子宮内膜症とは?
子宮内膜症とは、子宮内膜(月経をおこす組織)に非常によく似た組織が子宮以外の場所に存在する状況を指します。(本来、子宮内膜とは子宮にしか存在しません)子宮以外に発生した子宮内膜は正常な子宮内膜と同様に月経時に出血を起こします。卵巣に発生した場合は卵巣内に血液が貯留し、チョコレートのう腫と呼ばれます。子宮内膜症は出産可能年齢にある女性の10人に1人が発症します。痛み(生理痛や生理時以外の痛み)や不妊症の原因となる厄介な病気です。
子宮内膜症のできやすい部位
・卵巣:卵巣に子宮内膜症が発生すると卵巣のう腫を作ります。
卵巣内に血液が貯留し、古い血液はチョコレート色であるためチョコレートのう腫と呼ばれます。
・仙骨子宮靭帯:子宮の後ろ側の付け根にある靭帯をさします。
靭帯の中に痛みを伝える神経が走っています。
この部位に子宮内膜症が発生すると性交痛や月経痛の原因となります。
・ダグラス窩:子宮と直腸の間の空間です。
重症の子宮内膜症ではこのダグラス窩が癒着により閉鎖しています。
・肺:非常に稀ですが、肺に子宮内膜症が発生することがあります。
月経の度に喀血するという症状を認めます。
子宮内膜症の症状
・月経痛
・性交痛
・排便痛
・慢性骨盤痛(月経時以外でも下腹部痛がある状況)
・腰痛
必ずしも5つ全ての症状を認めるわけではありません。
年齢を経るとともに子宮内膜症は進行し、症状が悪化します。子宮内膜症が進行すると不妊症になることがよくあります。特に30代後半の進行した子宮内膜症では癒着が強くなり、自然妊娠が極めて難しくなります。
子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術
・子宮内膜症に対する手術は大きく2つに分類されます。
①チョコレート嚢腫の手術
患者さんが今後妊娠を希望されているのであれば、卵巣を温存し嚢腫だけを摘出します。チョコレート嚢腫では他の卵巣嚢腫と異なり摘出に伴う卵巣へのダメージが大きく、手術により卵巣機能が大きく低下する可能性があります。そのため、他の卵巣嚢腫の手術とは違い、より繊細に手術を行う必要があります。卵巣機能が大きく低下してしまうとその後の妊娠にとって不利となってしまうためです。
② 子宮内膜症病巣摘出術-生理痛を改善させる手術-
主に仙骨子宮靱帯に発生した子宮内膜症病巣を摘出する手術で、内膜症による疼痛を軽減させる目的があり、難易度の高い手術に分類されます。仙骨子宮靱帯は直腸と尿管に挟まれた部位に位置しております。子宮内膜症がある場合、直腸と尿管が仙骨子宮靱帯に癒着することにより、臓器が引っ張られ正常とは異なる位置関係となります。手術は、直腸と尿管の走行をしっかりと確認し、癒着を剥離し、内膜症により固くなった仙骨子宮靱帯を摘出する必要があります。癒着剥離の際は尿管や直腸に損傷が起きないように繊細な手術が求められます。