みなさんこんにちは。
まだまだ暑い日が続きますね。近年は、熱中症対策として塩分タブレットや塩分入りをアピールした飲料を見かけることが増えました。その一方で、調味料はもちろん、総菜やお弁当でも減塩をアピールしている商品も多く見かけます。
塩分の摂りすぎは良くないというイメージはあると思いますが、自分が1日当たりどのくらいの塩分を摂っているのか、これから食べる食事にどのくらい含まれているのか気にしている人は少ないのではないでしょうか。
食事の塩分って?
食事の塩分とは、私たちが1日に摂取する食べ物、飲み物に含まれている食塩相当量のことを指します。皆さんの身の回りにある食品や飲料、調味料にある栄養成分表示を見てみてください。そこには食塩相当量が記載されているはずです。その食塩相当量を1日分合計したものが1日当たりの食塩摂取量になります。
(食品表示法で食塩相当量の記載が義務化されていますが、現在は旧表示のものがあり、食塩相当量の代わりにナトリウムが表示されています。食塩は塩化ナトリウムなので、食塩相当量を知るためには、ナトリウム(mg)×2.54÷1,000=食塩相当量(g)と計算する必要があります。)
この食塩に含まれるナトリウムは、必須ミネラルの一つで、体内の水分調整に重要な役割を果たしています。食塩の取りすぎが血圧の上昇と関連があることや、減塩によって血圧が下がる効果があることが、多くの研究で明らかになっています。また、血圧が下がる効果によって、心筋梗塞や脳卒中といった脳心血管病イベントの発症抑制が期待されています。
食塩の摂取量はどのくらいがいい?
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)では、1日当たりの食塩相当量の摂取目標を、18歳以上男性では8.0g未満、18歳以上女性では7.0g未満と設定されています。実は、この数字は食塩摂取の多い日本人の食生活の現状を考慮し、2020年に達成可能な目標として設定されているものです。
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは高血圧の予防のために血圧が正常な人でも6.0g未満、WHO(世界保健期間)ではすべての成人に対して5.0g未満とより少ない食塩摂取量が推奨されています。しかし、日本成人の1日あたりの食塩摂取量は平均9.9g(男性10.8g、女性9.1g)と目標より2.0g程度多く摂取している状況です(2017年の国民健康・栄養調査結果より)。
塩分をさげて健康被害は出ないのか?
南米に住むヤノマミ族の話を紹介します。ヤマノミ族は、狩猟と焼畑農業中心の生活で、食塩摂取量が0.5g/日と現代人としては極端に少ないですが、そういった状況に適応して、尿や汗からのナトリウムの喪失を減らすことで、健康上の問題はありません。また、逆に高血圧や年齢に伴う血圧上昇は見られませんでした。
ちなみに、今日の私の昼食の食塩相当量は約1g{豆腐サラダ(0.3g)、シリアル(0.2g)、ゆで卵(0.5g)、バナナ(0g)}、隣のH先生の昼食の食塩相当量は約8g{コンビニ弁当(3g)、カップ麺(5.1g)}です。
今日の私の昼食の
食塩相当量は約1g
豆腐サラダ(0.3g)
シリアル(0.2g)
ゆで卵(0.5g)
バナナ(0g)
H先生の昼食の
食塩相当量は約8g
コンビニ弁当(3g)
カップ麺(5.1g)
NPが実践する減塩
当センターの病院食の1日あたりの食塩について、食塩制限が必要な糖尿病や心疾患、腎不全等のある方には 6.0g未満に、それ以外の方では8.0g未満に調整されています。しかし、入院患者さんの中には
食べられない。
食べちゃった。
食べている。
など、病院食に馴染めない方もいらっしゃいます。また、
(コンビニ商品は食塩過多です!)
それを奪うのか!
と、自宅で減塩を続けることが簡単ではない方もたくさんいらっしゃいます。そこで、私たちは、患者さんの病態や生活を考慮して、それぞれの減塩の目的はなんなのか、塩分制限の目的、目標、現在の食生活をどう見直していくのかを具体的に患者さん本人と家族と話し合い、栄養士や看護師と協働して、患者さんの生活に減塩が取り入れられるよう支援しています。
また、減塩を永く続けるためには患者さん自身が興味を持って取り組むことが欠かせません。減塩の効果として、血圧や体重、浮腫の程度など、目に見える形で現れたことを患者さんと共有し、減塩の効果を実感して継続的に減塩に取り組めるよう支援しています。そして、食塩摂取量に見合った利尿薬の調整、降圧薬の調整を提案するなど、診療看護師としての視点も活用します。
など、減塩に慣れた言葉や、減塩に成功して、体重や浮腫の改善、血圧の改善が実感できると、私たちもやりがいを感じます。
しかし、一律に減塩を行うと、患者さんの中には減塩食によって食欲が落ち、食べられないことでフレイルの状態が進行してしまうことがあります。そんな方には、味の変化が楽しめるよう栄養士と相談して入院食の変更を行ったり、家庭での減塩目標を実現可能な範囲で設定したりと、臨機応変に対応しています。
減塩は美味しくない・食事が楽しめないといったイメージを持つ方も多いと思いますが、まずは、自分の食事の食塩相当量を意識してみてください。栄養成分表示を見ると、自分の食塩摂取が多いことに気づくと思います。特に、看護師の方は減塩に取り組んでみてください。自分が減塩を意識して実践してみることで、そこで得た知識や工夫を患者さんへの看護実践に活かすことができ、興味を持って取り組めるはずです。
参考・引用
- 高血圧診療ガイドライン2019
- 日本人の食事摂取基準(2015年版)
- 平成29年国民健康・栄養調査
- 急性・慢性心不全治療ガイドライン(2017年改訂版)
今回の記事担当. .
腎臓・内分泌・糖尿病内科 診療看護師 池田 達弥