卵巣は腫瘍のhot bed(温床)と言われていて、多種多様な腫瘍を形成すると言われています。
種類
卵巣腫瘍の種類は、良性卵巣腫瘍、境界悪性卵巣腫瘍(良性と悪性の中間の顔つき・振る舞いをする腫瘍)、悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)に分かれます。種類も、卵巣の中にお水をためるタイプのもの(上皮性腫瘍:漿液性腫瘍等)、古い血液をためるタイプのもの(上皮性腫瘍:内膜症性嚢胞)、髪の毛や皮膚成分や脂肪成分を混じるタイプのもの(胚細胞性腫瘍:皮様嚢腫)、ホルモンを分泌するタイプのものなど(性索間質性腫瘍:顆粒膜細胞腫等)など様々な特徴を持ちます。
症状
卵巣腫瘍は、一般に、腫瘍が小さい場合は無症状であることが多いです。しかし、卵巣腫瘍が大きくなり、卵巣を支える血管の部分が腫瘍の重みでねじれること(卵巣腫瘍茎捻転)があり、激しい下腹痛が出現することがあります。これは、直径5-15cmの卵巣腫瘍で起こることが多いといわれています。また、特に内膜症性嚢胞(いわゆるチョコレート嚢腫)においては、骨盤内の臓器との癒着が想定されるため卵巣腫瘍茎捻転は起こりづらく、腫瘍の破裂が多く、同様に激しい下腹痛が出現します。
卵巣腫瘍の種類によっては(特に粘液性腫瘍)、10cmをはるかに超えるような腫瘍を形成することもあります。腫瘍が大きくなると、膀胱の圧迫症状である頻尿や腸管の圧迫症状である便秘などが起こることもあります。卵巣腫瘍では、おなかの中に腹水を産生し腹囲が大きくなることや、腹部膨満感を感じられ胃腸の異常と思われて、内科を受診される方もいらっしゃいます。
診断
診断は、卵巣は腹腔内(おなかの中)に存在するため、まず内診で卵巣の大きさ等を診察します。次いで、経腟・経直腸・経腹超音波検査で、その正確な大きさや卵巣内部の状態を観察します。更にMRIや悪性が想定される場合はCTを施行します。
また、腫瘍マーカーといった腫瘍の存在により増加してくる物質を血液検査にて測定し、診断の補助とします。最終的な確定診断は、手術で摘出した卵巣もしくは卵巣腫瘍を病理検査(顕微鏡での詳細な検査)によります。卵巣腫瘍の手術時は全例必ず病理検査に提出します。
治療
治療は、良性卵巣腫瘍であれば、腫瘍の大きさがある一定以上になると手術をするのが一般的です。一定の大きさ以上になると、卵巣腫瘍茎捻転や卵巣腫瘍破裂のリスクが高まり、また一部の腫瘍はがん化することがあるからです。また、激しい下腹痛など緊急性のある場合は大きさのみならず、総合的に判断し手術を行います。手術療法としては、良性卵巣腫瘍は腹腔鏡手術が一般的となってきています。手術は、付属器切除(卵管+卵巣切除)や妊娠可能な年齢の方には、腫瘍のみを切除し正常卵巣部分を残す、卵巣腫瘍切除を選択する場合もあります。
境界悪性卵巣腫瘍、悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)に関しては、別の機会にお話ししたいと思いますが、腹腔鏡手術はガイドライン上適応外であり、開腹手術となります。病気の進み具合(進行期)によっては、抗がん剤を使用することもあります。
お気軽にご相談ください
私たち、東京ベイ・浦安市川医療センター産婦人科では、良性卵巣腫瘍に対し、ほぼ全例で腹腔鏡下手術にて対応しております。小さなお傷でしっかりと治すことを目標にしております。
また、境界悪性卵巣腫瘍、悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)にも対応させていただいております。
ご心配なことがありましたら、お気軽にご相談いただけましたらと思っております。