MICS CABG(低侵襲冠動脈バイパス術)

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MICS CABG(低侵襲冠動脈バイパス術:Minimally invasive coronary artery bypass grafting)とは

現在、多くの病院で行われている冠動脈バイパス術(CABG)は、胸の真ん中にある胸骨という骨を縦に切開して(胸骨正中切開)手術を行っています。この胸骨正中切開によるアプローチではすべての手技が可能であり標準的に行われているとても優れたアプローチです。
しかしながらいくつかの欠点もあります。特に術後感染症である胸骨骨髄炎(いわゆる縦隔洞炎)の発生です。冠動脈バイパス術を必要とする患者さんの多くは糖尿病を患っています。糖尿病は手術後の傷の治りを妨げ、更には感染症を惹起します。特に胸骨に感染がおこるとこの胸骨骨髄炎(縦隔洞炎)を発症し長期入院が必要となります。また胸骨正中切開を行うことにより退院後しばらくの間は車の運転が制約されたり、社会生活や職場への復帰に日数を要します。
それらの欠点を解決するものが、患者さんの体に優しい冠動脈バイパス手術(低侵襲冠動脈バイパス術:MICS CABG)なのです。

MICS CABG(低侵襲冠動脈バイパス術)は胸骨を切らず、左の胸を小さく切開して心臓に到達し冠動脈へのバイパスを行う方法です。この方法は従来MID CABと呼ばれて左内胸動脈と前下行枝を吻合する手術に限られていました。しかし当院で行っているMICS CABGでは長期予後に優れた両側内胸動脈や右胃大網動脈、更には橈骨動脈などを用いて、従来行われているCABGと同様に冠動脈へのバイパスを行うことができます。

MICS CABGの利点とは

小さな傷で手術を行うので、手術を進められた患者様が持つ手術に対する恐怖心が少ないことがあげられます。また従来は胸の真ん中にある胸骨を大きく縦に切開して手術を行っていましたが、MICS CABGでは胸骨は切りません。そのため手術後の回復が早く、退院までの日数も約5日~7日と短くなります。また退院後は早期の仕事への復帰や車の運転などが可能です。先に述べたように糖尿病が酷くても縦隔洞炎にはなりません。更に輸血を必要としないことが多く、弁膜症に行うMICS(低侵襲心臓手術)と同様の利点があります。

MICS CABGの方法

MICS CABGは左の胸を約8cm切開して肋骨の間からすべての手術を行います。手術には特殊な超音波メスを用いて両側内胸動脈や右胃大網動脈、更には橈骨動脈を採取します。これらバイパスグラフトを用いて冠動脈の血流を再建します。
MICS CABGでは人工心肺は基本的に使いません。心臓が動いたまま、いわゆるオフポンプで行います。また最近ではMICS CABGであっても上行大動脈を触らずに冠動脈へのバイパス手術を行っており、手術の操作による脳梗塞を予防することが可能です。
もちろんMICS CABGはその質が一番大切です。当院では両側内胸動脈を用いたMICS CABGを数多く手掛け、国内外で手術指導も行っている菊地医師が手術を行います。またその他の動脈グラフト(橈骨動脈や右胃大網動脈)、更には近年話題になっているnon-touch SVG(下肢の静脈を直接触らずに採取することで長期的に良好な結果が期待できる方法)を積極的に使用しております。
このように当院で行うMICS CABGは低侵襲でありながら、これまでの冠動脈バイパス術と同様に両側内胸動脈を用い同等の効果が期待できる極めて優れた方法なのです。

MICS CABGの実際

ハイブリッド治療

もちろん冠動脈バイパス術の目的で手術を予定する患者様でも、冠動脈の狭窄具合によってはカテーテル治療(ステント治療)が優れた場合も数多くあります。具体的には、“この冠動脈はバイパス手術が適しているけど、こちらの冠動脈はPCIが良い適応だ”という病状です。このようなことは実際の医療現場ではよくあります。これまでは冠動脈ごとの治療方針ではなくて患者様ごとの治療方針の決定が行われておりました。“この患者様はCABGで”または、“この患者様はPCIで”という患者様ごとの治療方針の決定を行うことが多いようでした。東京ベイのハートチームでは、循環器内科医と心臓血管外科医が常に話し合って、患者様のそれぞれの冠動脈に最適な治療法を選択しています。患者様に対してだけでなく、患者様の冠動脈1本1本に対して、どの治療が最適かを考えて、バイパス手術とPCIを組み合わせて、更に低侵襲で長期予後の良い治療を行っております。いいとこ取りの治療、これがハイブリッド治療です!小さな傷で体への負担が少ないMICS CABGだからこその治療法です。もちろんハイブリッド治療においても両側内胸動脈を用いたMICS CABGを行うことができます。
MICS CABGとPCIを組み合わせて、更に低侵襲で長期予後を改善するハイブリッド治療は優れた治療方法です。東京ベイのハートチームだからこそその本領を発揮できるのです。

手術と術後の流れ

手術室では専門の麻酔科医が常駐し麻酔を行います。MICS CABGでは麻酔科医との連携が極めて重要です。阿吽の呼吸ではありますが、きちんと声を出しお互いに確認を行い手術を進めます。手術は人工心肺を使わないオフポンプで行います。最後に疼痛管理もしっかりと行い手術を終了します。
手術終了後は集中治療室に入ります。大きな問題がなければ、手術翌日に病棟へ戻りリハビリを開始します。術前の状態や術後経過によって異なりますが、通常では手術後約5日から7日で退院となり、術後早期から車の運転や社会復帰が可能となります。

東京ベイ ハートチームにお任せください

当院はMICS CABGの手術指導を行っている数少ない病院です。日本国内だけでなく海外の病院にも手術指導を行っております。
MICS CABGのパイオニアとして皆様に喜んでいただけることをチーム一同心より願っております。
ご安心してお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
(記事監修:菊地慶太)

当センターハートチームによる心臓病診療のご紹介

心臓病の診断から治療

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで心臓の筋肉への血液の供給が不足し胸痛などの症状をきたす疾患です。このような疾患の治療法のひとつとして、冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)があります。

狭心症・心筋梗塞

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで心臓の筋肉への血液の供給が不足し胸痛などの症状をきたす疾患です。このような疾患の治療法のひとつとして、冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)があります。

心エコー図

心エコー図検査とは超音波を利用することで心臓の形態や機能を評価する画像診断法です。当センターの心エコー図検査室は、経胸壁心エコー図検査をはじめ各種心エコー図検査を熟知した複数の専門医師および専門技師が繰り返し検査を評価するため常に質の高い心エコー図検査を提供することができます。

TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)

心臓の出口である大動脈弁が硬くなって、出口が狭くなる病気、それは大動脈弁狭窄症です。重症の大動脈弁狭窄症は命にかかわる病気であり、最も確実な治療は人工弁に置換する手術(大動脈弁置換術)です。TAVI(タビ)は、心臓以外の病気を抱えていたり、体力が低下していて手術に耐えられないような大動脈弁狭窄症の患者さんに対する最新治療です。

低侵襲心臓手術(MICS、ミックス手術)

心臓血管外科では、胸骨を切らない低侵襲心臓手術(MICS、ミックス)を積極的に行います。僧帽弁形成術・置換術、三尖弁形成術、心房中隔欠損閉鎖術、心房細動などの手術(メイズ手術)は、骨を切らない・折らない・開かない完全内視鏡下手術を行っています。大動脈弁の手術は、直視下の右小開胸アプローチや胸骨を半分だけ切る胸骨部分切開で行っています。

大動脈弁手術(大動脈弁形成術・置換術)

大動脈弁に重度の狭窄や逆流が生じると、薬での治療が困難になってきます。そもそも狭窄や逆流そのものは薬では改善しません。そのような場合は手術あるいはカテーテルの治療が必要になります。大動脈弁の手術には、大動脈弁置換術と大動脈弁形成術があります。

経皮的末梢動脈形成術

内服治療で改善が見込めない場合や重症な状態であるときなど、多くの病変が適応となっ…

経皮的腎動脈形成術

腎動脈の狭窄を解除する治療法は、現在では侵襲の少ないカテーテルによる風船治療やス…

心筋シンチグラフィー

心筋シンチグラフィーは、心筋に集まる特殊薬(放射性医薬品)を注射して心臓に血液が…

心電図

心電図検査は、心臓の電気的な活動の様子を記録することで、心疾患の診断と治療に役立…

心臓MRI

MRI(磁気共鳴画像診断法:Magnetic Resonance Imaging…

心臓CT

心臓CTとは、造影剤を使用して冠動脈やその他の心臓や血管の形態を評価する検査のこ…

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近くても、遠くても、心臓血管治療が必要な方をいつでも診療いたします

私たちのハートセンターでは救急科と連携して、心臓救急治療に迅速に対応できる体制を24時間365日完備しております。命にかかわる病気である心筋梗塞、大動脈瘤破裂や大動脈解離などの急性大動脈疾患にたいして、早期治療により助かる患者さんを確実に助ける、それが我々の重要な使命です。緊急時搬送手段は様々です。当ハートセンターでは、近くても遠くても、救急車からドクターヘリまで受け入れ実績があります。

東京ベイから全国へ最先端医療の情報発信をして行きます

私たちハートチームが第一に考えているのは、目の前の患者さんと向き合い、心臓や血管の病気からお守りしたいということです。そのために、地域の医療を大切にするとともに、遠方からの期待にも応えます。これまでも、そしてこれからもドクターカーからドクターヘリまで期待に応え、市民公開講座やミニ循などで、真摯に活動して参ります。
それと同時に、私たちハートセンターが現実にとどまること無く前進するために、臨床成果をアカデミックな立場で継続し、価値ある情報を積極的に国内外に発信します。私たちハートセンターは、心臓血管治療における国内外の有名施設で十分な研鑚を積み、あるいは指導的立場であった医師やコメディカルたちが集まり、ハートチームを形成しています。それぞれのメンバーが国内外の様々な場でチームとして情報発信します。さらに、与えられた場だけでなく、自ら学ぶ場を作り発展させることで、世界の医療に貢献したいと考えています。

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