小児内分泌科医がお話する成長障害の病気〜お子さんの「成長曲線」を描いてみませんか?(病気の早期発見のために)~

乳幼児健診、保育園や幼稚園、学校の健康診断では必ず身長や体重をはかりますが、その結果をどう活用していますか?
こどものからだは日々変化しています。
毎回の身長・体重の数字(「点」の情報)はもちろん大切なのですが、きちんと大きくなっているかといった“変化”(「線」の情報)をみることも重要なのです。
その“変化”を見やすくするためのグラフが「成長曲線」です。

こどもの成長

こどもの成長は非常にダイナミックで、平均的な子は男女とも身長約50cmで生まれ、1歳のお誕生日ころには約75cmになります。
その後の伸びは徐々に少なくなりますが、4歳のお誕生日ころには男女とも身長約1mになります。
在胎週数のわりに小さく生まれた子も、ほとんどは2~3歳までに標準の範囲に追いつきます。
その後小学生のあいだは1年で5~6cmずつ一定のペースで伸び、思春期(二次性徴)がはじまると再び急激に伸びるようになります(成長のスパート)。
ちなみに二次性徴のはじまりは、男子は睾丸(精巣)が大きくなりはじめること、女子は乳房がふくらみはじめることを目安にします。思春期に入る年齢は個人差が大きく予測もできませんが、平均的には男子で約11歳、女子で約10歳です。
やがて身長の伸びはとまり、約95%の日本人成人の身長は、男性で159~182cm(平均約171cm)、女性で148~169cm(平均約158cm)の範囲といわれています。
標準的な身長・体重の範囲や、成長のパターンが印刷された「成長曲線」用紙は、インターネットからも入手できます。
就学前のものは母子手帳の後ろの方にも載っています。
また2016年度から学校健診の場でも積極的に成長曲線が使われるようになったので、学校からお子様の記録が記入された成長曲線を渡された方もいらっしゃるかもしれません。

「成長曲線」の使い方

「成長曲線」をつけることで、その時点での体格の評価(「点」の情報)とともに、標準的な発育をしているかどうか(「線」の情報)が目に見えやすくなります。
成長のパターンは家族内で似ることがあるので、多少はずれていても必ずしも病的ではない場合がありますが、もし標準的な成長パターンと大きく違う場合、すなわち、体格が小さすぎる・大きすぎる(低身長・高身長、肥満・やせ)、標準的な体格でも身長の伸びや体重の増加が少ない・多い、急に悪くなった・良くなりすぎた、などという場合には、何らかの病気が隠れていることがあります【図】。
原因となりうる病気は、年齢によっても違いますが、成長発育に関わるホルモン(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)の病気、在胎週数に比べて小さく生まれた影響、内臓の病気、骨の病気、腫瘍、栄養の問題、特殊な体質によるものなどが考えられます。
体格や成長のパターンに心配がある場合には、母子手帳や健康診断の記録といった身長・体重の記録を持参して、小児科の先生に相談してみるとよいでしょう。

【図】 小児科に相談した方が良い成長曲線の特徴
① 標準の線をまたいで伸び率が低下している(茶色)
例:成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群 など
② 標準範囲よりも小さい・大きい、もともと小さく生まれたが2~3歳になっても標準範囲に入らない(黄色)
例:体質性低身長・高身長、SGA性低身長症、軟骨無形成症・低形成症 など
③ ある時点から標準の線に沿わずに伸びすぎはじめた、伸びなくなった(緑色)
例:甲状腺機能低下症・亢進症、脳腫瘍 など
④ 思春期の成長スパートがはじまらない(水色)
例:体質性思春期遅発症、性腺機能低下症 など

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