透析療法に必須のバスキュラーアクセスって知っていますか?~透析勉強会の開催~

皆さんは血液透析についてどのくらいご存知ですか?名前を聞いただけ、インターネットやテレビで見た程度、実際透析医療に関わっている…いろいろな方がいらっしゃると思います。これまでの当センター透析室のブログ記事でもお伝えして来ましたが、血液透析は腎臓の働きが悪くなり、腎不全と呼ばれ腎臓の機能が元の状態に戻らなくなった方々に必要な治療方法です。

腎臓の働きって?

腎臓の働きは主に「尿をつくる」ことです。尿と一緒に体内の老廃物を排泄しますが、その他にも、
・水分や電解質(ナトリウム、カリウム、リンなど)のバランスを整える
・血圧を調整する
・骨を丈夫にする為、ビタミンDを体内で活用できる状態にする(活性化)
・赤血球をつくる為のホルモンの分泌
など、様々な働きをしています。

腎臓の働きが悪くなるとどうなるの?

腎臓の働きが悪くなると、むくみや血圧の上昇、食欲不振、貧血などの症状が現れ、さらに悪くなると呼吸困難や意識障害、心不全にまで至ることもあります。

血液透析ってどういうもの?

血液透析は、血液を身体の外に循環させ、人工腎臓と呼ばれる医療機器で血液中の老廃物と余分な水分を取り除き、乱れた電解質バランスを整え、血液をきれいにする治療法です。透析で血液を効率的にきれいにする為には、1分間に約150mL~300mLの血液流量が必要です。これは私たちが普段、採血などで注射する静脈血管の血液流量は1分間に約50mL程度ですから血液透析では、普通の静脈血管の血液流量の3倍以上の血液流量が必要になるわけです!

血液透析をする為に、大量の血液を身体の外へ取り出し、再び体内に戻す…この血液の出入り口のことをバスキュラーアクセスといいます。このバスキュラーアクセスが、透析をする上では必須のものであり、何通りかの種類があります。

日常の観察の注意点が分かる!?勉強会の開催

今回、バスキュラーアクセスの大切さを理解して頂く為に、透析患者さんの看護に24時間携わる病棟看護師へ向けて、透析室主催で勉強会を開催しましたので、その様子をお伝えしたいと思います。

2017年10月5日の業務終了後に約1時間の予定で、勉強会を企画しました。実は、2年ほど前に透析療法について知っていただこうと、「透析療法の基礎」についての勉強会を臨床工学技士の協力のもと開催したことがあります。その時のアンケートでバスキュラーアクセス管理についての勉強会を希望する声が圧倒的に多かったのです。そんなわけで、業務の合間にコツコツと資料を作成し、医師のチェック・修正を繰り返し、2年越しで今回の勉強会の開催に至りました(頑張りました!)。

会場入り口に人工透析で実際に使用している、「人工腎臓(ダイアライザー)の模型」や「透析穿刺針」、「穿刺練習キット」、「バスキュラーアクセスカテーテルの実物」の展示もしました。実際に見ていただくことで「こんなに透析の針って太いんだ」「ダイアライザーってストローがたくさん入っているっていうのは知ってたけど、こんなに細いの!?」「バスキュラーアクセスカテーテルって患者さんの体にこんなに長いものが入っていたんだ」などなど・・・。たくさんの驚き、発見、素直な感想をいただきました(やったね♪)。

また、透析穿刺針を実際に持っていただいた方の何名かは「こんな太い針が刺されるんだから、痛み止めのテープは忘れずに貼ってあげなきゃね」と、振り返られたようでした(ほんと、よろしくお願いいたします)。実物を見ることで、知っているようでも良く知らなかった透析療法について、少しでも身近に感じていただけたならと思います。

バスキュラーアクセスの種類について、それぞれの特徴、観察時の注意点など、透析室スタッフから、病棟看護師の皆様に「こんなところに注意して欲しい」「こんなことがあったら早く医師に診てもらって欲しい」なんていう、希望も込めて知識を共有しました。実際の業務時でも、何かあったときにすぐ見直せる資料を使い、スライドを見ながら説明させてもらいましたが……みなさん、しっかりメモを取ったり、うんうん頷いたりする姿も見えて、血液透析に対する関心が高いことがうかがえました。

シャントと呼ばれる動脈と静脈をつなぎ合わせた血管は、感染が少なく透析療法を始める際にはバスキュラーアクセスの中で第1選択とされることが多いものです。特徴は、静脈側血管へ動脈の血流が流れる音(シャント音)が聞こえ、この、シャント音の聞こえ方の変化で、血管が狭くなっていないか、血栓ができて血管が詰まりそうになっていないかの観察を行う必要があります。

実は・・・会場入り口にシャント管理ポケットガイドを置いてありました。透析室スタッフも全員が持っているもので、希望者にはお配りしていました。シャント音に関しては、音声を流して実際の音を聞いていただきました。

参加されたスタッフからは「実際の音が聞けてよかった、わかりやすかった」「正常、異常の音の聞き分けが必要だということを学んだ」「狭窄音を初めて聞いたので、次に活かせそう」といった感想もあれば、「実際音を聞いたら判断できないかも・・・」と不安を書いてくださった方もいらっしゃいました。毎日担当する患者さんが変わり、シャント音も継続して聞く事は難しいかもしれません。でも、「木枯らしの吹くようなピューピュー」「子犬が鳴くようなキュンキュン」といった高い音がした場合、「あれ?なにか違う気がする」といった、懸念でもかまいません。いつもと違うかも、と思った場合には遠慮なく透析室スタッフ又は腎臓内分泌糖尿病内科担当医師までご連絡ください。

また、日々、患者さんを看護するうえで、不安に思っていただろう「止血」に関しても勉強会の中で説明させていただきました。止血って、ただ押さえつけるだけじゃダメなんです!ちゃんと根拠があって、その根拠に基づいた方法で止血をしているのです。知らないで止血をして、シャントを閉塞させてしまった・・・。なんてことになったら、大変です。患者さんは「血が出ちゃった」と腕を見せながらナースステーションに来るかもしれません。あわてず、騒がず・・・。針穴がどこかを確認し、きれいなガーゼをあてて、にっこり笑いながら「大丈夫ですよ」といいながら止血をする!もう、そんな看護師さんがいたら、明日からの患者さんからの見る目が変わっちゃいます。

透析室での患者さんとのかかわりは、ほんの3~4時間の治療時間の中だけのことが多いので、療養生活の場を支える病棟看護師との協力・連携はとても重要なものです。今回の勉強会を通して、透析患者さんのバスキュラーアクセスの重要性と、観察のポイント、異常の有無の判断ポイント、出血などのトラブル時の対応方法などを看護師全体で理解し、患者さんの為に役立てて行きたいと思います。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部

メニュー