外来患者の傾向
近年、医療業界では在院日数短縮や生活習慣病患者に対する対策の強化が推進され、自己管理能力が十分に確立していない状態で退院する患者さんが増えるおそれがあります。その結果、外来には医療依存度が高い患者さんが増加し、個々の患者さんに応じた専門性の高い看護提供が必要となります。なかでも慢性閉塞性肺疾患や、間質性肺炎、肺がんなどで在宅酸素療法を実施している患者さんは医療依存度が高くなりがちです。そこで患者さんおよびその家族に対する呼吸法や栄養療法、ライフスタイルに合わせた安全な酸素療法の指導で、重症化を予防し、入院回数の減少や、QOLの維持につなげ、医療費削減にも貢献することが求められています。
患者とのかかわりが病気の予後を左右する?
患者さんの状態に応じた細やかな指導は、患者さんにどんな影響をおよぼすのでしょうか。2017年に改訂された「GOLD」分類では、「増悪歴」と「自覚症状」をもとに慢性閉塞性肺疾患(COPD:シーオーピーディー)の病気分類がされています。以前用いられていた呼吸機能検査の年齢予測比や1秒率は重症度・治療とは切り離されています。これは、息切れや呼吸苦などの「自覚症状」があると動きたくなくなり、そのことでさらに動けなくなり、体力筋力の低下が起こり、さらに症状が悪化するという負の連鎖をまねく元になるのは、患者さんの「自覚症状」だということを示唆しています。
そこで、患者さんが前向きに治療や療養行動の必要性を理解し、効果的な療養生活が送れるよう、多面的かつ専門的な援助が必要となるのです。
医療的、社会的背景からチーム医療が重要であることはわかってはいるものの、具体的に行動に移すには勇気や根回しが必要ですよね。しかし当センターの場合ひょんなことから一気に話が進みました。
チーム医療が実現するまで、それぞれの思い
東京ベイの各職種はこのような呼吸器疾患に対してチーム医療ができないか、うすうす考えつつ、いろいろな思いを抱いていました。理学療法士は呼吸リハビリのオーダーがでても、リハビリ室では、苦しくなるから動きたくないとリハビリの介入ができず困っていました。
看護師は在宅酸素療法を実施しているのに、混雑している外来患者に紛れて把握できず、帰りの酸素量が足りなくなってしまうことがあり、もっと手厚い看護ができないかと考えていました。担当医は患者さんに吸入薬を処方しても、正確に吸入できているのか、患者さんの手技を確認したいと思っていましたが、混雑している外来診療中にはできず困っていました。
それぞれ患者さんへの思いはあっても自分たちの職種だけでは解決できず、迷っているとき、偶然理学療法士、医師、看護師で雑談をする機会があり、それぞれの思いを知りました。そしてそれらが、職種を超えたチームでかかわることで問題解決につながり、ひいては患者さんのADL保持や病状進行を阻止できると確信しました。こうして盛り上がった勢いで、3か月ほどでチーム結成に至りました。
今年度の目標
チーム結成後何度もそれぞれの熱い思いを話し合いました。その中で感じたことは勉強不足。みんなやる気とビジョンは十分でしたが、結成したばかりのチームで、全員が呼吸器疾患に詳しいわけではありません。


自分たちが患者さんやその家族に指導できる十分な知識を身に付けることを目標に、疾患の勉強だけでなく多職種のスタッフがどんな援助をおこなっているかや地域の社会資源の活用方法なども学んでいます。
会議時間の一部を使用したリハビリテーションや栄養管理、病気や治療についてのミニ勉強会、当センターの医師や栄養士が講義を担当して地域の訪問リハビリテーションとの合同勉強会、近隣病院との交流会に参加するなど日々意欲的に活動しています。
今年度はチーム発足元年として、学習を重ね、来年度には在宅酸素療法を実施している患者さんを対象とした看護外来の開設や、吸入指導の運用確立などを目標に目下奮闘中です。