子供のアナフィラキシーでパパとママに知っておいてほしいこと ~アドレナリン自己注射薬を使うときの注意点~

こんにちは。小児科病棟の薬剤師です。

アレルギーというと、花粉症や鼻炎の他、卵や牛乳、蕎麦といった食べ物を口にした時の症状が思い浮かぶと思います。
とくに子どもの場合、初めて口にする食べ物には不安を覚える方が多いのではないでしょうか?子どもに多い食物アレルギーは、重症の場合には命に関わることがあります。いざという時に備えて、アレルギーの症状や発症した時の対処法を知っておくことが重要です。
今回はアレルギーの中でもアナフィラキシーについて、症状や使用する医薬品の使い方、注意点をお話しします。

<アレルギーとアナフィラキシーの違いって何?>

有害な異物が体内に入ったときに起こる有益な防御機能を、免疫反応といいます。アレルギーとはその逆で、本来なら無害であると考えられる異物(アレルゲンまたは抗原)が体に入った際に生じてしまう、ヒトにとっては有害な防御反応です。

食物アレルギーは食物の摂取によって引き起こされ、大人よりも子どもに多く、成長に伴って改善することが多いアレルギーです。多くは食物の摂取後、数分から数時間以内に症状が出ますが、まれに症状が数時間遅れる場合や、摂取後の運動によって誘発される場合があります。食物アレルギーの有症率は子ども、とくに乳児期が最も高く、近年の厚生労働省の調査では、保育所入所児童の4%、また1歳児の7.1%が食物アレルギーであることが分かっています。

アナフィラキシーは、『アレルギー症状が複数臓器に全身性に惹き起こされ、生命に危機を与える過剰反応』のことをいいます。また、アナフィラキシーに血圧の低下や意識障害を伴う場合を、アナフィラキシーショックといいます。

食物アレルギーだからといって、全ての場合にアナフィラキシーが起こるわけではありません。また、食事後になにか症状が出た場合に、それが食物アレルギーであるとは限りません。本当に食物アレルギーであるかどうかは、詳しい検査をして確実な診断が必要となります。

しかし、アナフィラキシーは循環不全や呼吸器不全を呈する重篤な症状に陥ることが多く、疑わしい症状を認めた際の素早い対応が最も大切です。アナフィラキシーの既往がある場合や、アナフィラキシーを発現する危険性の高い場合には、アドレナリン自己注射薬エピペン®があらかじめ処方されることがあります。

<アドレナリン自己注射薬 エピペン®って何?>

エピペン®は、アナフィラキシーが現れた時に使用し、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。成分であるアドレナリンはヒトの体の中にも存在するホルモンの一種です。血中のアドレナリンには心拍数や血圧を上げる作用があります。アドレナリンは、アナフィラキシーの治療の第一選択薬です。

しかしエピペン®はあくまでも補助治療剤なので、アナフィラキシーを根本的に治療するものではありません。エピペン®注射後は、ただちに医師による治療を受ける必要があります。

エピペン®は、患者さんが携帯する、一回投与型の自己注射薬です。患者さん自身か、難しければ保護者または教職員や保育士が、アナフィラキシーが疑わしい緊急時にその場で投与します。エピペン®が処方されている子どもに下記の症状が1つでも現れたら、できるだけ早期にエピペン®を注射するとともに、救急車を呼びましょう。

日本小児アレルギー学会「一般向けエピペン®の適応」より引用

自分で注射を打つという行為は、非常に勇気がいることです。また、『本当にアナフィラキシーだろうか?』『もう少し時間が経てば、症状が治まるのではないだろうか?』と、ためらう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、アナフィラキシーは非常に短時間のうちに重篤な状態に至ることがあります。前述の表に当てはまる症状が見られ、『これは、もしかしたらアナフィラキシーではないだろうか?』と、少しでも思った場合にはすぐにエピペン®を使用しましょう。アドレナリン自体の副作用を恐れるよりも、救命のためのキードラッグとして対応してください。

<エピペン®を使う上での注意点>

~刺す場所は決まっています~

  • 太ももの前外側に垂直になるように持ち、強く押し付けてください。
  • 緊急の場合には、衣服の上からでも注射できます。
  • ※神経損傷のリスクがありますので、お尻や腕などへの自己注射は避けてください。

~いつでも使用できるような保管方法を~

  • 自宅ではいつでも使えるように、手の届くところに置きましょう。
  • アナフィラキシーに備えて外出時には必ず携帯するようにしましょう。
  • エピペン®の有効成分であるアドレナリンは光で分解しやすいため、付属の携帯用ケースに収めた状態で保存・携帯してください。
  • 15~30℃で保存することが望ましいため、冷蔵庫の中や熱くなる場所には置かないでください。
  • 飛行機内に持ち込む場合は、所持品検査時のトラブルを避けるため、予約時に航空会社へ連絡しておくことをおすすめします。

~実は使用期限があります~

  • エピペン®注射器本体のラベルに表示されている使用期限を必ず確認し、使用期限が切れる前に未使用のエピペンを持って医療機関を受診し、新しい製品の処方を受けてください。
  • 使用期限切れや使用済みのエピペン®は、薬液や注射針が含まれるため普通ごみとして廃棄することはできません。医療機関にて医療廃棄物として廃棄いたしますので、廃棄を依頼してください。

<アナフィラキシーを防ぐために>

アレルギー疾患治療の基本は、原因となるアレルゲンの曝露を回避することです。しかし、食物アレルギーの場合、血液検査の結果だけを根拠に原因食物の除去を行うと、アレルギーが悪化してアナフィラキシーやアナフィラキシーショックに進展するリスクがあることが知られています。また、アレルギー治療を目的に、本来は避ける必要がない食物まで除去することで、栄養不足や成長障害を招くおそれがあります。

このため、医師による正確な診断に基づき、食物を不必要に除去することのない栄養指導が重要です。さらに、食物アレルギーは年齢とともに改善する場合があります。定期的に受診し、原因食物が食べられるようになっているかを医師のもとで確認しましょう。

子どもが保育所や幼稚園、学校へ通うようになると保護者の目が届かないことが多くなります。避けるべき食べ物、万が一の救急時の対応など、医師の診断をもとにした正確な情報を、家庭と保育所、幼稚園、学校で共有しておくことが大切です。

また、医薬品のなかには卵、牛乳、大豆などの食物に由来する成分が含まれているものがあります。知らずに服薬してしまうことを避けるために、新しく病院を受診する場合などには、食物アレルギーがあることを病院スタッフへ伝えてください。

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