子育てママ&パパのお悩みに小児科医が一問一答!【しばしばある質問&たまにある質問編】〜一ヶ月健診で聞きたいQ&A〜

前回の【特によくある質問編】に続き、今回は【しばしばある質問&たまにある質問編】として、頻度はそれほど多くないけど、知っておくと安心できることをQ&A形式でお話しします。前回記事をまだお読みで無い方は是非あわせてご覧ください。
→「子育てママ&パパのお悩みに小児科医が一問一答!【特によくある質問編】~一ヶ月健診で聞きたいQ&A~

<東京ベイ小児周産期チームから子育てママ&パパへ>

初めての赤ちゃんのお世話って本当に大変ですよね、特に一ヶ月健診ぐらいの時期って、新米ママパパにとっては一番大変な時かもしれません。
退院してお家に帰ってきた数日間はよく寝てくれて静かだったのに、生まれて2-3週になってくると、なかなか寝てくれないし抱っこしても泣き止まないなんてことが多くなってきて、「なんでなの?」「もう!」と言い出してしまいたくなる大変さ。慣れない授乳や抱っこで肩も凝るし、夜中も何回も起きて泣くからママパパも睡眠不足で疲労困憊。

そんなこんなで正しい思考回路じゃない所なのに赤ちゃんはまだまだ小さくて壊れちゃいそうで、ちょっとしたことでも「どこか病気なのかな?」と思い始めちゃうとどんどん不安になってしまいますよね。そんなママパパたちを少しでもサポートしたくて、当センター小児科での実際の一ヶ月健診でよく聞かれる質問を中心に、子育てお役立ちQ&Aとしてまとめました。

「かけがえのない我が子のために」というママパパの気持ちがずっと色あせずに続きますように、私たち東京ベイ小児周産期チームは、これからも情報発信を通じて、全国のママパパ、子供達のお役に立てればと思っています。

<しばしばある>

・しゃっくりがとまらない

赤ちゃんのしゃっくりの原因としては、①授乳後に胃がミルクと空気で押されて横隔膜を刺激することで起こる、②脳の伝達が未熟のためにおしっこを出す脳からの刺激が横隔膜にも伝わって起こるなど様々な原因があります。
縦抱きしてあげたり、背中をやさしくさすってあげたりしてげっぷさせてあげると胃内の空気がぬけて、横隔膜の刺激がやわらぐことがあります。

基本的にはしゃっくりが問題になることはほとんどありませんので、止まらなくても心配せずに様子を見てあげましょう。しゃっくりを止めようとして赤ちゃんをゆすったり驚かせたりすることはやめましょう。もしミルクを吐いてしまったら、しゃっくりが止まったことを確認してから落ち着いて哺乳をしましょう。

・頭についているカピカピしたものは?

これは新生児期〜乳児期にかけて皮脂分泌が過剰になる事で発症する慢性の湿疹病変で、詳しくは「乳児脂漏性皮膚炎」というものです。頭部以外にも顔面(特に前額部、眉毛部、鼻部)に黄色のベタベタしたバターを塗ったような湿疹ができる事があります。

・石鹸は使って良いの?洗い方の具体的な方法は?

生後1ヶ月は、新生児痤瘡や乳児脂漏性皮膚炎などの皮膚トラブルが起こりやすい時期です。しかし、石鹸を使って洗浄する事で過剰な皮脂を落とし、皮膚表面の細菌数を減らすだけで症状の改善が期待できます。

一方、ガーゼやスポンジを使っての洗浄は肌を傷つけるため推奨されません。よく泡だてた石鹸を手に取り、指の腹で優しくしっかりと洗いましょう。よく洗ったら石鹸が残らないよう、ぬるま湯で丁寧にすすぎ、柔らかいタオルで擦らずに押し拭きをしましょう。

・臍がじゅくじゅくしています。

臍肉芽といい、臍の緒がとれた部分が肉芽(傷を治すためにできる肉の盛り上がり)となったものです。表面が不潔となっている場合は、消毒液で消毒して経過をみることもありますが、じゅくじゅくや赤みが改善傾向にない場合は、処置が必要になることもあります。糸がひっかかるような形の場合は、根元を糸でくくって血の流れを断ち、余分な肉芽が脱落するよう処置を行います。糸がかからない場合や、糸で処理してもじゅくじゅくが残る場合は肉芽を焼く治療を行います。

稀ながらも、中から膿が出るような場合は、尿膜管遺残といって、胎児のころの組織が体の中に残っている場合があり、手術を要することがあります。

・でべそが気になります。

臍の緒がとれたあと、体の中につながっていた部分は機能を失って小さく萎縮し、まわりの組織がその部分を覆い隠すようにしてへそが作られます。こうした一連のへそのなりたちが不十分な時期に、皮膚をもりあげるように腸が触れることがあり、これを臍ヘルニアといいます。2-3ヶ月ごろにかけて大きくなることが多いですが、ほとんどは1歳までに自然になくなります。清潔な綿球をテープで固定し、もりあがらないようにする治療を行うこともあります。

自然治癒しない場合や、もりあがりが大きく皮膚が伸びてしまうことが懸念される場合、きわめて稀ですが腸が戻らないようになってしまう場合などには手術を行うことがあります。

・目やにが多い

目と鼻は鼻涙管という管でつながっています。泣いたときに鼻から出ているのは、実は涙なのです。この鼻涙管が狭かったり、つまったりしていると、涙目になったり、目やにが出やすくなります。ほとんどの場合は、1歳までに鼻涙管の通りが自然によくなります。気になるときは優しく拭き取ってあげましょう。

また目やにが続く場合には目頭と鼻の付け根の間を、親指や人差し指で1日数回優しくマッサージしてみましょう。黄色い目やにが多いときや、目頭が赤く腫れてきたときは、病院を受診しましょう。

<たまにある>

・ケイツーシロップって何?

ケイツーシロップとは、赤ちゃんにとってとても重要な栄養素であるビタミンKを補充するためのシロップです。母乳は赤ちゃんにとって最も良い栄養源です。しかし、母乳栄養だけでは不足してしまう栄養素もいくつかあります。そのうちの一つがビタミンKです。

ビタミンKは血を固めるために必要な凝固因子の材料となる物質です。ビタミンKが不足してしまうと、「ビタミンK欠乏性出血症」といわれる重篤な出血を起こす可能性があります。そのような出血を予防するために、母乳栄養では不足しがちなビタミンKをケイツーシロップで補ってあげるのです。

出生時、退院前、一ヶ月健診時にケイツーシロップを飲むことが多いです。これは「3回法」という飲み方ですが、施設によっては生後3ヶ月まで毎週1回飲む「3ヶ月法」もあります。どちらの方法でも出血予防に効果があるとされている大事なシロップですので、しっかり飲ませてあげましょう。もし飲ませたときに吐き戻してしまった場合はケイツーシロップをもらった医療機関にご相談ください。

出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「新生児の出血性疾患予防のためのビタミンK 投与法について(PDF)」

・哺乳瓶をうまく使えないのですがどうしたらいいか?

赤ちゃんの頭を少し上にあげた姿勢にして、乳首をできるだけ口の奥に入れ、赤ちゃんの舌の上に乳首を乗せるようにしてみましょう。空気を一緒に飲み込んでしまわないように哺乳瓶の角度を調整することも重要です。また乳首の種類(材質、穴の大きさ)を何種類か試すのもよいでしょう。

また無理に飲ませようとはせずに赤ちゃんが嫌がったところでやめたり、赤ちゃんが疲れているときや、寝る途中で哺乳瓶を加えさせるとうまく飲んでくれることもあるかもしれません。

・いつから外出してもいいですか?

外出(日光浴)は外気浴に慣れた後、生後1ヶ月を目安に開始してみましょう。
外気浴とは室内の窓を開けて外の空気に触れさせることです。生後2~3週間を目安に始めて、その後、徐々に時間を長くして外に連れ出すようにするといいかもしれません。また、外出の際は感染予防に努め、なるべく人の多いところは避けるようにしましょう。

・予防接種のスケジュールはどうしたらいいか?

誕生日から2ヶ月を過ぎたらワクチン接種(ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス)が開始となります。できるだけ早く効率よく予防接種ができるようにかかりつけ医(風邪などの病気や体調不良の際に受診したり、予防接種や乳児健診などの健康相談ができる医師・病院・診療所・クリニックのこと)を持ち、そのかかりつけ医と相談してスケジュールを立てましょう。

早めに接種することで、かかると重症になりやすい百日咳、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌などから赤ちゃんを守ることができます。以下に日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールを示します。

参考文献:
日本外来小児科学会(2020)「第5版 ママ&パパにつたえたい 子どもの病気ホームケアガイド」医歯薬出版株式会社
金子堅一郎(2016)「イラストを見せながら説明する 育児のポイントと健康相談」南山堂

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