今回は当科の紹介をしながら、臨床工学技士の新人が約2年間で成長した過程を紹介します。
まず私たちの臨床工学室の業務と、重要と考えているポイントを簡単にご紹介いたします。大きく分けて、透析室業務、カテ室業務、機器管理業務、手術室業務、そして内視鏡業務と、業務別に5つの部門から成り立っています。各部門にリーダーが存在し、彼らを中心に業務、教育などに当たっています。
2012年4月の開院時は透析室、カテ室、機器管理業務の3部門でスタートしましたが、翌年の10月より心臓外科の手術が始まり、2019年4月からは内視鏡室の業務にも携わるようになり、現在の5部門にまで拡大しました。
<臨床工学室の各業務とポイント>
Ⅰ 透析室
私たち臨床工学技士の原点とも言える業務です。当センターの透析室は外来患者さんより入院患者さんが多く、中でもカテーテル治療や心臓手術の患者さんが多いため、重症度も高くなっています。また、集中治療室で行う血液浄化もあります。
ポイント:質の高い生活(QOL)を考え、病態を理解しながら最適な血液浄化方法を考える
Ⅱ カテーテル室
心臓や足の血管のカテーテル検査や治療が最も多いですが、他にもペースメーカーや不整脈治療、また最近は心臓の弁などの構造物に対する治療なども行われています。
ポイント:診断や治療の為の機器が多くあり、その取り扱いを熟知する必要がある。また心臓の治療のため、急変に対応する俊敏さが求められる。
Ⅲ 機器管理業務
私たちとは切っても切れない業務です。院内に1000以上ある医療機器を安全に使用できるよう点検、運用や管理を行い、トラブルに対応しています。
ポイント:集中治療室には様々な病態の患者さんに対して、多く機器が使用されている。その病態と機器との二面を理解しなくてはならない。
Ⅳ 手術室業務
主に心臓血管外科手術で必要になる人工心肺装置のほか、ECMOなどの補助循環装置を扱います。
ポイント:循環、呼吸、代謝と生命を維持させる部分を担うため、各業務を凝縮させた集大成とも言える。
Ⅴ 内視鏡
新たに参入した業務で、まだ1名体制のためこれから人数を増やし私たちの業務を確立させていきたいと考えています。
<業務の重要性>
当センターの臨床工学室では原則各部門ローテーションという形をとっています。理由としては人体を様々な角度(各部門の業務)から診ることで病態や治療方法など、自身の理解を深めていく。
もう一つは当直制度があるためです。こちらの方が重要です。日勤帯は各部署数名で行っていますが、予定の業務が終わると夜間は原則、当直者1人となります。このため当直を行える条件として、緊急透析、緊急カテーテル、集中治療室や院内での機器のトラブル対応ができることとなります。
東京ベイは急性期病院のため循環器疾患の急患も多く、時には心肺停止状態で患者さんが運ばれてくることも少なくありません。この場合、蘇生のため人工呼吸器や補助循環装置などが必要になります。これらの機器を扱うことは、命を救うために非常に重要な役割を担っています。また集中治療室では重症患者が多いためシビアな観察力が求められ、急変時などは適切な判断力や素早い対応力が求められます。

<当直までの道のり>
新卒で入職した“新人さん”は先ず1年をかけて臨床工学技士として基礎である透析室業務、機器管理業務につきます。2年目は循環器領域としてカテーテル室に半年つきます。
残りの半年で各業務の完成度を上げていきます。個人差もありますが、2年から2年半ぐらいで“当直デビュー”となります。
しかし2年程度でこのような急性期を主体とした病院で仕事をこなせる訳がありません。ましてや当直に入ったら1人で対応しなければなりません。忙しく一睡もできない時もあります。心細いです。不安です。悩みに悩みます。しかし苦しい状況をベストな状態でクリアーしていくこと、そして普段の業務で1症例1症例を大切にして経験を重ねていくことが臨床工学技士として成長していくと考えています。
<当直デビューしたばかりの2年生のコメントです>
当直に入る上で臨床工学技士として、一通りの業務をできるようになる事はもちろんのこと、分からない事は先輩方にその都度聞き自分のレベルアップに繋げ安全に業務を遂行できるように心掛けてきました。
