1人の患者さんをみんなで支える~多職種連携の栄養管理~

こんにちは。栄養室です。7月のweb通信に引き続き、当センターの栄養業務を紹介させていただきます。

前回の記事でお伝えした通り、当センターは職種間の垣根が低く、『多職種が連携しやすい病院』です。そして、私たち管理栄養士は、病棟の栄養管理業務や医療チームを通じて多職種連携に参画しています。

病棟の栄養管理業務を通じた多職種連携

入院患者さんの栄養管理は病棟担当制ですので、積極的に病棟へ出向き、各職種と顔の見える関係を築くよう心がけています。栄養管理で困った場合には病棟へ行き、医師や担当看護師に声をかけ、その場で話し合いが始まるということも珍しいことではありません。
また、各病棟の多職種カンファレンスにも参加しています。今回は一例として、ICU病棟のカンファレンスを紹介します。

ICU病棟には主に、緊急入院となった重症患者さんと術後管理を要する患者さんがいます。短期間で一般病棟へ移動する患者さんがいる一方、中長期間ICU病棟での管理が必要となる患者さんもいます。
長期間在室となる患者さんは、ご本人が意思を伝えられない状態であったり、予後の予測が困難な病態であったり、方針決定が困難となる場合があります。そのような際は、多職種カンファレンスを行います。医師(主診療科、集中治療科、その他の科)、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカー、臨床工学技士、管理栄養士など、治療にかかわるすべての職種が集まり、『医学的適応』、『患者の意向』、『QOL(生活の質)』、『周囲の状況』という4つの項目で話し合います。各専門職からみた現在の状況と今後の予測を共有し、方針を決定していきます。栄養面では、現在の栄養状態や栄養管理上の問題点、今後どのようなことが予測されるかを管理栄養士から伝え、多職種全員で最適な栄養管理方針を決定します。

《ICU入院中の患者さんのカンファレンス》

医療チームを通じた多職種連携

管理栄養士が参加している医療チームは、「栄養サポートチーム」「糖尿病サポートチーム」「褥瘡対策チーム」「緩和ケアチーム」「慢性肺疾患ケアチーム」の5つがあります。今回は栄養サポートチーム(NST)緩和ケアチームを紹介します。

栄養サポートチーム(NST)は、『患者さんの栄養状態を多角的に評価し、望ましい栄養管理を提案・推進するための多職種チーム』です。栄養管理では栄養状態や補給栄養量の把握は不可欠ですが、それだけで十分とは言えません。病態や身体状況、薬剤、リハビリテーションなど様々な視点で栄養を考える必要があります。
当センターの栄養サポートチーム(NST)は、医師(脳神経外科・消化器内科)、看護師、管理栄養士、薬剤師、言語聴覚士の5職種で構成され、毎週木曜日にカンファレンス・回診を実施しています。

《栄養サポートチーム(NST)回診の様子です》

緩和ケアチームは、NSTと同様に医師(総合内科・内分泌糖尿病腎臓内科・救急集中治療科)、看護師、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカー・管理栄養士の6職種で構成され、毎週木曜日にカンファレンス・回診を実施しています。
『緩和ケア』は、『がんの痛みを軽減するための終末期医療』と解釈されることが多いですが、実際にはそれだけではありません。当センターでは、『すべての患者さんが辛いと感じるあらゆる症状を軽減するための医療』としています。つまり、対象者はがん患者さんだけでなく、すべての病気の患者さんです。介入時期は終末期だけでなく、治療開始からどんな時期でも必要なときは介入します。また、痛みだけでなく、睡眠不良・息苦しさ・吐き気・精神的苦痛など、辛いと感じるすべての症状に対して介入します。それらの症状は、食事摂取にも影響することがあります。症状を緩和するための薬剤調整や環境整備などを行うと同時に、管理栄養士は食事の調整を行い患者さんの不安や苦痛の軽減に協力しています。

管理栄養士からのメッセージ

【管理栄養士歴:15年目】
私が担当する内科病棟は、腎臓病や心不全など複数の疾患を有した高齢患者さんが多く、なかには入院中に身体活動レベルが低下し、退院後の支援体制が必要となる方もいます。そのような時、当センターの多職種スタッフは退院後の支援担当である往診医やケアマネージャーと共に退院前カンファレンスを行うことがあります。管理栄養士は生活環境を考慮したうえで、病態に適した食事の調整方法や経管栄養剤を提案し、退院後も安心した食生活が送れるように支援しています。
【管理栄養士歴:7年目】
小児科外来では、小児アレルギー専門医、小児アレルギーエデュケーター(看護師)、保育士、管理栄養士の4職種が協力し、食物アレルギー患児を対象としたおやつ作り教室「あおいくまキッチン」を年数回開催しています。管理栄養士は3大アレルギー食品(小麦・乳・卵)を完全除去したレシピを作成し、参加者と一緒に楽しく安心して食べられるおやつを作っています。また、アレルギー食品に代わる代替食品の紹介などを行い、患児の成長をサポートしています。
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