ソケイヘルニアの手術が決まるまで -いつ手術すべきか?その方法は?-

はじめに

ソケイヘルニアは足の付け根(ソケイ部)が腫れる病気であり、小児外科で手術する病気のなかでは最も頻度が多い病気です。
2017年5月の記事(下記リンク参照)で、ソケイヘルニアの原因や治療法についてご紹介しました。
今回はその続きとなりますが、前回の記事も併せてお読みいただければ幸いです。

参考記事「ソケイヘルニアとは? -子供の足の付け根が腫れたときには-」

いつ手術するのか?

ソケイヘルニアの治療の原則は、手術を行うことです。
ソケイヘルニアと診断されたら、嵌頓かんとんを起こすことがなければ急ぐ必要はありませんが、お子さんの体調のよいときに手術を予定しましょう。
手術後にいくらか運動制限があるため、夏休みなど長期のお休みを利用したり、運動会などの行事予定をあらかじめ避けておいたりすることもできます。
もちろんご家族の予定との調整も必要となります。

ただし、1歳未満の乳児では、自然に治る可能性を期待しつつ、嵌頓の危険性も考慮しながら、手術の時期をご相談して決めていきます。
嵌頓を起こすようであれば、手術を早めに行うことを検討しましょう。

手術方法の選択は?

前回もご紹介したとおり、ソケイヘルニアの手術方法としては、
①ソケイ部切開法
②腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術(Laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure; LPEC)
の2つがあります。
手術をすることに決定したら、手術方法はご家族に、大きなお子さんであれば患者さんご本人とも相談して、選択していただいています。
どちらの方法であっても全身麻酔での手術となり、入院期間もかわりません。

ソケイ部切開法は従来から行われてきた手術方法です。
これに対して、腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術は約20年前に日本で開発された手術方法であり、現在では多くの施設で行われています。
ソケイ部切開法と比較すると、
●症状がない側のヘルニアの有無を確認し、手術後の反対側のヘルニア発症を予防できる
●両側とも手術を行う場合、総手術時間を短縮できる
●男児では精管や精巣への血管を損傷する危険性が低い
●女児の卵管が出ているタイプのソケイヘルニアでは、卵管を損傷する危険性が低い
などの利点があるといわれています。
ただし、腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術はソケイ部切開法よりも歴史が浅く、長期的な術後成績はまだ不明ではあります。

どちらの手術方法であっても、精管や卵管の損傷は将来不妊の原因となる可能性があるため、手術中に細心の注意が必要とされます。
日本小児外科学会では、小児外科専門医のいる病院での手術をお勧めしています。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 小児外科

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