~ある日突然、今日からあなたのうんちはおなかから出ますと言われたら…~
みなさんこんにちは、消化器外科ナースです。ストーマ(人工肛門)という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?人工肛門とは、直腸や大腸の一部を摘出手術した場合、正常な腸の一端を穴をあけた腹壁に結合した時の便の排出口と辞書には書いてあります。簡単に言うと、腸をおなかから出して本来ならばおしりから出る便がおなかに作った肛門から出てくるという事です。
ある日突然、「あなたは今日からもうおしりからは便ができません、おなかから出てきます」と言われたらかなりのショックを受け、これからどうしたらよいのだろうという不安で、かなりのストレスを感じることが想像できます。
そこで、今回は消化器外科ナースが力を入れて取り組んでいるストーマ(人工肛門)ケアについて紹介したいと思います。
~ストーマケアに自信がもてないのは患者さんだけではない~
消化器外科ナースにとって、ストーマケアは必須なスキルになります。また、わかりやすく指導をすることが求められるので、自分が指導する身になり、はじめはかなり不安になりました。そして、自信が持てないため目を背けてしまい、どうしてもストーマケアに興味を持つ事が出来ませんでした。患者さんにもそんな胸の中の思いが全部筒抜けになっているのでないかと思いながら過ごした日々を思い出します。
外科に5年勤めていますが、ストーマケアは難しい上に何が正解なのかどうしたら良いのかというのが経験で語れる部分もあるため、毎回大変だなと感じております。看護師もこんな想いを抱いて始めるストーマケアです。急に自分の肛門はおなかにありますと言われた患者さんはもっと抵抗があることでしょう。しかし、そんな患者さんの思いを横に、ストーマは今日も人工肛門として動き続けます。在院日数がどんどん短縮されている時代の流れから、2~3週間という短い間に患者さん本人が自信をもってケアができるように私たち消化器外科ナースは関わりを考えていかねばなりません。
手術前に決まるストーマの運命~消化器外科ナースの腕の見せ所~
ストーマ(人工肛門)ケアはすでに手術前から始まっています。まずはストーマを作る場所の設定が重要です。適切な場所に作られるかどうかが、今後の生活のクオリティーや経済面にも影響します。緊急手術の時はできる限り看護師が手術室や救急外来へ出向き、ストーマを作る位置を決めます。皮膚のしわやくぼみを観察し術後ストーマがはがれないような位置を見極めるほか、一番は本人がよく見ることができ、セルフケアができるところを選択します。術後は、患者さん自身が入院中の約2~3週間の間でストーマケアを習得しなければなりません。身体もまだ思うように動かないことや、ボディーイメージが変化することで受け入れられないことが多いです。
ここで消化器外科ナースの腕の見せ所がやってきます。まずはストーマを受容してもらう事、そしてポジティブなイメージをもってもらうために、必要な知識を提供しケアへの参加の一歩を踏み出してもらいます。家族の方にも早い段階で介入を行い、一緒にケアをしていくことが重要となってきます。
また、患者さんが自分のストーマに愛着を持ってセルフケアをしてもらうことも大切です。患者さんには、ストーマに「腸太郎」という名前を付けてもらい愛着をもってもらうように関わったり、有名人もストーマを増設したけどテレビで活躍していることを紹介したりと多方面からアプローチをしながら関わっています。


ストーマ受容への第一歩を支え、患者さんを見守り続けるために
患者さんが自分でセルフケアに興味を持ち始めると「看護師さん、やっとなんとか見ることができるようになってきたよ」「案外簡単だな、こんな感じでいいんだよね?なんとかやれそうだわ」「今日は色がピンクだしガスも出るしいい調子だよ」などと話される時期が来ます。ガラッと変わる生活に対し混乱したり、悲しい気持ちになったり、不安がたくさん押し寄せたりしている中でも、ストーマケアを通して、患者さんとケアを考えたり、今後の生活スタイルなどを相談できることがストーマの受容への大きな役割を果たしていると思っています。
日々の業務に追われる中で悩んだり落ち込んだりしてしまうこともありますが、患者さんのケアを通して看護師として、そして人として成長させてもらえているのだと感じる場面も多くあります。これからも、この人に担当してもらえてよかったと患者さんに思ってもらえるような、そばに寄り添うサポーターであり続けたいと思います。