こんにちは。小児科病棟の薬剤師です。
患者さんへお薬の説明をする際、今まで飲んだことがありますか?どんな風に飲んでいますか?と、薬剤師からお尋ねすることがあります。逆に、どう飲んだらいいですか?この飲み物で飲んでも大丈夫ですか?と患者さん側から尋ねられることもあります。薬剤師のおすすめするお薬の飲み方については、過去の記事をご参照ください。
→過去記事「お子様にお薬を飲んでもらうために~薬剤師からのアドバイス~」
授乳期や離乳期、子どもから大人へ成長する過程で、味覚はどんどん変化していきます。子どものころは食べられなかったけど、大人になったら食べられるようになった、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
子ども向けのお薬は飲みやすいように味やにおいが調節されているものもありますが、一方でとても苦くて飲みにくいものもあります。製薬メーカーの情報や、研究発表された情報などが公表されていますが、実際にどんな味がするのか薬剤師が知っておかないと、いざ患者さんとご家族にお薬の説明をする際に説得力がありませんよね。
そこで今回は、小児科でよく処方される粉薬やシロップを、当院の薬剤師たちが実際に飲んで、味を確かめてみました。
粉薬とシロップをあわせて約20種類を用意しました。あらかじめ、お薬それぞれに飲み合わせを試してほしい飲み物を紙に示し、試飲を推奨しました。
飲み合わせるものとして用意したのは、水のほかに牛乳、アイス(バニラ)、りんごジュース、オレンジジュース、スポーツドリンクなどです。
(なお、試飲時は、十分な手指消毒後、口に含むとき以外は常にマスクをし、コップやスプーンは使いまわしをせずに各人で用意するなど、感染症対策を講じて実施しました。)

お薬そのものの味が一番好評だったのは、痰が出るときに飲むカルボシステインと、アンブロキソールというドライシロップ剤でした。ドライシロップ剤は、糖類や甘味料で甘く味付けられたもので、主成分が甘い味やにおいでコーティングされている状態のお薬です。お茶などと一緒に飲むとコーティングとの相性が悪く、不味く感じるという意見が多かったので、水以外の飲み物で内服するのは避けたほうが良いかもしれません。
一方、口にした全員から苦いという感想が出たのは、プレドニゾロン散という粉薬です。ステロイドのひとつで、免疫反応の抑制作用や、抗炎症作用を目的に処方されることがあります。このお薬は粒子の細かい粉薬で、成分本来の強い苦みが特徴です。錠剤の場合は表面がコーティングされているので、苦みがある程度抑えられていますが、粉薬はコーティングがされていません。実際に、処方されるお薬の中でも、とくに子どもが嫌がるお薬です。
どうしても飲めない場合、食べられるのであればアイスやチョコなど、甘味や味が濃いものの中に挟んで飲み込むことを提案しています。もともとやや苦みのあるオレンジジュースとの飲み合わせは、良い~悪いまで様々な意見が出ました。
意外な結果が出たのは、インフルエンザのお薬であるタミフル®ドライシロップとバニラアイスの組み合わせです。アイスとお薬の相性は最強だ、という定説がある中で、この組み合わせは逆に味が悪くなってしまうという感想が多くありました。インフルエンザで高熱が出ているときは冷たくて甘いものが欲しくなると思いますが、こちらのお薬については、水でお薬を飲んだ後にアイスを食べた方が良さそうです。
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「お子様にお薬を飲んでもらうために~薬剤師からのアドバイス~」
最後に、子どものいる薬剤師へ、お薬の飲ませ方に苦労したことがあるか聞いてみました。
『嫌がったことがないので、とくに工夫をしたことがない』
『コップに粉薬と水を入れて、混ぜながら飲ませていた』
『水に溶かすとぶーっと吹き出してしまうので、あえて粉だけを口に含ませる。しばらくジャリジャリして不快そうだったが、吐き出すことはしなかった』
同じような経験をされた方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
昨日食べられなかったものが今日は食べることができたり、成長するにつれて自己主張が増えてきたり、お子さんの心と体は日々変化していきます。
お薬を上手に飲むことができたら、たくさん褒めてあげましょう。上手にお薬が飲めないときや、どんな飲み物に混ぜたらいいかわからないときは、ぜひお近くの「(味の)違いのわかる」薬剤師へご相談ください。