診療看護師研修プログラム1年目ローテーション中の池田達弥です。今回は救急科研修の1日をお伝えしたいと思います。診療看護師の制度が確立されてから、医師だけではなく我々看護師も救急外来で診療や、処置を行う機会を得ることができました。実際、どのような業務を行い、どのようなことに気をつけているのかお届けしていきます。
【研修スタート】
救急科スタッフ医師の監督のもと、問診・身体診察を行います。患者さんの問題点を明確にし、それを医師・看護師と共有します。どんな検査が必要かどんな治療が最適なのかを根拠を持って説明するために、的確な問診とフィジカルアセスメント能力が求められます。
診断がつかない場合もある…
救急外来だけでは診断が確定できないことがあります。そんな時でも患者さんの主訴や身体所見から緊急性・重症度の高い危険な疾患を想定し、どうすれば患者さんが安心して自宅で経過を見ることができるのかを考え、必要な検査や治療方針を考えます。救急外来での一時的な対応で完結させず、必要があればかかりつけの病院やクリニックへの診療情報提供や、当センターの外来で経過観察を依頼し、継続的な治療が受けられるようにします。帰宅する患者さんにも帰宅指示書をお渡しして説明、どのような経過観察が必要で、どのような時に再受診が必要なのか説明し、安心して帰宅できるようにします。
救急科を受診する患者さんに私たちは何をしているか!!
たとえば交通事故で来院された患者さんには、エコーも用いて腹腔内に大出血がないか、生命に直結する問題がないかを素早く診断します。また時には、手を刃物で切ったり、転んで傷を作って受診される方もいます。そのような方の傷の処置を私たち診療看護師が行うこともあります。傷のその後のフォローについては、近医へ診療情報提供書を作成、時に当センターの救急外来で継続して診療を行います。救急外来は外部の病院や、他科の先生たちと綿密に連携をとる必要がある科だと感じることが多く、いい連携を図るためには何が必要なのかを日々考えています。
看護師経験があるからできること
診療看護師は初期研修医と同じようなポジションで研修し、診察を行なっていますが、同時に看護師として行ってきたトリアージや採血・静脈路確保など診療の補助業務も行います。重症患者の対応では他スタッフと役割を分担し、初期診療に加わるだけでなく、患者さんの御家族に状況や、今後の見通し、必要な処置や検査を説明します。
また、受診後帰宅する患者さんには、自宅でどう様子を見るべきか、どんな時には医療機関への再受診が必要かを具体的に説明しています。救急外来の短い関わりの中でも患者さんの生活の情報を取集し、患者さんや家族が少しでも安心して帰宅できるよう丁寧な説明と理解の確認を意識しています。小児から高齢者まで幅広い患者さんの多様な主訴に対応することが求められ、患者さんとその御家族への対応も重要でありとても勉強になります。
難しさ
救急科スタッフ医師の監督のもと患者さんの検査や治療方針を決定していきますが、医師の指示の代行ではなく「どうするべきか?」と自律性を問われます。そこで、過去の経験から根拠の薄い考えを述べると「こういう時にはこう考えることが大切だよ」とその場で自分に足りない視点を指導してもらいます。診療看護師として方針を決定していく責任の重さと、その思考過程の重要さを日々痛感しました。同時にそこにやりがいも感じました。
勤務終了
振り返りシートを用いて救急科スタッフと1日の症例の振り返りを行い、課題の確認や次回へ繋げるためのアドバイスなど、その日の症例に基づいた具体的な指導を受けることができます。忙しい勤務の中でも業務をこなすことだけにはならず、必ず症例から学びがあるとてもやりがいのある環境です。
【自分が思う救急外来のNPのあり方】
時間が勝負の救急外来で、医師-看護師どちらの役割もできる診療看護師は貴重な存在です。指示だけでなく準備から実践まで行い、患者さんへの説明や家族対応をボーダーレスに行うことで、よりスムースな診療ができるのではないかと考えます。
今回の記事担当
池田 達弥/Tatsuya Ikeda

【趣味】犬の散歩
【診療看護師を目指したきっかけ】
救急外来看護師をしていて、トリアージやドクターカーで自分が問診・身体診察をして、治療の優先順位や必要なケアを考えることにやりがいを感じていました。その先の判断を自分ができたらもっとやりがいがあるかもと思い診療看護師を目指しました。