こんにちは。生理検査室です。
生理検査室は臨床検査室に所属する部門の一つであり、心電図検査、超音波検査、脳波検査など、様々な種類の検査を行っています。今回はその中でも腹部超音波検査にスポットライトを当ててご紹介します。
●超音波(エコー)検査とは
その名の通り「超音波」を用いて行う検査で、非侵襲的(身体を傷つけない)な検査です。超音波とは、周波数が高く人間には聞こえない音のことで、性質の違うものに当たると反射する特徴があります。例えば、イルカやコウモリといった動物はこの超音波を出すことで、えさとなる昆虫や魚などを見つけています。検査で使用する超音波には痛みや放射線被ばくがなく、妊婦さんやお子さんも安心して受けていただけます。当センターの生理検査室では腹部、血管、乳腺や甲状腺などの体表、心臓など様々な部位の超音波検査を行っています。
●腹部超音波検査
お腹の中には、肝臓や腎臓のほかにたくさんの器官があります。お腹にゼリーを塗り超音波を当てることで身体の中を観察し、異常がないかを検査していきます。
初めてだと何をされているか分からず不安に思われるかもしれませんが、検査前に何の検査なのか簡単なご説明をし、私たちが触れる時などは驚かれないようにお声がけをするようにしています。
<腹部超音波検査の実際の流れ>
- お腹全体が見えるように服を捲り、仰向けや横向きに寝て手を頭の方へ上げていただきます。
- ゼリーをつけて、機械をお腹にあてて動かしながら検査します。
- 検査中は息を吸ったり吐いたり止めたりのご協力をお願いします。
- 必要に応じて横を向いたり座ったりしていただきます。
- ゼリーは殆ど水でできているので、拭き取ってしばらくするとべたつきは無くなります。

<しっかり評価するために患者さんご本人の協力も不可欠です〜「吸って〜、吐いて〜」の連携作業〜>
超音波は骨や空気があるとその奥にある臓器にまで届かないため、観察ができません。そこで患者さんご本人に息を吸ったり吐いたり協力していただくことで、横隔膜の動きに連動して見えにくかった部分が観察しやすくなります。時には数秒ずつ息を止めていただくこともありますが、お腹の中をしっかりと観察するためにとても重要なことなのです。

検査を受ける理由は皆さんそれぞれですが、今回は腹痛がある場合に関してお話します。
●腹痛があるとき
一言で腹痛と言っても原因は様々です。例えば心窩部(みぞおち辺り)の痛みだと胆嚢や膵臓など、下腹部の痛みだと虫垂や泌尿器系などに原因がある可能性を頭に置いて、「異常」を探しに行きます。
その中でも胆石は、検診を受けられる方にも発見されることが多いものの一つです。普段無症状であっても、検査を受けて初めて「胆石の存在」を指摘される場合もあります。
胆石とは胆汁の成分の一部が結晶化したもので、これらが胆嚢や胆管を傷つけることで痛みが起こります。この胆石ですが、レントゲンやCT(コンピュータ断層撮影法)では周りにある胆汁と画像上で同じ色に描出されて判別しづらいことがありますが、超音波検査では白黒に分かれて描出されるためはっきりと観察できます(図1)。

図1
しかし、消化管のガスの影響で観察しづらい臓器などは超音波検査よりもCTの方がしっかりと観察できるため有用なことがあります。
このように生理検査室で行う超音波検査や放射線科で行うCT検査などではそれぞれ得意な分野が異なる場合があります。患者さん一人一人の状況に応じて複数の検査を効果的に組み合わせることで「腹痛の原因」を突き止めることができます。
検査時に使用するのは超音波の機械とゼリーだけと準備するものが少なく、機械さえ持ち運べるのならどこでも検査ができます。食事を抜いていただく場合もありますが、その他に事前に準備することは基本的にありませんので、いつでもできる検査でもあります。
このように、超音波検査は非侵襲的ということだけでなく、負担の少ない検査という特徴もあります。
今回は腹痛の症状があった場合のお話をしましたが、無症状の場合や急激に食欲が落ちた場合などでもなにか病気が潜んでいることもあります。中には超音波検査を人間ドックで初めて受けたという方もいらっしゃると思います。超音波検査や心電図検査など複数の検査を併せて行う人間ドックは、さまざまな病気の発見に繋がります。検診で肝臓内に腫瘍が発見され、その後すぐに他検査でも精査し、がん研究センターへ紹介・治療開始となった例がありました。早期発見・早期治療のためにも検診はぜひ受けていただきたいと思います。
