皆さんこんにちは!脳神経外科病棟のナースです。
少しずつ季節も春らしくなってきましたね。皆さんはどんなことで季節を感じますか?私たち脳神経外科ナースは、緊急手術の件数が増え、入院患者さんが増えてくると「冬が来たなぁ」と感じます。脳卒中は、気温が下がり室内と屋外で気温差があることから血圧が変動しやすい冬に起こりやすく、また年末年始やクリスマスなどのイベントでお酒を飲んだり、みんなで騒いだりして転倒し頭を打った、という方も多く入院します。脳神経外科ナースを○年もやっている私の意見では、脳神経外科病棟にとって一番忙しいのは冬だと思います。
脳神経外科ナースの役割「日常生活の援助」って?
一般的に言われているナースの役割は「日常生活の援助」と「医師の診療の補助」ですが、医療の世界とは関係のない一般の方にとって想像がつきにくく、また「誰にでもできる」と勘違いされやすいのが「日常生活の援助」だと思います。私たち脳神経外科ナースにとってこの「日常生活の援助」はとても大きな意味を持つとともに、腕の見せ所でもあります。
例えば、頸動脈の手術後で首に傷のある患者さんがいるとします。体を動かすと傷が痛みますし、血圧が高くなると脳出血を起こす可能性もあります。血圧が上がりすぎないようにするためにはある程度の安静が必要ですが、かといって安静にばかりしていては筋肉やその他の身体機能も衰えてしまいます。傷やからだをきれいにしないと感染を起こす可能性があり、何より患者さん自身も爽快感を得ることができませんので清潔ケアの計画を立てる必要があります。元気な時には気づきにくいものですが、人間の血圧は日常生活の些細なことでも変動していますので、状態に見合った計画が必要です。
脳神経外科ナースは、その患者さんが「どんな手術をしたか」、「今日は手術後何日目か」、「起こり得る合併症は何か」、「合併症を起こさないためにはどんなことに気を付けるべきか」ということを考えながら、今日一日のケアをいつ?どこで?どのように?何に気を付けながら?という風に具体的に計画を立てます。医師からの指示や手術の種類によってある程度の基準はありますが、それを参考にしつつ、その日の患者さんの血圧や体温などの一般状態から検査のデータ等を加味してケアを組み立てています。
洗面やシャワーなどの日常生活のケアは、誰にでもできるようにも思えますが、急性期の患者さんの「疾患を理解しているか」「リスクを考えることができるか」ということが、ナースが日常生活のケアを行うことの意味だと私は思います。


患者さんの未来を見据える
脳神経外科に入院中の患者さんは、麻痺があり体を自由に動かせなかったり、言葉を発することがうまくできないなど日常生活に何らかの影響を与える障害を持つ方が多くいらっしゃいます。脳の障害によって一度失った機能を取り戻すには、リハビリテーションが重要です。つまり、脳神経外科の患者さんにとって、「リハビリを行う」ということは、患者さん自身の今後の人生にとってとても大事な意味を持つことになるため、急性期の状態が安定しないうちからリハビリテーションをはじめます。
リハビリテーションに関してはもちろん理学療法士等のセラピスト主導ですが、セラピストと連携を取りながら「日常生活」の中でどれくらい頑張ってもらうことがいいのかを一緒に考えています。人間の意識や体の動きは昼と夜でずいぶん様子が違いますので、24時間患者さんを看ている私たちナースは、昼と夜で違ったケアを提供するように計画を立てています。
患者さんにとっては毎日の日常生活そのものがリハビリテーションとなるため、辛いと感じることもたくさんあると思います。「看護師さんがやってくれたら楽なのに!」と言われることもあり、その患者さんの気持ちもわかるのですが、私たちナースは、患者さんの今日の頑張りが未来につながることを知っています。
「患者さんの未来を見据えて日常生活のケアを提供する」これが脳神経外科ナースの仕事です。
と、ここまで脳神経外科ナースが何を考えながら仕事をしているかについて書いてきましたが、ほんとうに何年やっていても脳神経外科看護は奥深いです。スピードと忍耐力の両方を持ち合わせていないと勤まらない大変な仕事ではありますが、患者さんと目標を共有しながらともに頑張る毎日は楽しくもあります。
そろそろ春になり、暖かくなって新人ナースをむかえる時期でもありますので、今年もにぎやかに頑張っていこうと思います!