内視鏡や手術で採取した検体はどこへ行くの?〜病変の発見は病理検査室にお任せを!~

皆さんこんにちは。病理検査室の臨床検査技師です。

皆さんは手術や内視鏡で採取された検体がどのように検査されているかご存じでしょうか。実はそれらの検体は病理検査室に運ばれて処理し、診断されています。
皆さんは内視鏡や手術のあと、自分から採取された検体がどのように扱われるのか、どのように診断されるのか気になりませんか?
今回は病理検査室が適切な診断結果を出すためにどのようにして病理組織診断のための標本を作製しているのかご紹介します。

〇病理組織診断とは

病理検査とは、患者さんの身体の一部を検体として採取し標本を作製し、診断をする検査です。標本作製は臨床検査技師が、診断は病理専門医が行っております。
私たち臨床検査技師はより診断しやすい標本を作るために日々やりがいを持って業務に取り組んでおります。

〇病理標本ができるまで

まず検体は、手術室や内視鏡室などで採取後、病理検査室に運ばれて、約1晩ホルマリンに漬けられます。ホルマリンがよく染み込んだら、専用の機器を使用し圧力をかけてパラフィンというロウソクのロウの様なものを検体に浸透させます。

パラフィンを浸透させた検体は写真1のような状態になります。左が内視鏡検査で採取した検体、右が手術で採取してきた検体です。

写真1

それを型に入れ、さらにまわりにパラフィンを入れて固めることで、写真2のような四角い「ブロック」という状態にします。これを包埋といいます。
簡単に見えるかもしれませんが、病理診断は検体を採取した部位はもちろんのこと、正しい面で包埋することが非常に重要になるのです。

例えば検体の番号が入れ替わってしまったり、他の検体が混ざってしまったりすると全く違う診断結果になってしまいます。また、適切な面で包埋をしないとどのくらい腫瘍が浸潤しているかなどの判定ができなくなることがあります。
ですので、それぞれの検体ごとに正しい知識をもって慎重に処理する必要があります。

写真2

次に薄切という工程にうつります。薄切は文字の通り、ブロックにした検体をミクロトームという機器(写真3A)を用いて数μmの薄さに切る作業です(写真3B)。たった1μmの差で標本にした時の見え方が異なります。髪の毛の太さが1本50~100μmですので、それと比較すると非常に繊細な手技が必要なことが分かると思います。
その日の気温や湿度に合わせて切るスピードを調整したり、息を吹きかけたりしてブロックを膨張させ厚さを調整しています。

写真3A

写真3B

薄切したものは水槽に浮かべ、それをスライドガラスに貼り付けます(写真4)。

写真4

そのスライドガラスを専用の染色液で染色することで検体の構造や細胞が見えるようになります(写真5)。それを病理医が顕微鏡を用いて診断します。
標本作製後も病理医と連携をとり、必要に応じてさらに検体の深くまで薄切をしたり、ブロックを作製しなおしたりして標本として観察する部分を変えることもあります。

その工程により、詳しく観察する必要があると判断された部分についてさらに多くの情報が得られ、診断結果の精度の向上に繋げることができます。
また、診断結果によっては特殊な染色の追加、遺伝子検査などもこの病理検査で用いた検体を使ってすることができます。

こうして診断された病理診断結果は、患者さんを直接診察している臨床医に届けられ、臨床診断の手助けや治療方針の決定に役立てられます。

写真5

今回病理組織診断の標本作製の工程の一部をご説明しました。標本作製には、細心の注意と精緻な処理を求められます。もし各工程で何か1つでもミスがあれば、正確な診断ができなくなり、場合によっては患者さんが適切な治療を受けられなくなってしまう可能性もあります。

私たち臨床検査技師は、病理検査室に届いた検体一つ一つに対して、今まで培ってきた技術を最大限に使って、正確な診断と適切な治療につながる標本作製に臨んでいます。
当院で検査、治療を受けられる患者さん、検体を採取してくださる先生方、どうぞ安心して病理診断の結果をお待ちください。

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