皆さんこんにちは。病棟に所属する看護師です。この度、西伊豆の安良里診療所にへき地支援に行かせていただいたのでご報告したいと思います。東京ベイ・浦安市川医療センターは「地域医療振興協会(JADECOM)」の直営施設です。当協会は、その名の通り「地域医療」の充実を目指し、力を注いでいる団体です。医療に困っている地域へ医師や看護師、コメディカルが応援に行き、地域の病院や診療所、保健医療福祉混合施設と交流し、限りある医療資源を生かしたいと考える中で私たちも地域医療を知る機会を得ています。
私は東京ベイ・浦安市川医療センターに転職したときから、せっかく地域医療振興協会にいるのだからいつかはへき地支援へ行き、「地域医療」をみてみたいと考えていました。自分自身の病院内での仕事もあり、なかなかタイミングが合いませんでしたが、この度西伊豆の安良里診療所に行かせていただく機会を得ることができました。
子どもから大人まで!診療所スタッフと患者さんのあたたかい関係
実は、私は今までナースとしてのキャリアの中で、中規模の急性期病院の病棟でしか働いたことがなく、地域はおろか外来で勤務したことすらありませんでした。私がまず驚いたのは、安良里診療所を訪れる患者さんの数と年齢の幅広さです。安良里診療所は、CTや内視鏡の施設もあり、血液検査も一通り院内で確認できるような設備が整っています。外来患者数は一日平均100人以上、多い時には150人あまりの患者さんが訪れることもあり、一般的に想像するようないわゆる「へき地の小さな診療所」とは違った雰囲気でとても多忙です。
患者さんの年齢層も子どもから大人まで、というよりは赤ちゃんから超高齢者まで!患者数が多く年齢層が幅広いということは、それぞれの患者さんが抱えている疾患や、訴えの一つ一つもさまざまということ。「なんとなく具合が悪いけれど、どう説明したらいいのかわからないの」という方も多く、病棟でしか働いたことの無い私は問診や観察のポイントがつかめず、当初はかなり苦戦しました。
診療所のスタッフの方々は、医師や看護師、薬剤師はもちろんですが、医療職ではないスタッフの方も、患者さんたちのことをとてもよく知っています。「今日は歩きがいつもより遅い」「いつもより息切れしている」「なんとなく元気がない」など、患者さんのわずかな変化を全員が共有しており、スタッフ全員で患者さんを診ているという感じがしました。
多職種連携が叫ばれるこの頃、私も東京ベイ・浦安市川医療センターで日々それを実感しながら働いていますが、この診療所もひとつのチームなのだということがよくわかりました。昔からみているからわかる、いつもみているからわかるという患者さんとスタッフのあたたかい関係性、そしてそれを共有するという医療者としてのチームワークが診療を支えていると感じました。
地域の中にいる、という実感 看護師としてできること
プライマリ・ケアという言葉をご存知でしょうか。総合的に診る医療、と日本語に訳されたりもしています。簡単に言うと、専門分野の細分化された敷居の高い大きな病院ではなく、普段から診てもらっていて、小さな健康上の問題にも相談に乗ってくれる医師や診療所のことを言います。
安良里診療所に訪れる患者さんは、定期的な受診をしながら普段は比較的お元気に過ごされている方から、本当に具合の悪い方まで様々です。前述したように受診患者数も多く多忙で、私は診療の流れをつかむだけでも一苦労でした。そんな中でも診療所のスタッフは、患者さん一人一人に暖かく親しく接しながら情報収集を行い、診療がスムーズにできるようにトリアージするのはもちろんのこと、患者さんの来院から帰宅、帰宅後の生活まで、その人の生活背景を考えながら調整をしていました。派遣されるまで、診療所の役割を主に外来機能とイメージし、看護師の役割を診療の補助とケアとイメージしていた私は、派遣当初外来診療だけを見てプライマリ・ケアだな、と浅はかにも感じていましたが、診療所の役割は実際にはもっともっと複雑で幅広いものでした。
「ずっと診療所に通っている患者さんがだんだん高齢になってきて独居が困難になった」、「家では何とか生活できるけど通院が困難」、「なるべく入院はしないで住み慣れた自宅で最期を迎えたい」、など、看護師は患者さんとその家族のニーズに合わせてケアや受診予定を組み、ケアマネージャーや施設との調整・連携を行うなど、患者さんが地域の中で生活することを支援するマネジメントの役割を担っていました。私は、「患者さんの病気だけを診るのではなく、家族や生活背景を含め総合的に診る」という診療の様子を見て、言葉で説明するのが少し難しいのですが、自分自身も「地域の中で看護師として働いているんだ」、という実感を得ることができました。
東京ベイ・浦安市川医療センターで働いているときも「地域の中にいる」ということに変わりはないのですが、今考えると恥ずかしながら実感は少なかったように思います。2025年の社会情勢を見据えて現在構築が進められている地域包括ケアシステムの一端を担うため、自分自身が看護師としてどのような役割を果たすのかを考えさせられる経験となりました。
今回安良里診療所へ支援に行ったことで、急性期病院でしか働いたことのなかった私は患者さんが急性期病院を退院した後、実際にどのように地域の中で生活しているのか、住み慣れた地域の中で患者さんが生活するためプライマリ・ケアがどのように機能しているのかを具体的にイメージできるようになりました。そして看護師は、診療所内での診療の補助や外来看護師としての役割だけではなく、医療と介護をつなぐ調整役でもあり、患者さんだけでなくその家族も守るために、幅広い知識とコミュニケーション能力、そして何よりも患者さんを全人的に看る力とニーズを調整する力が必要だということが改めて実感できました。
支援ナースがレポートする、西伊豆のおすすめスポット!
そして最後に、ちょっと余談なのですが(笑)、一か月滞在した西伊豆のおすすめスポットを皆さんにご紹介したいと思います。
西伊豆は駿河湾に面した、年間を通じて温暖で過ごしやすいところです。私が過ごしたのは2018年の1月で関東は寒波に見舞われ都心でも積雪があった時期でしたが、安良里は雪がぱらつく程度で積雪はなく、海風はありますが寒さで困ることはありませんでした。
●美味しいお魚!
安良里は漁港なので、近所の小さなスーパーにも新鮮なお魚が並んでいます。西伊豆全体をみると、美味しい魚料理を出すお店もたくさんあり、「一か月でどんなお魚でも捌けるようになるぞ!」と意気込んで支援に行きましたが、自分で捌かず、プロの方が捌いた美味しいお魚をおなかいっぱい食べる一か月でした。(笑)
●駿河湾に沈む夕日と富士山
私は富士山から遠く離れた西日本の出身なので、富士山を見るのが大好きです。静岡は言わずと知れた富士山のおひざ元ですが、西伊豆はとても美しい富士山の全貌を見ることができます。温泉に浸かりながら富士山を望めるところもあるようなので、次回訪れた際はぜひ行きたいと考えています。駿河湾に沈む夕日もとても美しく、滞在中私は暇さえあれば夕暮れ時に海を見に行っていました。
●心身の癒し…温泉!
西伊豆、というか、伊豆全体が温泉スポット!堂ヶ島温泉や土肥温泉のような大きな温泉地から、秘湯のような小さな温泉地までたくさんあり、温泉好きの方には絶好の土地だと思います。特に西伊豆は海が近いので、昼間は海水浴、夜は温泉…ととても楽しめると思います。今度は夏に訪れたいと思ったりもしているくらいです。
最後に、1カ月では慣れないことも多くご迷惑をおかけしましたが、診療所の方々にはとても温かく迎えていただき、感謝の気持ちでいっぱいです!
今度は違う施設へ支援に行った看護師の体験談も掲載したいと思いますのでお楽しみに!