ここが命の最後の砦〜生命維持管理装置に込める臨床工学技士のプロフェッショナリズム〜

現代の医学や科学技術の発展は日進月歩の勢いです。そのような中で医療者は、患者さんに安全で質の高い医療を提供する責務があります。特に医療機器の進歩は目覚ましく、私たち臨床工学技士は、その名の通り工学分野でもある医療機器が常に適切な状態で使用されるよう管理しなければなりません。

医療機器と言っても様々なものがありますが、その中でも患者さんの命に直結する生命維持管理装置(※)は特に重要です。これらの装置が使用中にトラブルなく、患者さんにとって常に安全で、適切な状態であるかを管理しています。

※)法律で「生命維持管理装置」とは人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置をいう。
生命維持管理装置の例

  • 呼吸:人工呼吸器、ECMO
  • 循環:ECMO、PCPS、IMPELLA、IABP
  • 代謝:人工透析、体温管理

これらの生命維持管理装置は患者さんの状態、装置の種類にもよりますが、数日から数週間使用する場合もあります。この間、それぞれの患者さんに合わせた適切な設定で、安全に装置が働いているかを管理していきます。一人の患者さんの装置を管理する私たち臨床工学技士は複数いますが、シフトで担当が変わっても連続して同じ視線で管理しなければなりません。

このため医療機器ごとに、患者さんの生体情報、管理に必要項目を経時的にモニタリングして医師や看護師も含めて多職種で情報共有を行います。特に私たちは臨床工学技士という立場上、装置に関する項目のチェックは入念に行います。

例えば人工呼吸器はいろいろな機種があり、患者さんの状態によって機種を使い分けたり、モードを変えたりしています。機種が多く、日数が長い人工呼吸器の使用中の点検は、共通のタブレットを使用して呼吸器の種類別に点検項目を入力して点検しています。技術の進歩により機械的に呼吸のサポートをする能力が飛躍的に向上しています。各呼吸器の特徴を詳細まで熟知し、一人一人の患者さんに適切に使用できているかを管理しています。

人工呼吸器をチェックしているタブレット

補助循環であるECMOやIMPELLAは循環維持に非常に重要な装置になります。こちらも1〜2週間となる事もあり、連続した管理が必要になります。装置の構造としては複雑ではありませんが、血液ポンプ、回路や人工肺を使用して血液を送る体外循環のため、血栓ができる可能性があります。このため装置のパラメーターや循環動態の把握も必要ですが、血液データの変化や目視での観察も必要で、数時間おきに点検をしています。

補助循環(ECMO)用チェックシート

代謝の代替として人工透析があります。中でも透析を24時間行うCHDFがあります。透析も体外循環であるため、回路の圧変化などの他に目視による経時変化の観察が必要になります。

近年の医工学の進歩により、生体パラメータや異常検知の精度が向上したことで、安全に重症患者さんの生命維持管理ができるようになりました。しかし、装置で設定できるアラームばかりを頼りにしてしまうと、現在の数値では判断できない途中経過や、目視でないと得られない情報は多くあります。やはり患者さん一人一人の呼吸循環動態、装置の特性を十分に把握した臨床工学技士が五感をフルに使って呼吸循環を管理することが大切です。そしてそれが患者さんにとって真の安全かつ安心できる高度医療に不可欠であると考えます。

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