皆さんこんにちは。東京ベイ検体検査室の検査技師です。
一般的に患者さんの目に触れることのない部署であり、検体検査室がどのような所なのか知られていない事が多いと思いますが、当センターの検体検査室はガラス張りで、患者さんや多職種の方からも検査の様子が分かるようになっています。
たくさんの機械が並んでいるなか、顕微鏡に向かって黙々と作業をしている姿は印象的ではないでしょうか。
そこで今回は、私たちが日々、顕微鏡でどんなものを観察しているのかを紹介したいと思います。
●そもそも検体検査とは…
本題に入る前に、まずは検体検査全体について軽く紹介します。
その名の通り私たちは、血液、尿などの、患者さんより採取されたあらゆるものを検体として検査しています。
この検査によって病気の診断や予防、治療効果の判定の手助けをしています。
当センターの検体検査室は24時間体制で検査技師が常駐しているため、外来・入院、救急外来の緊急検査や輸血にいつでも対応することができ、夜間でも日中と同様の検査を受けていただくことができます。
一般検査、生化学・免疫検査、輸血検査、そして今回のテーマである血液検査から構成されており、当センターの検体検査室ではこれら4分野の検査をワンフロアに集約しています。
ワンフロアで各担当者がお互いに連携しあうことで、採血の採り直し依頼や緊急輸血、機器のトラブルにもスムーズに対応でき、迅速に検査結果を提供できる体制となっております。
そして、良質な検査結果を提供するために、測定機器のメンテナンスやデータ管理(内部精度管理・外部精度管理)を行い、検査精度の保障にも努めています。
また、生命が危ぶまれるほど危険な状態を示唆する異常値(パニック値)が認められた場合は医師に電話連絡し、すぐに患者さんの容体を確認できるようにしています。
●いよいよ本題!血液検査について
血液検査では、主に血液中の細胞成分(白血球、赤血球、血小板)を分析しています。
血球算定検査と血液像検査があり、貧血や炎症があるのか、そして、それぞれの細胞成分の形態を調べることで、ウイルス感染や白血病などの血液疾患の診断や治療効果の判定にも役立ちます。
迅速に結果を報告するため、ほとんどの検査項目は自動分析装置で測定をしています。
●血球算定検査 (血算)

写真1
血液は細胞成分と血漿成分からなっており、その細胞成分は主に白血球、赤血球、血小板の3種類です。これらの細胞数やヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値などを写真1の自動血球計数装置で測定することを血球算定検査と言います。
白血球、赤血球、血小板は、それぞれ生命維持のために大切な役割を果たしており、これらの項目の増減により貧血や炎症、出血の有無など全身状態の把握が可能となる非常に重要な検査です。
この装置では、検体をラックに入れて機械にセットするだけで、自動的に測定を行ってくれます。
機械にセットするだけなんて簡単!検査技師は必要なの?と思われるかもしれませんが、測定結果によっては検体不良や機械の故障などにより異常な測定結果となる場合もあります。こういった異変に気付けるのは人である検査技師だけであり、その測定結果が本当に正しいデータなのかを注意深く確認し、報告しています。
そして、たくさんの検体がくる中、その合間を縫って毎日装置のメンテナンスや精度管理を行い、迅速に正しい結果報告ができるよう努めています。
表1.血算の検査項目とその働き

また、Hbや血小板数の結果がパニック値で輸血が必要な場合、同じフロアに輸血担当者がいるため迅速に情報共有ができ、血液製剤の発注の調整を行うとともに、日本赤十字血液センターへの問合せもいち早くできます。
●血液像検査
血液の細胞成分の中でも、白血球は主に好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球の5種類に分類されます。これら5種類を分類し、その比率を測定すること、および赤血球・血小板も含めた細胞成分の形態を観察することを血液像検査と言います。
それぞれの種類によって働きが異なり、病態の変化により出現する割合も異なるため、このバランスをみることが血液疾患をはじめ様々な病気の診断の手掛かりとなります。
当センターでは、先程の自動血球計数装置(写真1)による分類と病気によっては割合の変化のほか、形態に異常をきたすこともあり、その形態変化は機械では検出が困難なために顕微鏡を用いた目視による分類を併用して行っています。
表2.白血球の種類とその働き

●塗抹標本の作製
医師からの依頼や必要と判断されたものは、写真2-Aの塗抹標本作製装置により血液を1滴スライドガラスに落として、薄く延ばし(塗抹)、染色します。
出来上がった標本は写真2-Bのようなものです。
完成までにおよそ30分かかるため、医師から「○○○の有無を確認して欲しい。」などと依頼があった場合はタイマーをかけ、出来上がったらすぐに観察を行い、「○○○が見られました、おおよそ×%です。」のように電話連絡しています。
また、自動で作製されますが、実際に観察してみて、多くの細胞が崩れているような場合は、それを防げる試薬を使用して再度標本を作製しています。

写真2-A

写真2-B
●検査技師による目視
写真3のように顕微鏡を用いて検査技師が白血球の形態を観察しながら、分類を行います。顕微鏡で直に観察することで、機械では分類が困難な未成熟な白血球やウイルス感染などにより形態変化した異型細胞のほか、赤血球や血小板の形態についても確認することができ、より正確で細やかな結果を提供できます。
血液疾患などで出現するまれな異型細胞は判定が非常に難しく、検体検査室のスタッフ全員で確認を行い、参考資料を探すなどして判定を行っています。
新人のスタッフにはディスカッション顕微鏡(2人が同時に観察できる顕微鏡)を用いて、観察に適している部分や各細胞の特徴を丁寧に指導しています。そして、定期的に目合わせを行い、スタッフ間で差が出ないよう努めています。

写真3
いかがでしたか?
今回は私たちが、顕微鏡でどんなものを観察しているかを簡単にご説明しました。
血液細胞の形態は、患者さん一人ひとりで少しずつ特徴が異なりますし、異常細胞の判定にも高い技術が必要です。分類のミスや異常形態の見落としがあれば、誤った診断や治療を行ってしまう可能性もあります。
私たち検査技師は日々多くの標本を観察することで経験を積むとともに、院内外の研修会等への参加や、近隣施設と年に数回勉強会を開催するなど、知識の研鑽と技術の向上に努めています。