脳神経外科治療の最前線(血管内治療)~より良い回復につなげるために

前回5月の連載では当センターの脳卒中治療に関して大枠をご紹介させていただきました。
今回はより具体的に当センターで行っている脳卒中に対する最新の治療である血管内治療をご紹介させていただきます。
脳に栄養と酸素を隅々までとどけるのが脳血管の役割です。
この血管に”つまり”が生じて脳の一部が壊死してしまうのが脳梗塞です。
より太い血管でつまりが生じるほど脳梗塞は重症化してしまいます。
この血管のつまりをいかに解消するかが脳梗塞治療の肝となります。

脳梗塞超急性期における血栓溶解療法の次の一手

現在脳梗塞の治療法として第一選択となっているのは、2005年から国内での使用を認可されたt-PAという血栓を強力に溶かす薬剤を点滴投与する方法:血栓溶解療法です。
t-PAはそれまで脳梗塞治療で使用されてきた薬剤と比較して血栓を溶かす効果が格段に優れた薬剤ですが、脳梗塞の発症から4時間30分以内で投与を開始することが条件です。
その時間を超えてしまうとt-PAの副作用として脳出血の合併の危険性が高くなってしまい、症状がより重症化してしまう恐れがあるからです。
また太い血管におけるつまりは、大きな血栓が原因となることが多いためt-PAでも溶解できないことが多々あります。
4時間30分を過ぎて病院に運ばれてきた患者さんや、t-PAを使用しても血栓が溶けない患者さんを救う次の一手、それが脳血管内治療による血栓除去(血栓回収療法)です。
これは発症からおおむね8時間以内で、CTあるいはMRI検査で脳梗塞の所見がまだ比較的軽度な状態であれば施行が可能です。
脳外科領域における血管内治療ではどのような器具を用いているのか見ていきましょう。

脳神経外科領域における血管内治療
血栓を吸引する掃除機!? 吸引ポンプによる血栓除去

2011年に認可されたPenumbra(ペナンブラ)は血栓を吸引する器具です。
吸引ポンプを用いてまさに掃除機のように血栓を直接吸引してカテーテル内に回収します。
直接血栓を一塊として抜去することで短時間に再開通が得られ、血管の再開通率は80-90%と報告されています。

 

当センターで治療した67歳女性の脳血管造影写真です。
左側の画像で左中大脳動脈の完全閉塞を示しています。
ペナンブラを脳血管内へ挿入し、血栓を吸引除去することによって完全再開通が得られました。

血栓をからめとる金属メッシュ

2013年12月にソリティア(Solitaire FR)、2014年3月にトレボ(Trevo Provue)というステント(金属の網目状の筒)型の血栓回収器具が認可されました。
ソリティアは、メッシュ状のシートを丸めた形状の血栓回収器具です。
トレボ(Trevo Provue)はらせん状のチューブ構造の血栓回収器具です。
共にステントが血栓内で広がることで、血栓そのものを絡み取り、ステントごと血栓を引き抜くことで血流を再開させます。
血栓回収の効果は高く、再開通率は90%程度で安全性も高いことが報告されています。
どの器具を使用するのが最適なのかは画像検査により脳梗塞や閉塞血管の部位に左右されます。

ステント型血栓回収器具 トレボ(Trevo Provue)

当センターで治療が可能です
当センターでの脳梗塞診療体制 ~患者さんの治したい気持ちに応えるために

脳梗塞の診療でもっとも重要なのは発症からの時間です。
日々の生活の中で突然呂律が回らなくなる、左右どちらかの手足に力が入らなくなる、言葉が出なくなるなど、おかしいなと思ったらとにかくすぐに病院を受診してください。
万が一それが脳梗塞を原因とする症状であっても後遺症を最小限に抑えることができるかもしれません。
東京ベイ脳神経外科では救急集中治療科・救急外来部門との連携により、脳梗塞の患者さんをいち早く診断し速やかに治療が開始できる体制が整っています。
また脳神経外科外来では脳卒中治療の経験豊富なドクターが懇切丁寧に対応しておりますので、不安がある患者さんは是非お気軽に受診してください。
我々は患者さんの治したい気持ちに応えます。

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 脳神経外科

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