転ばぬ先の危機管理〜助産師が新型コロナウイルス感染症に罹って考えさせられたこと〜

みなさん、こんにちは。東京ベイの助産師です。

私は昨年7月に初めて新型コロナウイルス感染症に罹患しました。私が担当している産婦人科病棟には、お産を控える方から分娩を終えた母児が入院する病棟です。今まで感染しないことを目標に、粛々と生活してきました。しかし、遂に『感染』することになったのです。

感染症は、静かに始まりました。ある日の朝家族が発熱し、近所のクリニックでPCR検査を受けたところ『陽性』と診断されました。濃厚接触者である私と同居家族も検査し、結果は陰性でした。家庭内隔離を強化しましたが、陽性家族が陽性と判明した2日後、私自身が発熱しPCR検査を受けると『陽性』の結果でした。

知ってはいましたが、これが『家庭内感染の現実』なんだと、感染している事実を受け止めました。そこで、助産師である私が自宅療養期間中に経験したことの中で、印象に残っていることを少しだけ紹介していきます。

<生活の三大要素「衣食住」つまり、生活をたててゆくこと>

自宅療養になって一番困ったことは、なんと言っても「食事」です。逆に、衣服と住居は困りませんでした。私は、今までお産を控える妊婦さんに『お産はいつ始まるか分かりません。なので、冷蔵庫は整理整頓しておきましょう。ご家族が困らないように、作り置きもお勧めです。お産後しばらくは、買い物にはいけませんので、使いやすい冷凍食品を揃えておいてもいいでしょう。』など、アドバイスしてきました。

ところが、我が家の冷蔵庫の実態は食材の在庫が少なく、牛乳などの乳製品やお肉や野菜などの生鮮食品は底を尽きそうな状態でした。そして、頼みの綱になるはずの宅配サービスは、こんな時に限って頼み忘れているのです。オーダーしても、やってくるのは1週間後です。特に『いつもはぎっしり』のはずの、冷凍庫のストックがないことに気付いたのも感染した後でした。散々な結果に『もう、笑うしかない』状態に陥りました。

<『自宅隔離』当たり前の生活がいきなり閉ざされる不便さ>

私は、仕事帰りに夕食の買い出しをして帰宅していました。しかし、いきなり自宅隔離が始まったため、日ごろからの準備不足を痛感しました。まさに、『隔離生活は突然に。』を経験しました。同様に『災害は突然に。』であることに間違いはなく、日ごろからの備えが試されると感じました。

災害との最大の違いは、自宅は異常時、自宅以外は平時であったため、ネットスーパーやデリバリーなどを活用することで何とか困らず生活することができました。また、家族からの支援、行政からの支援などで食材を手に入れることはできました。しかし、災害時は全員が異常時になるため、支援が受けられない状況になってしまいます。だからこそ、日ごろから、災害に対する危機対策も行っていくべきだと感じました。

<電話やSNSなど駆使すれば、孤独を感じない>

自宅隔離中、嬉しかったのは家族や友人からの連絡です。毎日『体調はどう?何か困ってない?』と連絡してくれる家族や友人によって、孤独を感じることはありませんでした。

最近コロナが原因で里帰りをしないと決めた方、もしくは家族のサポートを控える方も少なくありません。お産後も同様に自宅で過ごす時間が多くなります。もちろん、一緒に育児をサポートしてもらうことで身体的な負担は軽減できるかもしれません。一方で、誰かと連絡を取り合うことで、精神的に安定することが十分できると感じました。決して、同じ空間にいることだけがサポートではないことを実感しました。

<最後に>

感染症や災害はいつ自分の身に降りかかるか分かりません。実際に何とかなるだろうと、あまり気に留めていなかった私は、平時にいかに備えられているかということの大切さを痛感しました。インターネットを使えば、いつでも発注することの便利さはあります。しかし、いざとなった時に対応できる備えを心掛けていきたいと思っています。

「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画」のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と定義しています。たくさんの情報の中に、最低でも3日分の備蓄を推奨しています。皆様もぜひこの機会に、ご自宅の備蓄の確認をしてみてはいかがでしょうか。

最後に、自分の周囲の方や大切な人を感染させないために、風邪症状などの体調不良を感じた場合は無理に外出や出勤をしない、同居する家族間で体調についての情報共有をすることを日ごろから心掛け、感染してもそれ以上うつさない行動が大切になるでしょう。

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