生まれてくる前の我が子の記念写真〜超音波胎児スクリーニングでわかること〜

妊婦健診時の胎児超音波検査のなかみ

妊婦健診の時には超音波検査(エコー検査)で胎児の姿をみる機会が多くあります。お腹の中の赤ちゃんの動く姿が画面で見られるということで、これを毎回の検診の楽しみにしている妊婦さんは多いと思われます。夫婦や家族で健診にみえる方もたくさんおられます。

この超音波検査ですが、実は妊婦さんやご家族にとっての超音波と医師など医療者にとっての超音波では意味が少し違うところがあると感じています。もちろん超音波検査の意味をよく理解されている妊婦さんもたくさんおられますが、この文章ではエコー検査のなかみをご紹介することで検査の意味のご理解を広めたいと思います。

基本的検査としての健診時超音波検査
基本的検査としての内容は胎児の心拍の確認(生死)、胎児の向き(頭位、さかご、横位など)、羊水量(多、中、少)、胎盤の位置(正常、前置胎盤、低値胎盤など)、胎児発育(推定体重計算など)など妊婦健診で行う基本内容で、全ての妊婦さんに必要であり、検査するかとの希望を伺うこと無く行っているものです。

出生前診断としての超音波検査
赤ちゃんに生まれつきの異常(主に臓器などの形や大きさ、動きで異常がわかるもの)があるか超音波画像で検査するもの(妊娠初期のNT; nuchal translucencyも含まれます)。これは出生前診断に該当します。原則的に妊婦さんから希望があったときに異常についての有無を検査するものです。人により考えは違い希望が異なることがあります。

超音波でわかる異常はある程度限られており、生まれてくるまで診断が確定できない(疑いにとどまる)こともあります。また、希望により特定の病気がないかをエコーで調べているとき、あるいは異常を見つけようとしていなくても、妊婦健診の基本的エコーをしているときに胎児に別の異常がたまたま発見されること(偶発的所見といいます)もあり得ることは知っておいてください。

実際の超音波検査、当科の方針
当科では妊婦健診のはじめの頃に、健診中の超音波検査について説明し当科の方針を説明する用紙を使って同意いただけるかお伺いしています。当科の方針とは、基本的な超音波検査は全員に行い、胎児異常については健診中にわかりやすいものを一通りチェックし、異常が疑われた時にはお伝えして詳しく調べます。最初からもっと詳しく時間をかけての超音波胎児スクリーニング検査をご希望の方は、別に予約していただき詳しくチェックします(別料金)、というものです。スクリーニング検査については後半に書きます。

生まれる前に赤ちゃんの病気がわかっていると、それに対する準備をして小児科医も立ち会っての分娩ができたり、出産直後に新生児の手術ができるように小児外科医が準備するなどして、赤ちゃんの生後の治療成績の向上など健康に役立つ意義がある病気は多くあります。

一方、3D(4D)超音波(立体像)が何かの役に立つかについては、一部の研究では親の赤ちゃんへの愛着が深まるなど一定の有用性が示されていますが、赤ちゃんの健康に役立つかというとそれは別です。一部の外表的な先天性疾患を胎児が持つ場合には、3D(4D)は肉眼的な見た目に近い画像で説明しやすく、妊婦さんにとっても状態が理解しやすいという利点があります。

しかし役立つのはそのくらいで、3D超音波には異常を「発見する」能力は低いことがわかっています。発見する能力は通常の健診時の2D超音波(断面像)の方が一般的に優れています。つまり通常の3Dエコーは検査というより親の楽しみ、満足という意味合いが強いものです。もちろん受診者(妊婦さん)、家族の満足という点は重要です。

日本は世界で一番妊婦さんのエコーの回数をやっている国といわれています。どの病院・医院の産科にもエコーの器械があり、妊婦健診の時に毎回エコーを行う病医院もたくさんあります。医学的・学問的には妊娠初期が過ぎてからの妊婦健診中は3回くらいのエコーを行えば十分であるとされています。ただしその3回は詳しくよく見る必要があり、異常が疑われた場合には引き続き繰り返しの検査が必要です。受診者(妊婦さん)、家族の満足という点は重要ですので当科ではなるべく多くの胎児画像を健診時にみてもらいたいと考えています。

しかし患者さんの増加に医師数は追いつかず、エコーの時間は限られてきます。現在は普段の健診時に3Dエコーは原則として行いませんが、毎回の健診時にエコーは行うようにしていますので、赤ちゃんの姿、時々みえる身体の各部分の画像を楽しみになさってください。現在エコー画像のデジタル出力は行えませんが、画面を写真や動画で撮っていただくことは構いません。プリントし、記録に使った後のエコー写真をお渡しできることもあります。

超音波胎児スクリーニングとは

超音波胎児スクリーニングとは、超音波検査装置で妊娠中の妊婦さんのお腹の中の胎児について検査をおこなって、胎児に生まれつきの病気などの異常がみられないかを一通りチェックするものです。有意義な検査ですが、病気についてわかる範囲は限られている、など受ける前に知っておいた方が良いことがあります。また、この検査は出生前診断となる検査の1つであることから、原則として希望する方が受ける検査です。ここでは超音波胎児スクリーニングとその関連する事項を説明します。

スクリーニングとは
スクリーニングとはよく「ふるいに掛ける」という表現で説明されます。

・たくさんの中からふるいに掛けて見つけ出す、ということですが、その使い方にも少なくとも二種類があります。

①ひとつの(いくつかの)検査項目についてほぼ全員を検査することでその中からあてはまる人を見つけ出す、ことと、②一人の人(胎児)についてたくさんの(予め決められた)項目のどれかがあてはまらないか見つけ出す、ことです。両方を兼ねる場合もあります。

超音波胎児スクリーニングは普通②の意味で使います。①は全員必須の半強制的な検査です。妊娠中の血液型や感染症、妊娠糖尿病の検査、新生児の先天代謝異常検査などが代表的です。

・多くの場合胎児スクリーニングと言っても、胎盤や臍帯、羊水量などもチェックすることが含まれています。妊娠の経過や胎児の状態に影響することが多いからです。

胎児異常とは
人は100人のうち3〜5人が何らかの異常を持って生まれてくると言われています。

・胎児異常とは胎児の段階で何らかの異常を持っていることをいいます。多くは産まれても引き続きその異常があるので新生児異常となります。ただし、異常とは生命に関わるような重篤なものからほとんど気にならない、生活に支障が無い程度の軽いものまでが含まれます。人が産まれてくるときに持っている、今までに知られている異常の種類は1500くらいあるとされています。その内で出生前に超音波検査でわかる異常は約30%程度です。産まれてみて初めてわかる異常や産まれた後でも直ぐにはわからない異常のほうが多いのです。

・一口に異常といっても、有るか無いかという異常の他に普通より大きい小さいというような異常もあり、その場合そもそもどこまでが正常でどこからが異常なのかという問題がありますが、基準は決まっているものとしてその問題については省略します。

・胎児異常の種類には様々なものがあります。しかし、出生前に胎児について検査ができる手段は限られています。胎児は母体の中の子宮の中にいて外界から直接触れることができないからです。アプローチの方法は限られており、採血も血圧測定も、心電図をとることも簡単にはできません。また妊娠週数にも依りますが一般にX線など放射線をあてる検査も胎児では積極的には行いません。

・超音波検査(組織に超音波を当てたときの反射や透過性を画像として表す)やMRI(強力な磁力の変化に対する組織内の反応を画像として表す)などの画像検査は胎児への有害性を心配することなく行えて、特に超音波検査は、胎児はもちろん母体への苦痛も少なく、何回も行うことができ、経済的でもあり、現在日常的に多くの妊婦さんが受けている検査です。

・このように現在胎児について得られる情報の多くは画像的な情報となります。超音波検査が得意とするのは大きさ・形・動きなどに表れる異常についてです。MRIも大きさ・形の上での異常は、母体のMRI検査の一部に胎児が写っているという形でわかります。特に中枢神経系(脳・脊髄)については成人でもよくMRIが行われますが、胎児でも比較的わかりやすく写ります。組織ごとに得られる信号の違いから臓器の区別もわかりやすいことがあります。ただしMRIでは動きの問題についてはよくわかりません。

・超音波検査でよくわからないのは、例えば脳の神経が正常に働いているのか、染色体は正常か、肝臓の機能は正常かなど画像としては表れにくい情報で、これらに異常があっても直接はわからず、結果として起こってくる画像上の何らかの変化があれば間接的に推測されるという程度です。

・その他に出生前に胎児の情報を得る検査として一般に可能なのは羊水や絨毛(胎盤のもとになる組織)から得られる胎児細胞を検査する方法で、胎児染色体検査が代表です。子宮などの組織を刺すなどして羊水や絨毛を採取するので羊水検査で0.3%位、絨毛検査で1%位の流産となる率があります。羊水染色体検査でわかるのは胎児の染色体異常だけと考えてよろしいです。

一部のDNA検査もDNAの調べるべき部位(病気に関係する部位)がわかっている場合は可能ですが、まだ多種類の病気についてのDNAの問題を一度に検査してしまう方法は行われていません。上のお子さんがDNA異常に関係する病気であった場合に、今度のお子さん(胎児)が同じ病気を持つか、などが対象です。何病と限定せず何か異常は無いかと網羅的に調べることはできません。母体の採血で胎児の異常を知ろうとする検査は現在のところほとんど胎児の染色体異常に関する検査で他の異常はわかりません。検査の種類により精度(正確さ)が異なりますが可能性を示しているだけで、母体採血では胎児の確定診断はできません。

・胎児異常には染色体異常の他に様々なものがあります。染色体は正常で、先天性心疾患がある、水頭症がある、腸閉鎖がある、腹水がある、口唇口蓋裂がある、骨の病気がある、貧血がある、などその他いろいろです。心臓病や口唇裂など数百人に1人程度の比較的頻度の高いものから、数千人に一人程度のもの、稀な頻度の低いものなら数万人に一人程度です。

超音波検査の特徴
超音波検査でわかる胎児異常とは

◯ 時期はいつがよいのか

・超音波検査は前にも書いたとおり、大きさ・形・動きをみるのに適しています。それらに表れやすい病気が見つかりやすいことになります。また、胎児が大きい方が身体が大きく臓器も大きいので臓器の詳細までわかりやすくなりますから、妊娠の後半の方が異常を見つけやすい、病気を診断しやすいことになります。ただし、妊娠後半では胎児の骨も硬く太くなってくるので超音波が骨に遮られてその後ろにある臓器が見えにくくなるという欠点もあります。例えば心臓などは脊椎と肋骨に囲まれているので、胎児の向きや方向によっては骨の陰になって超音波が通らずよく見えないということがあります。

・検査時期が遅い方が児が大きくなって内臓が見えやすくわかりやすいのですが、検査の結果によっては妊娠の継続をしないという選択肢も使えるようにという人には、妊娠20週位(18〜20週)の時期の超音波胎児スクリーニングを勧めます。結果に依らず赤ちゃんは産んで育てるという人には24〜26週位がよく見えなくて再検査になる確率が低いと思われます。妊娠後半になってから表れる異常(腸閉鎖、腹壁破裂、腹水など)も低率ですがあり得るので2回スクリーニングを行うご希望でしたら20週位と28〜30週の2回検査するのがより検出率を上げます。

◯ なにがわかるのか

・具体的なチェック項目とわかる可能性のある代表的な胎児異常を表に示します。胎児の位置や向き、姿勢、子宮内の状況により全ての項目が確認できるとは限りません。その時点で可能な範囲で行います。

・一般に超音波で出生前にわかる胎児異常では、その病気の中では重症であるほど発見されやすいという特徴があります。重症なほど形・大きさ・動きなど超音波検査でわかる異常の程度が大きいことが多いからです。最近はより軽症な小さな異常もわかるようになりつつありますが当然限界があります。

・スクリーニングで異常が疑われた場合や所見がはっきりせずに正常であると確認できない部位がある場合には、後日の予約をして再検査を行います。再検査はスクリーニングではなく異常が疑われた場合と同様なその部位の超音波検査として行います。当院で妊婦健診に通院中の方は次回の妊婦健診の時にその部位のみ再検査を行って確認することもあります。

◯ 異常がみつかったら

・胎児異常の疑いが強いという結果になった場合には、その時点でわかることを十分に説明し、その内容に応じて当院で経過をみるか、周産期センターなど胎児・新生児の診療を専門に行える施設にご紹介するなどのご相談をします。

出生前診断のひとつであること
検査は内容をよく理解した上で受検を希望される妊婦さんが受けるべきものです。

・最初の部分でも触れましたが、超音波胎児スクリーニングは出生前診断に該当します。産まれる前に調べたいのか、産まれた後に判明しても治療の成績が変わらないのだとしたら、産まれるまでの間心配が続くだけではないか、などの考えもあります。やはり早く知っておきたい、という考えもあります。

それに加え、産まれる前(胎児診断)より産まれた後(新生児診断)のほうが直接に児を診察できるので診断はよりはっきりする場合が多い、という超音波検査のもつ特徴も合わせて考えると、早くわかるが詳細までは正確にわからない可能性もある胎児診断(疑い)でも診断確定ができる新生児診断より受けたいか、となるので、「希望者が受けるもの」というのが勧められます。実際には疑い程度でも早くわかるなら出生前に知っておきたいという妊婦さんが多いようです。

・胎児に異常があることがはっきりしたなら(もちろんその種類や程度にも依りますが)妊娠継続はあきらめたい(それが可能な時期の場合)という方がいます。一方で自分が妊娠した赤ちゃんはすべて産んで受け入れたい、とする方も多くおられます。最近は「知らないでいる権利」という考え方もあります。

さらに疾患や検査によっては出生前に検査することが許される事柄かという倫理的な面もあります。知りたいか知りたくないか、検査するかしないか、倫理的な面も含めて、基本的には胎児の代理人である親が必要な情報を得たのちに決めることになります。

当科の超音波外来の受診方法
予約センターへご予約ください

・当院かかりつけでなくて、当科の超音波外来(月・金の午後)で超音波胎児スクリーニングを受けてみたい方は当院予約センター(047-351-3230、平日9:00〜17:00)にお電話いただき、超音波外来を予約できます。
・当科で妊婦健診を受けている方は受診時に担当した医師へ超音波胎児スクリーニングの希望をお伝えください。予約を調整します。
・超音波胎児スクリーニングは自費です。(何らかの胎児異常が疑われて超音波検査を受ける方は保険診療となることがあります)
・紹介状は無くても受診できますが、初診時に選定療養費3,300円(消費税込)が加算されます。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 産婦人科診療

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