臍ヘルニア(さいへるにあ)〜『赤ちゃんのでべそ』そんなに心配しなくても大丈夫です〜

臍ヘルニアとは??

『臍ヘルニア』は俗に『でべそ』と呼ばれるものです。多くは生後1ヶ月程度から臍(へそ)のふくらみを認め、患者さんは1ヶ月健診などで指摘され、小児外科の外来を受診することとなります。
通常、おなかの壁は大まかに3つの層(腹膜・腹壁筋・皮膚)で構成されています。臍ヘルニアのお子さんは、この中の腹壁の筋肉(臍周囲)の膜が完全に閉じずに生まれてきたため、啼泣などで腹部に力が入る際に、腹部の臓器(腸やお腹の水)がヘルニアの袋にとび出ることで、臍の部分の皮膚がふくれます。臍ヘルニアは1歳までに自然治癒する可能性が約80%、2歳までに自然治癒する可能性が約90%あると言われています。自然治癒とはどういうことかというと、欠損していた臍周囲の腹壁の筋肉が、乳児期の筋肉の成長に伴って自然閉鎖するのです。

どういう点に注意が必要でしょうか??

臍ヘルニアでは、非常に稀ですが、とび出た腸がヘルニアの門にはまり込んでしまって、おなかの中(腹腔内)に戻らなくなることがあります。これを『臍ヘルニア嵌頓(かんとん)』と言います。『臍ヘルニア嵌頓』では腸管がはまり込むために腸液の流れが途絶えますので、嘔吐を頻繁に繰り返すこととなります。『臍ヘルニア嵌頓』となった場合は緊急手術が必要ですので、臍ヘルニアのあるお子さんが嘔吐を頻繁に繰り返す際には、小児外科のある病院を受診して下さい。

『綿球圧迫療法』という治療法

昔は5円玉をお臍にテープで貼って治すと言われておりましたが、硬貨を皮膚に常に貼り続けていると、皮膚の金属アレルギー症状が起こり、かぶれてしまう可能性が高いことがわかっています。一方で、近年有効性が認められている治療法が『綿球圧迫療法』です。臍に綿球を押し込むことで、ヘルニア門からお腹の中の臓器がヘルニアの袋に飛び出ないようにします。そして、透明なフィルムテープで綿球を臍の皮膚に固定を行います。綿球および臍の透明フィルムは市販されているものを使っています。交換の頻度は当センターでは「3日に1回の交換」を推奨しております。テープを貼っている部位に皮膚かぶれを起こしてしまうお子さんが時々いらっしゃいますが、その際は綿球圧迫療法を一時中止していただき、皮膚の状態が改善したら再開していただくのが、治療を継続するにあたって効果的だと考えています。ある報告では「綿球圧迫療法を生後3ヶ月以内に開始すると治癒率が90%以上になる」と言われております。綿球の大きさはお子さんの症状によって適切な大きさが異なりますので、『綿球圧迫療法』をご希望の際は、小児外科の外来を受診して下さい。

手術時期に関して

手術の時期に関しては、いまだ統一したことが決まっておりません。2歳以降まで手術を待つ施設も多くあります。しかし、ヘルニア門が大きいお子さんについては2歳まで経過観察をしていても症状が改善する見込みが低く、『臍ヘルニア嵌頓』のリスクを考慮して、当センターでは1歳6ヶ月を目安に手術を施行しております。

おわりに

お子さんの臍に関してのご希望やお悩みは、ご家族によって様々です。こちらに記載した『綿球圧迫法』は、たとえ完治しなかったとしても、臍の余分な皮膚を減らす効果があります。お子さんの臍に関して御不安なことがございましたら、お気軽に当センター小児外科外来にご相談ください。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 小児外科

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