診療看護師から始めるNegativeをPositiveへ! ~NP、”人生の最期”を考えます~

病院のブログなのにこんなテーマを取り上げるなんて疑問に思われるかもしれません。しかし、「生きる」ということを支える私達は、同時に「死」ということにも常に向き合っています。そこで、今回は「人生の最期」について考えてみたいと思います。

最期の決定

病院には予期せぬ病気や事故により入院される方がいます。私たち医療者は命を繋ぐため必死で治療を行います。場合によっては人工呼吸器や心臓をサポートする装置、点滴や栄養を入れるためのたくさんのチューブがつながります。ただどんなに最先端の医療を施しても、残念ながら治療が奏功しない方もいます。

たくさんの医療機器と点滴をつけた中で意識のない患者さんを前に、ご家族に対し私たちはこう質問することがあります。「もし心臓が止まりそうになったとき、どこまでの治療を希望されますか?」シンゾウマッサージ?キョウシンヤク?ホジョジュンカンソウチ??そんなこと急に聞かれてもわかりませんよね。昨日まで元気に生活していたのですから。しかし現実は厳しく、そのような状況の中で家族と医療者は方針を決めていかねばならないのです。

「ぴんぴんころり」は難しい!?

日本の超高齢化社会はすぐそこです。総務省統計局は昨年(2018年9月)、65歳以上の高齢者人口は推計3461万人、総人口に占める割合は27.3%と発表しました。人口、割合ともに過去最高であったとのことです。その割合は1950年には5%に満たなかったものが、1985年時点で10%、2005年時点で20%を越え、現在は27%まで達していますので、日本の高齢化がぐんぐん進んでいることがわかります。今後もその割合は増え続け、2036年には33.3%、2065年には38.4%に達し、国民のおよそ2.6人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されています。


高齢化の推移と将来推計
内閣府ホームページより(http://www.cao.go.jp)

高齢者は病気を抱えることが多いので、その人数が増えると、必然的に病院にかかる人数も増加します。そして高齢者は、単独ではなく複数の病気を持ち合わせていること、身体機能や予備能が低いこと、個人差が大きく年齢だけで一概に治療が見極められないこと、そこに家族や介護といった問題も絡み合い、問題が長期化・複雑化しやすくなりがちです。さらに、皆さまもご存じのように、入院がきっかけで認知機能低下や活力の低下を引き起こしてしまうこともあります。にも関わらず、高度化した医療は高齢者にも治療の選択肢を広げます。もしかしたら本人の意に反した形で治療が続けられてしまうかもしれません。「ぴんぴんころり」はもはや理想中の理想である気もします。

「人生の最期」=「生き方」

私達医療者は、患者さんの治療方針を決めるとき多職種で話し合いを行うことがあります。医学的妥当性に加え、患者さんの意向、社会的・経済的側面などを考慮し「何が最適な治療か」を考えます。時として医療者自身の死生観、職種ごとの立場や大切にしていることの違いにより、意見が大きくぶつかることも少なくありません。特に私たちNPは、診療と看護の両視点と両役割を担う立場ゆえ、独自のジレンマやストレスにさいなまれることもあります。

ただどんな状況でも一番大切にしていることは、患者さん自身が「何を望み、何をゴールとしているか」ということです。それは患者さんの生き方を尊重するということです。

人は必ず「死」を迎えます。

こんな時代だからこそ「人生の最期」を一度は考えてみることをお薦めします。「人生の最期」は「生き方」そのものです。生き方を決めるのは決して私たち医療者ではありません。自分の生き方を決めるのは自分自身なのですから!!

<今回の記事担当>

重冨 杏子/Kyoko Shigetomi
診療看護師 6年目 所属 心臓血管外科

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