細菌検査室の検査技師です。今回は3症例を写真とともにクイズ形式で紹介します!我々細菌検査室は検査をする上で、ただ検査をするだけではなく、医師からの患者さんの詳細な情報があるとさらに良い検査ができる可能性があります。その様子を当センターの感染症内科織田医師とのやりとりを交えて、感じてもらおうと思います。
こちらで紹介する顕微鏡写真はグラム染色により細菌を染めたものです。グラム染色とは細菌検査の代表的な染色方法です。青い色素と赤い色素で染め分けることで色の違いによって菌を大きく2種類に分けます。青色に染まった菌をグラム陽性、赤色に染まった菌をグラム陰性と呼びます。さらに菌の形によって2種類に分かれ、球状の形をしているものを球菌、棒状を桿菌と呼びます。
ではさっそくですが、グラム染色でどんな菌が見えるのか?検査技師の私と感染症内科の織田医師とのやりとりを覗きながら、皆さんも一緒にお考えてみてください!
Case 1〜発熱を伴う右上腹部の違和感〜

…ということで、私のような1感染症内科医では肝臓の膿を採取できないので、その道のプロフェッショナルのスーパーDr.Fにお願いして、患者さんの肝臓に針を刺してもらって取ってきた貴重な膿なのですよ。




Q1 グラム染色の写真






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Case 2~尿道から出た白い膿の正体~








Q2 グラム染色の写真

A2

この写真では、赤くて丸いグラム陰性球菌が見えますね。
正解は、尿道に感染したNeisseria gonorrhoese(淋菌)でした!そら豆状と表現される球菌が2つ連なった形が特徴的です。写真では菌が白血球の中に観察されています。これは貪食と言って微生物などの病原菌を白血球が取り込み、分解し殺菌している様子です。淋菌は冷所に弱い菌なので、疑っているときには、冷やして保存するのは避けなければなりません。

Case 3~微熱が続いて咳と痰が目立ってきたら~





Q3 グラム染色の写真








A3

結核菌はグラム染色では染まらない為、染色色素が抜けた桿菌が観察されます。このように染まらない桿菌が幽霊を連想させる為、Ghost mycobacteria と言われたりします。 チールネルゼン染色という特殊な染色を行うと結核菌は赤く染まり顕微鏡で観察できるようになります。



おわりに〜検査技師の視点から〜
顕微鏡でのぞいたミクロの世界、いかがでしたでしょうか。細菌検査室の日常を、少し感じていただけましたでしょうか。
普段の検査ではなかなか気づかないことを医師の違った視点から指摘をもらって気づかされることもありますし、逆に臨床の視点では気付きにくかったことを顕微鏡所見から指摘できることもあります。そのためには日頃から臨床医と検査技師が密にコミュニケーションをとり、ともに知識を高め合うことが重要です。
これからも、より良い医療が提供できるように当センターでは多職種が連携して1人1人の患者さんの検査、治療にあたって参ります。