東京ベイ・透析ベテランナースが教える! 透析患者さんとのコミュニケーション術

今回は、透析患者さんとのコミュニケーションについて考えてみました。

日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」によると、2014年末現在、国内の透析人口は、32万448人といわれています。
このうち、原因疾患は糖尿病腎症が最も多く、透析患者全体の38.1%を占めています。

1.透析導入をした背景を知り、患者さんの気持ちを考えよう!

血液透析を行う患者さんは年々増加しており、透析導入へ至る経過も様々です。
慢性的に徐々に腎機能が悪化してきて、計画的にシャント作成や入院日を決めて透析導入された方もいらっしゃれば、急激に状態が悪化し緊急的に透析を開始することになる方もおられます。

なるべく透析導入となることを遅らせる為に、様々な努力をして透析導入に至った方は、ある程度心の整理ができている為、血液透析療法を継続することに対する抵抗は少ないですが、緊急に透析開始となった方はそうはいきません。
透析導入の可能性を示唆されていても、まだ先のことと思っていた方や、全く腎機能の悪化を指摘されていなかった方もいます。
血液透析という治療自体がどういうものか分からないまま透析開始となった方は、定期的に治療が必要で週に3回通院しなければならいこと、1日のうち4時間もの長い時間を治療の為に拘束されなければいけないこと、水分制限や塩分制限など食事や生活の改善が求められ、環境の変化に対する不安や戸惑いが強く、そのストレスも大きいものです。
仕事や家庭生活を送りながら治療を受けている方もいらっしゃいますが、透析治療を受けた後はとても疲れやすいため無理はできません。
血液透析中や透析後は、短時間で血液を浄化される為に不均衡(ふきんこう)症候群(しょうこうぐん)といわれる吐き気や頭痛などが起こることもあり、透析療法を受け入れるには患者さんそれぞれに様々な葛藤があります。
その葛藤やストレスを理解できていないと、透析患者さんの言動ひとつひとつを「ちょっと言葉がきついな」と思ってしまうかもしれません。

2.患者さんはベテラン揃い?

維持透析を受けられている透析患者さんは、年単位で長く通っている方が多く、血液透析に関してはベテラン揃いです。
病院内のことにも詳しくなっており、スタッフの動きもよく見て把握されている方が多いです。
中には自己管理に熱心でスタッフよりも詳しい方もおり、新しいスタッフだと患者さんから質問や指導を受ける側になることもあります。
そんなところから透析患者さんに対して、「ちょっと気難しいな」「言葉が厳しくて緊張するな」というようなイメージを持っているナースもいるかもしれません。
患者さんから厳しい言葉を頂いたとしても、落ち込んだり怒ったりするだけでは患者さんと良好な関係も築けませんし、仕事をしていく上でのモチベーションも下がってしまいますよね。
患者さんからちょっときつい言葉をいただいたら、こちらに非があるときは素直に謝罪します。
からかわれているとわかるときには、明るく対応し世間話をしながら少しでも患者さんの気持ちをほぐせるようなかかわりをすることで、その後の患者さんの反応も変わってきます。

3.コミュニケーションスキルを磨こう!透析ナースが考える患者さんとの向き合い方

私達透析ナースは、患者さんとの会話を円滑に進める為に、患者さんそれぞれのライフステージごとに真摯に向き合うことを心がけています。
苦痛の多い透析療養生活を、患者さんが少しでも快適に長く続けて頂く為には、その患者さんの個別性を理解して深く関わっていく必要があります。
患者さんにとって透析は生活の一部です。
したがって透析ナースは、患者さんの日常生活全般に対して指導的なかかわりを持つことが必須です。
日常会話の中に食事療法の注意点やコツなどを織り交ぜ、患者さんの療養指導を行うこともあり、患者さんとのコミュニケーションスキルの向上は必須の課題といえます。
逆に言えば、透析ナースとして患者さんと一生懸命向き合いながら働いていたら、コミュニケーションスキルは自然と磨かれてくる、といっても過言ではありません。

ではコミュニケーションのコツは?

基本的かつ簡単なことですが、
①まずは顔と名前をしっかり覚え、明るく挨拶をする。
②患者さんと会話しながら背景や趣味嗜好を徐々に知る。
これで日常会話はバッチリです。
後は、血液透析に対する知識を深めて患者さんの質問に答えられるようになれば、患者さんとのコミュニケーションもよりスムーズになり、透析に詳しい患者さんにも一目置かれる存在になれるかもしれません。

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