「心雑音」があるといわれたのですが、大丈夫でしょうか?

「心雑音」があるといわれたのですが、大丈夫でしょうか?

近隣のクリニックから、ときどき子どもの心雑音についてご紹介を受けることがあります。
ほとんどの方が、これまでに一度も心雑音を指摘されたことがないとおっしゃいます。
心雑音といわれて大丈夫なのか、心臓に問題があるの?とお母様たちは大変ビックリされて、不安な気持ちで受診されるようです。
心雑音で当センターの小児科を受診される場合、先ず、生まれたときや乳児健診のときなどにも心雑音を言われたことがあるかを確認します。
次に、哺乳や食事の状況はどんな具合か、体重の増え方は良いかなど発育についてお聞きします。
実際にも体重や身長を測定して確認します。
また、ご家族の病気について、特に心臓の病気がある方がいらっしゃらないかをお聞きします。

診察のポイントとして、お子さんの顔色はどうか、呼吸は早くないか、荒くないか、手足は暖かいか、脈の触れは良いかなどを見ていきます。
そしていよいよ、聴診器で心音を聴きます。
心音というのは心臓の中にある弁が閉鎖したり、開放したりするときに発生する音で、ふつうはⅠ音とⅡ音の2つの心音が「トントン、トントン」というように聞こえます。

それでは、心雑音はどういう風に聞こえるのでしょうか。
心雑音はⅠ音とⅡ音の間か、Ⅱ音とⅠ音の間に「ザーザー」と聞こえます。
心雑音の大きさや性状は、病気があるかないか、つまり心雑音の原因によって聞こえ方が違います。
どのような原因であっても、心雑音というのは心臓や血管の内部で血液の流れが乱れるために発生する振動といわれています。

ご紹介される心雑音の原因として最も頻度が高いのは、無害性心雑音あるいは機能性心雑音といわれるものです。
これは生まれつきの心臓病がなくても、小児期にしばしば聞こえる心配のない心雑音です。
この無害性心雑音にも何種類かあって、聞こえ方や場所が微妙に違います。
共通の特徴としては、どれもⅠ音とⅡ音の間(収縮期といいます)に聞こえること、音の大きさが小さいこと、体位によっても聞こえにくくなったりすることが挙げられます。

新生時期から1か月健診のころによく聞こえる無害性心雑音には、生理的な末梢肺動脈狭窄とよばれるものがあります。
これは、左右に分かれる肺動脈がまだ年齢的に細いために、血流の乱れが生じるために聞こえる心雑音です。
生後3か月頃を過ぎると、肺動脈が太く成長するために聞こえなくなります。
最も多い無害性心雑音は、乳児期から幼児、学童に聞こえるものでStill雑音と呼ばれています。
これは、左胸の乳房の近辺に聞こえる低い調子の「ブーン」と聞こえる雑音です。
発生機序は左心室内の周期性の振動といわれています。

他にも静脈コマ音といわれる「シャン、シャン」と聞こえるものや左胸の上部で聞こえる無害性心雑音もあります。
これらの心雑音はそれぞれ違いがあるので、小児の循環器専門医が聞くとかなりはっきり区別できます。

ちなみに小学校から施行されている学校心臓健診では、心雑音はかなりの頻度で指摘されますが、そのほとんどは無害性心雑音といわれています。
更に、発熱時や貧血があるときは、普段はきこえないのに心雑音が聞こえることもあります。

クリニックで心雑音をいわれたとき、無害性心雑音のことが多いのは確かです。
しかし聴診器だけでは無害性心雑音と確信がもてないこと、もし生まれつきの心臓病があったらいけないという理由で、お子さんが元気そうに見えてもクリニックの先生は病院にご紹介されるのだと思います。
実際に、心雑音以外に何も症状がないときでもごく稀に、心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存、肺動脈弁狭窄、僧房弁閉鎖不全などの病気が見つかることがあります。
病院を勧められたときは、早めに受診するようにしましょう。

さて、聴診が終わると、さらに検査をすすめていきます。
そこで最も重要な検査が心臓超音波検査です。
エコーともよばれる検査で、心雑音の原因が生まれつきの心臓病によるものか、無害性心雑音なのかはっきりと診断できるのです。
ですから、紹介をうけるとほぼ100%心臓超音波検査を行います。
お子さんに負担なく手軽にできる検査として最も大事な検査といえます。

東京ベイ・浦安市川医療センター小児科では、小児循環器専門医師が毎週木曜日の午後に専門外来を行っています。
今回のテーマである心雑音以外にも、先天性心臓病の診断と治療、不整脈、川崎病など、お子さんの循環器に関することについて幅広く診療ができますので、是非お気軽にご利用ください。

※写真掲載につきまして、ご本人、ご家族のご了承をいただいております。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 小児科

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