診療看護師から始まる「NegativeをPositiveへ!」 〜NPが解決する「採血できない、点滴が取れない」〜

東京ベイでは、「NegativeをPositiveへ!」をスローガンに、診療看護師(以下NP)が働いています。今年度のweb通信では、入院中の困った出来事に対して、私たちNPがそれぞれどのようなアプローチで対応しているのかをご紹介したいと思います。

今回は、採血できない、点滴が取れない、点滴がすぐに漏れてしまうといった血管に関連した入院中に起こるトラブルについてです。

「採血できない」そんなとき

入院中は通常、末梢静脈から看護師が採血しています。左右の手、時には足から、看護師の判断で安全に採血できる血管を選んで行ないます。でも、麻痺がある、透析用のシャントがある、点滴をしている、皮下出血しているなど、採血できる場所が限られてしまい、どんなに経験を積んだ看護師でも採血ができないことがあります。

そんな時には私たちNPの出番です。私たちNPが実践可能な特定行為には「直接動脈穿刺法による採血」があります。通常の末梢皮静脈による採血は困難でも、太さがあり血流量の豊富な動脈からであれば採血できます。動脈は体表より深い位置にありますが、解剖学的位置を学び、研修を受けた私たちならば安全に動脈血採血ができます。もちろん不必要な採血は行いません。適切な頻度、適切な内容の検査が行われるよう私達も考えます。

「点滴取れません」「点滴漏れました」そんなとき

採血同様、点滴も一般的には腕にある皮静脈から行います。しかし、様々な理由で穿刺できる部位が限られたり、薬液漏れのため何度も刺し直しをせざるを得ない場合があります。

こんな時も私たちNPの出番です。NPは看護師としては経験豊富なベテランばかりです。見て触れて安全に穿刺可能な部位を探して点滴をとります。それでも難しいときには、超音波診断装置を使います。超音波診断装置を使えば、体表からはわかりづらい血管の位置や走行を特定することができます。そして安全に穿刺できる部位を特定して超音波ガイド下に穿刺します。

しかし、どうしても点滴がとれない場合や長期間点滴を行う必要のある場合があります。そんな時には、末梢留置型中心静脈カテーテルを用います。米国疾病対策センター(CDC)ガイドラインでは輸液期間が6日を越えると見込まれるとき、ショートタイプの末梢静脈カテーテルではなく、ミッドラインカテーテルまたは末梢留置型中心静脈カテーテルを使用することが推奨されています。私たちNPはこの末梢留置型中心静脈カテーテルを挿入することも可能です。

私たちNPには手技を成功させるだけでなく、治療戦略も考慮した上で深く考えることが求められます。点滴や採血が難しい患者さんに何回も点滴を繰り返すことは、患者さんにとって負担も苦痛も大きいため、できる限り負担が少ない方法を考えます。患者さんの疾患・状態から、点滴治療の内容や期間がどのくらいになるのか、現在の計画が適切なのか評価して担当医と調整します。

病院で頻繁に行われる点滴や採血でも、しっかり考えて処置を行なわなければなりません。患者さんの治療期間の見通しや、点滴治療が継続できそうなのか見通しを立て、必要性の判断だけでなく、患者さんへのメリット・デメリットを個別にあげて、患者さんのベッドサイドで説明し、実践しています。

今回は採血・点滴にまつわるNPのアプローチを紹介しました。看護師ではできない手技を行うことが出来るだけではなく、疾患・状態から必要性を考えて最適な方法を判断することが出来るということが私達NPの最大の強みであり、私たちがやりがいを感じるポイントです。

今回の記事担当
診療看護師室 診療看護師 池田達弥

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部

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