こんにちは。小児科医です。
今回は、生まれて間もなく赤ちゃんによく見られる黄疸についてお話しします。
●黄疸とは
黄疸とは、一言で言うと『皮膚が黄色くなること』です。実際の見た目は“黄桃”を想像してもらえると分かりやすいです。もともとほんのり赤い肌に黄色味がかかるイメージです。これは、全ての赤ちゃんに多かれ少なかれ見られる生理的な現象ですが、中には治療が必要な場合もあります。
●ビリルビンが体を黄色くする。
そもそもこの黄色さの正体は何でしょうか。それはビリルビンと呼ばれる物質です。
この物質が血液の中に多くあると体が黄色く見えるのです。
●ビリルビンの行方
ではまずこの物質がどこで作られて、どこへ運ばれるのかを説明いたします。
ビリルビンは赤血球の中に含まれています。このため赤血球が壊されると血液の中にビリルビンが出てきます。赤血球とは、血液の主成分の1つで、血液中の酸素を全身に運ぶ大切な役割をしているものです。赤血球が壊されて出てきたビリルビンは肝臓に運ばれて、ここで手を加えられ、胆道という肝臓と腸をつなぐ道を通って腸へ運ばれます。腸の中のビリルビンはさらに形を変えつつ、一部は体の中に再吸収され、残りの大部分はうんちとして体の外へ出ていきます。うんちの色が茶色いのはこのビリルビンがたくさん含まれるためです。逆にビリルビンが少ないうんちは白に近い色になります。
●もともと赤ちゃんは黄疸になりやすい。
このように通常であれば、赤血球から出てきたビリルビンのほとんどは便から体の外へ出て行ってしまいます。では、なぜ赤ちゃんでは血液中のビリルビンが多くなってしまうのでしょうか。
それには多くの理由がありますが、主なものをご紹介します。
- 生まれたての赤ちゃんの血は濃い
生まれたばかりの赤ちゃんは大人よりも血液中の赤血球の数が多いです。なぜなら、お腹の中にいる間は、自分では酸素を取り込めないために外にいるよりも血液の中の酸素が薄く、限られた酸素を効率よく全身に運ぶ必要があるからです。一方で赤ちゃんの赤血球の寿命は大人よりも短いです。そのため、たくさんの赤血球が短い時間で壊れることになり血液中のビリルビンは増えやすくなります。 - 赤ちゃんは腸からたくさんのビリルビンを再吸収する。
お腹にいる間は、赤ちゃんはうんちを出せないので、余ったビリルビンはお母さんの血液に送って捨ててもらう必要があります。このためお腹にいるときは、一回腸に出したビリルビンの大部分を再吸収して血液に戻すようにできています。このしくみが生まれた直後はまだ残っているため、血液中のビリルビンは増えやすくなります。
これらの理由により赤ちゃんは簡単に黄疸になりますが、ほとんどは生後4日から5日をピークとして自然によくなっていきます。
●病気としての黄疸
中には普通は見られない病気としての黄疸もあります。
これは、様々な原因によって赤血球が壊されビリルビンが増えてしまうことやビリルビンをうんちとして外に出せないことによって起こります。
●高い濃度のビリルビンは脳に悪影響を及ぼす
血液中のビリルビンが少し多くても体に害はありません。しかし、あまりにも多いと害を及ぼすことがあります。最も注意が必要なのは、脳への影響です。
高い濃度のビリルビンは、脳の組織にダメージを与え、放置すれば後遺症として体に麻痺が残ってしまうこともあります。
このため、高すぎるビリルビンに対しては治療が必要となります。
●ビリルビンは光で分解される
血液中の高いビリルビンを減らす最も一般的な方法は光です。特殊な波長の光を赤ちゃんの体に当てることで、血液中のビリルビンを分解することができるのです。これによりほとんどの黄疸は良くなります。
●お母さんにできる新生児黄疸の予防法
お母さんにできる黄疸の予防法はズバリ哺乳をたくさんしてあげることです。母乳でもミルクでも構いません。すでにお伝えしたように、黄疸の原因の1つは赤ちゃんの血が濃いことです。たくさん哺乳をしてあげることで、たくさんの水分が赤ちゃんの体に吸収され、血が薄まってくれるので、結果としてビリルビンを下げることができるのです。さらに哺乳することは腸を動かしうんちを出してあげることにもなるので、これも体のビリルビンを減らすことにつながります。
もちろん、これで全ての黄疸を予防することは難しいので、たくさん哺乳をしていても皮膚がどんどん黄色くなってしまうと感じたときには小児科を受診しましょう。またうんちの色が白くなったときは、うんちの中にビリルビンを出せていないサインです。原因として肝臓と腸をつなぐ胆道が閉じてしまう胆道閉鎖症という病気が隠れている可能性があり、手術が必要な場合もありますので、早めに小児科を受診しましょう。
以上が赤ちゃんによく見られる黄疸のお話になります。一口に皮膚が黄色くなるといっても、心配のないものから治療が必要なものまで様々です。対応に困ってしまったときは、まずはお近くの小児科の先生にご相談ください。