こんにちは。東京ベイの小児外科です。
お子さんが排便時に泣いて痛がったり、排便後におしりを拭いたら真っ赤な血が付いて驚いたりしたことはありませんか?
今回は、こどもの肛門疾患について、お話ししたいと思います。
*記事内の写真掲載につきましては、ご本人、ご家族の了承を得ています。
排便時に出血や痛みがみられるものは?
●裂肛(れっこう)
硬い便が肛門を通過する際に肛門の粘膜や皮膚が裂けて出血するもので、いわゆる「切れ痔」です。女の子の方が多いと言われています。硬くて太い便で切れやすいので、便秘気味のお子さんは要注意です。繰り返し切れることもあり、痛いので排便をがまんしてしまうとさらに便が太く硬くなり、排便時に余計に辛い思いをしてしまいます。出血や痛みが続く場合は、便を軟らかくして出しやすくする下剤を内服し、裂けた部位には塗り薬を使います。
●内痔核(ないじかく)
こちらはいわゆる「いぼ痔」で、肛門の粘膜の内側で静脈がうっ血してこぶ状に腫れている状態です。こどもでもおとなと同じように排便の刺激で出血がみられ、腫れが大きくなると、排便にともなって肛門から出てきてしまうことがあります。ただし、おとなとは異なり手術が必要となることはほぼありません。便秘や排便時のいきみすぎを緩和し、腫れをひかせるための塗り薬や坐薬を使います。
●大腸ポリープ
こどもでも大腸にポリープができることがあります。おとなと違って、悪性化や再発の心配はほとんどありませんが、大きくなるとポリープの表面から出血したり、ときに肛門から出てきてしまうことがあります。治療はポリープの切除となりますが、肛門から届く範囲にできたものは肛門から、離れて奥の方にできたものは内視鏡で切除します。
肛門周囲にしこりや腫れがみられるものは?
1)肛門の周りが腫れている
●肛門周囲膿瘍
肛門の傍におできのような腫れがみられるもので、男の子に多いと言われています。
以前に扱った記事がありますのでこちらをご参照ください。
参考記事「肛門の周りにおできができたら~小児外科医がお話しする肛門周囲膿瘍の症状と治療~」
https://tokyobay-mc.jp/pediatric_surgery_blog/web04_10/
●肛門皮垂(こうもんひすい)
裂肛により裂けたあとの皮膚がひだ状に盛りあがって残るもので、「スキンタグ(skin tag)」や「みはりいぼ」とも呼ばれます。肛門の前側(腹側、仰向けに寝たときの12時方向)にできることが多いです。先にお話ししたとおり、裂肛が女の子に多いことから肛門皮垂も女の子に多くみられ、裂肛が改善すると自然に小さくなってきます。ひだがすこし残ることがありますが、通常は切除手術の必要性はありません。痛みがなく排便のじゃまになることもありませんが、排便後の拭き残しの一因にはなるようです。
2)肛門からなにか出ている
●内痔核
●大腸ポリープ
前項でお話ししたとおりですが、「なにか」が出ているけれどそれが何なのか、見た目では判断が難しいことはよくあります。また、排便時もしくは排便後にはよく出てくるものも、診察室では観察できないことはよくあります。受診される場合は、ご自宅でタイミングが合えば写真を撮っておいていただけると大変参考になります。
●直腸脱
肛門から直腸(肛門から入ってすぐの大腸)の粘膜が全周性に出てきてしまい、赤くリング状のしこりの様に見えるものです。排便時に強くいきむことが誘因となりやすく、治療としては排便状況の改善が主で、手術を必要とすることはほとんどありません。粘膜が出てしまったあと自然に戻らないときは、手でおさえると肛門のなかに戻すことができますが、痛がったり、腹圧がかかってなかなか戻らず出ている粘膜の色が赤黒くなってしまった場合には救急の受診が必要となります。
肛門の診察はどのようにするでしょうか?
さいごに肛門の診察についてお話しします。
外来での診察は、次のように進めていきます。
①視診
ベッドに寝た状態で肛門とその周りを観察します。体勢は、左側を下にした横向きで膝を曲げていただくことが多いのですが、小さいお子さんではおむつ替えのときのように仰向けで膝を曲げていただくこともあります。しこりや腫れているところはないか、切れているところはないか、出血はないか、周りの皮膚がかぶれていないか、などを判断します。

②直腸診
肛門から指を入れて、肛門から直腸にかけて指が届く範囲の診察を行います。しこりがないか、便がたまっていないか、便の硬さはどうか、痛みや出血がないか、などを判断します。指は人差し指を用いることが多く、小さいお子さんでは小指のこともあります。
③肛門鏡検査
肛門診察用の短い筒状の器具を使って、肛門から直接なかを覗き込んで観察します。直腸診で気になったところを確認するとともに、ほかに変わったところがないかどうか、しこりの部位や大きさはどうか、出血しているところはどこか、などを判断します。
お子さんは緊張していますし、とくに横向きになると次に何をされるのか見えないため、痛くないか不安で身構えてしまうことがよくあります。肛門に力が入ると診察しづらい上に痛みを生じかねません。お子さんに医師や看護師が声をかけて緊張を和らげようと努力しますので、お付き添いのご家族もどうかご協力をお願いいたします。
この診察の結果、必要によっては大腸の造影検査や内視鏡検査などのさらに詳しい検査が追加となることもあります。


以上、こどもの肛門疾患と診察についてお話ししましたが、いかがでしたか?
お子さんのおしりに気になることがあれば、ぜひいちどご相談ください。