石けんが残りやすく、かえって皮膚に悪影響を及ぼすことがありますし、顔を洗うときには目の中に入ってしまいます。コシの強い泡をたっぷりとって、泡がとけないように洗うと石けんは目に入りません。
●シワを伸ばして洗いましょう
シワには汚れや汗がたくさんたまっています。首やわき、ひじの内側、足の付け根、ひざの裏側などが主な場所ですが、他にも手首や指などのシワも同じです。

③悪化要因への対策
ダニ・ハウスダスト、カビ、ペットのフケなどがアトピー性皮膚炎の増悪につながるため、こまめに掃除をしてこれらを除去することが必要です。また、規則正しい生活を心がけ、睡眠・食事のバランスを良好に保つことも重要です。

○当院での取り組み~PAEと取り組むアトピー性皮膚炎の入院治療~

当院ではアトピー性皮膚炎の患者さんの治療を主に外来で行っていますが、今年(2018年)の夏休みは小児アレルギーエデュケーター(PAE)と一緒に3名の患者さんに入院での治療を行いました。PAEとは日本小児臨床アレルギー学会が2009年度から開始した、アレルギー医療に関わる専門医療スタッフの認定資格で、看護師をはじめとして薬剤師・管理栄養士も対象とされている資格です。

入院治療では、普段の外来では見られないご自宅での洗浄方法や軟膏のぬり方を、医師やPAEをはじめとした医療スタッフとともに確認することができます。また保護者の方に対してだけでなく、小さなお子さんであっても患者さん本人に直接わかりやすく指導することができます。具体的には、1日3回医療スタッフと一緒に洗浄して軟膏塗布を行います。そうすることで、楽しく遊び感覚で洗浄しながらきめ細やかな泡の作り方を覚えたり、背中や耳のウラなどの洗い残しやすく軟膏を塗りにくいところをどうやって上手に洗うか、どうやって軟膏を塗ればよいか、といったことを身につけることができます。PAEは医師よりも患者さんに近い存在であるため、細かなご質問にもお答えできますし、ご自宅でのケアで起こる素朴な悩みごとへの対応も可能です。そして、入院中に覚えていただいたことをご自宅に帰ってからも実践していただくことで、しっかりと治療を続けることができるようになります。

入院治療と聞くと「重症な人が対象では?」というイメージを持ってしまうかもしれません。しかしその目的は「治療」というよりも「教育」が中心になります。したがって、「洗い方と塗り方」、「どの軟膏をどれくらいの量塗ったらよいのか?」という判断を覚えていただくことが、入院治療の一番の目的です。

はじめにお伝えしたように、アトピー性皮膚炎は繰り返し湿疹ができます。ですが、①副作用の出ない程度のステロイド軟膏を上手に使うこと、②スキンケアをしっかり行って湿疹の出る頻度を減らすこと、③悪化要因をできるだけ取り除くことで、すべすべのお肌を維持することができます。
なかなか良くならない湿疹でお困りの方は、ぜひご相談下さい。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 小児科

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