妊娠中に「お腹が張る」とは?〜症状とその原因、妊婦が気をつけるべきことを産婦人科医がお話します〜

妊婦健診を受診して、よく「おなかが張りますか?」などと聞かれることがあります。これはいったいどういうことを意味しているのでしょうか。
◯お腹が張るってどういうことでしょう?
◯お腹が張ってはいけないのでしょうか?
◯どういうことをしたらお腹が張りやすい?
◯病院を受診すべきお腹の張りは?

◯お腹が張るってどういうことでしょう?

妊婦健診の時によく聞かれる「お腹が張る」は子宮の収縮を意味しています。「子宮収縮がありますか?」と聞くのが正確なのでしょうが、そう聞かれても意味がわかりにくいので「お腹が張る」という言い方をしています。

実際に子宮が収縮すると腹筋に力を入れたようにお腹の表面が硬くなり、お腹の真ん中が突き出したようになり、お腹の表面が張っているように感じるそうです。私(産婦人科医)は男なので本当はどんな感じか感じることができません。 妊娠中は便秘気味になりやすく、腸にガスが溜まって膨らみ、お腹が張る様に感じることもあります。この「お腹の張り」とは違う張りです。

◯お腹が張ってはいけないのでしょうか?

では妊娠中に子宮が収縮してはいけないのでしょうか?実際には子宮はいつでも時々収縮しています。子宮が小さい頃は子宮の壁の筋肉の収縮は部分的に起こります。妊娠週数が進行して子宮が大きくなると一箇所の収縮は隣の子宮筋へ次々伝わり、子宮全体の収縮になります。局所的な収縮では子宮内圧が上がるところまでにはなりませんが、全体の壁が収縮すると子宮は縮まり、子宮内圧は上昇します。それが強く、繰り返し起こるのが陣痛です。

子宮が収縮すると子宮の口に内圧がかかり、内容(胎児、羊水、胎盤)が出される変化になります。それが起こるのが予定日付近なら正常の陣痛発来ですが、妊娠37週より前なら早産、22週より前なら流産となる動きです。

早産になりそうな状態を切迫早産と呼びます。どのくらい切迫している状態かは様々です。1時間に何回かお腹が張ります、と言う程度なら横になって休んだら治まるくらいで軽症でしょう。数分毎に強く張ってその度にかなりの痛みも伴い1時間以上も続く、となれば陣痛に近く数時間後に早産してしまうかもしれません。

実際には同じ強さの子宮収縮が起こっても、その時の子宮口の硬さによって結果は変わります。硬ければ子宮口が開くことはなく、何も起こらないかもしれません。軟らかければ弱い収縮でも子宮口は開いてしまうかもしれません。

そのため、どのくらいの強さならよくなくて、どのくらいの強さなら大丈夫などとは、個人差が大きく、同一人物でも妊娠や分娩の時期により硬さが違うので、一概に決めることはできません。同じ張りの強さでも個人により開き方が違うとなれば、結局客観的には結果として子宮口に開いてくる(短縮してくる)変化が起きるかどうかで判断することになります。

私たち産婦人科医は実際に早産になってしまう子宮収縮は止めるように治療しなければなりませんが、診察のきっかけになるのは妊婦さん本人からの自覚症状の訴えです。そこで「おなかが張りますか?」という質問になります。

◯どういうことをしたらお腹が張りやすい?

お腹の張り(子宮収縮)が通常の程度より頻回でなく、強くない、のが良いのですから、ふだん妊婦さんはどのように過ごしたら良いのでしょう。

切迫早産で入院安静となっている妊婦さんに聞いてみると、上のお子さんの幼稚園行事で長い時間立ちっぱなしだったとか、引っ越しで少し頑張りすぎてしまったとか、そして夜から張りが頻繁で強くなって続いている、などがきっかけになったりしています。

また、特にきっかけは思い当たらないが最近張りが多くて強かった、などです。妊婦さんが避けた方が良いのは、長時間歩き続けたり、立ちっぱなしだったり、おなかに力をいれたりのようですが、特に何もしなくてもなる人はなるようです。

医学的には切迫早産には子宮口付近の細菌感染の関連はあることが知られています。腟内に入った菌が感染を起こすと、炎症関連の物質が作り出され、それらが子宮の収縮を促すという流れです。また、子宮口付近に炎症性変化が起こると子宮口の組織は軟化し子宮口が開きやすくなります。健康な妊婦さんの腟内には乳酸菌などが常在菌として生育しており、腟内酸性度を高めて他の雑菌の増殖を抑えていると言われています。

◯病院を受診すべきお腹の張りは?

子宮収縮は妊娠週数が進んでお腹が大きくなってくるほど回数が増えるのが自然で普通です。張りの強さや回数はそれほど当てにならないとしても、参考にはなります。以前と比べて明らかに急に増えて痛みも伴う、横になって休んでも治まらず1時間に3、4回以上繰り返す、少量の出血を伴うなどは受診するべきかをかかりつけの産婦人科に相談するのが良いでしょう。特に出血は子宮口が開いて来ているために生じている可能性があり、また切迫早産に似た症状で重症な胎盤早期剥離の可能性もあるので受診が勧められます。

妊婦さん全員に毎回の妊婦健診の都度内診台に上がってもらい、子宮頸管の長さを測れば切迫早産の徴候のある人を早めに見つけられるかもしれませんが、多くの妊婦さんは多少の張りがあっても早産にはなりません。妊婦さん全員を毎回の健診時に頸管長測定することは、得られるメリットとかかる人手・時間・手間・妊婦さんの不快感などのデメリットを考えて推奨はされていません。

出血もなく、少し多い、強いくらいの張りであったら座ったり、横になったりして少し安静にしてみてください。それで治まる程度なら、少し様子をみられるでしょう。次回の診察の時に張りが多いと告げて、頸管長を測るなどすると安心でしょう。

参考:頸管長(頸管の長さ)

内子宮口から外子宮口までの長さを頸管長と呼びます。(←→)
頸管長が短いほうが早産になりやすいことが知られています。
子宮収縮による内圧上昇により内子宮口に開く力がかかる。(↗や↘)

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