小児の上肢骨折について〜診断と治療法、実際に多く見られる肘周辺骨折〜

浦安市や市川市は千葉県の中でも高齢化率が低くたくさんの子供たちが住んでおり、東京ベイ・浦安市川医療センターでは小児の上肢骨折手術数が多いことが特徴です。
2014年以降に、手術を行った小児上肢骨折は229件でした(保存治療例はその数倍と考えられます)。
4-12歳に多く、その80%が男児、15-18時頃の学校が終わった後に受傷することが多くなっています。
小児骨折の場合、ほとんどがギプスなどによる保存治療(手術しない治療方法)が可能であり、一部の重症患児が手術の適応になります。
ギプス治療可能の場合は、近隣開業医の先生方と連携の上で逆紹介させていただくことも多くなっています。
重症骨折の場合、当日の緊急手術となる場合がありますが、整形外科だけでは対応することができません。
当センターには小児科、小児入院病棟、麻酔科、救急科の協力体制があります。
合併疾患の診察・治療をしてくれる小児科、緊急での全身麻酔手術に迅速に対応してくれる麻酔科、受傷時の初期救急対応をしてくれる救急科のバックアップがあってこそ、われわれ整形外科も安全に手術に取り組むことができています。

小児骨折の特殊性とは〜小児の骨は未熟なため正確な診断が困難〜

小児の上肢骨折治療は整形外科専門医でも苦手としている先生が多いと思います。
理由はいくつかありますが、そのひとつは小児の骨は骨が未熟であるためX線撮影では写らない部分が多く、年齢とともに徐々に骨が出現してくるので、知識と経験がないと正確な診断が困難だからです。
また、痛がっている小児では問診や診察、画像検査が十分にできないことが多いです。
少子高齢化で小児骨折自体は減少しており、一部の小児を治療可能な病院へ患者さんが集中するため、治療する機会が少なくなっていることもあるでしょう。

小児骨折の治療方法〜より高いレベルで治すために手術治療も検討〜

治療は多くがギプス固定などによる保存治療で対応できます。
骨がつくまでの期間は成人と比較して早く、関節が拘縮といって固まってしまうことはが少ないためリハビリを必要としません。
リモデリングといって自家矯正(じかきょうせい:曲がって骨癒合してもまっすぐ治ってくる)が旺盛なことも小児の特徴です。
しかし一方で、自家矯正は骨折部位や年齢により異なるので、後遺症を減らすために手術治療を行うべきかの判断は重要となります。
また、成長障害(成長過程において数年かけて徐々に変形が生じる)が起こる可能性もあり、受傷時の整復と長期経過観察が必要となります。
骨がつくまでの期間は早いので、大人のようにプレートやスクリューなどの金属を埋め込む手術は少なく、鋼線(医療用の針金のようなもの)で固定することが多くなります。
このように小児骨折は、大人と比較してただ体が小さいだけではないので、その特徴を十分に考慮した治療方針を立てていきます。
医療の発展に伴い、治療で求められるレベルは確実に上がっています。
以前なら保存療法を行っている場合でもより高いレベルで治すために、本人やご家族と相談の上で手術治療を行うこともあります。

実際に多い小児の上肢骨折〜上腕骨顆上骨折、上腕骨外側顆骨折などの肘周辺骨折〜

最も多い骨折は肘周辺骨折です。
上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)、上腕骨外側顆骨折(じょうわんこつがいそくかこっせつ)という肘のすぐ上での骨折が代表的です。
特に上腕骨顆上骨折で転位(骨折部のズレ)が大きい場合に、周囲の神経や血管を圧迫してしまうこともあり、緊急の手術を必要とします。
肘関節脱臼(ひじかんせつだっきゅう)や骨端線損傷(こったんせんそんしょう:成長線での骨折)、前腕・手関節周辺も転倒や転落で受傷することが多く、後遺症として関節の動きが悪くなったり変形が残ることもあります。
手術はメリットも多くありますが、必ずデメリットもあります。
手術治療とギプス治療のメリットとデメリットを十分に説明し、病状をご理解いただいたうえで治療方針を一緒に決めていくことを心掛けています。

当センターにおける小児の上肢骨折治療における取り組み

当センターでは、整形外科医の豊富な経験と熱意、学会や研修会参加による最新の知識習得、そして信頼の置けるスタッフとともにチーム全員で小児の上肢骨折に取り組んでおります。
小児の治療においては、合併疾患の診察・治療をしてくれる小児科、緊急での全身麻酔手術に迅速に対応してくれる麻酔科、受傷時の初期救急対応をしてくれる救急科のバックアップが欠かせません。
小児科、小児入院病棟、麻酔科、救急科の医師たちとの万全の連携体制が敷かれている東京ベイだからこそ、我々整形外科医が安心して小児上肢骨折の手術に臨むことができます。
日々の診療に忙殺される医師不足もあり、ベッド満床や手術中は受け入れ困難な場合もありますが、未来のある子供達のために少しでも地域医療に貢献していきたいと思っています。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 整形外科

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