こんにちは、東京ベイ臨床検査技師の野島です。
皆さん、最近よく乳癌について耳にすることはありませんか?メディアのニュースでも、もしかしたら皆さんの身の周りでも耳にする機会が増えてきているのではないかと思います。私自身、検査室で乳腺エコーを担当しておりますが、ここ数年は乳癌の検査に来院する方も増えてきたと実感しています。今まで検査を受けたことが無い方も多いのではないでしょうか?また、授乳中の方は検査が受けられるのか、検査による影響はないのか気になる方もいるのではないかと思います。
“癌”と聞くと、後先を考え不安になるのが自然です。初潮年齢が早い、閉経が遅い、出産経験がないなどとともに乳癌の家族歴が乳癌のリスクとして挙げられています。現時点では女性の癌罹患率は乳癌が1位ですが、早期発見であれば治癒できる可能性が高いことから、死亡率は大腸、肺、膵臓、胃に続いて5番目です。乳癌は癌の中でも、自分で見つける可能性が高い癌のひとつといわれています。それはなぜかというと、乳房は自分で触れることができる体の表面にある臓器だからです。
○どうして乳癌検査を受けようと思ったのですか?
検査前に必ず気になる症状があるかお聞きしますと、
・気になったことはないけど健診で引っかかってしまった
・たまたま触れた時や横になった時にしこりに気づいた
・寝たときに当たって固いものに気づいた
・電気が走ったみたいに痛い時がある!
・テレビで見て心配になったけど、自分では怖くて触れられない!
・自分でふれてみるほど、骨かしこりかわからない!
・触れてみたら全部がしこりみたいに感じてきた
・乳頭からなにか液体が出てきた
・往診の先生に何かあるね?といわれた
という声を聞きます。
皆さん検査を受けることになったきっかけは様々のようです。
検査に行こうと思い立つのはふとした瞬間であったり様々です。
「以前から胸のしこりに気づいていたけど病院が苦手で来ることができなかった」、「痛みがなかったので癌とは思いもしなかった」、「癌かもしれないと思うと恐れて受け入れられず病院へと踏み出せなかった」という方もいます。悪化により耐えれなかったり、炎症や潰瘍が手に負えなくなったのに周囲の方が気づいて病院へ来ることもあります。結果的に手術できないほど癌が大きくなってしまっていたり、癌がほかの臓器に転移してしまっていることがあります。そんな時、病院に来るのがもっと早かったらと私たち医療者側も悔しさを感じます。私は臨床検査技師として、一人の女性として、乳癌が疑われる患者さん達が早く検査をしてベストな治療を選択できるように乳癌検査についてお話したいと思います。
○乳癌の検査法は?
・マンモグラフィー
大半の皆さんがX線検査(レントゲン)を経験したことはあるかと思いますが、それと同じです。特殊な装置を使って、乳房を挟んで撮影します。癌などの異常があると影や白い粒が写るため、触っても分からない癌の発見に役立ちます。ただし、乳腺の濃度や構築によって影響を受けやすい為、乳腺が密な方は分かりにくいことがあります。
放射線といえば被ばくの危険性が気になりますが、乳房だけの部分的照射のため骨髄への影響や白血病などの発生はなく、一般の方が一年に受ける自然放射線量の1/50程度です。健康上の影響はほとんどないと考えられています。
・乳腺超音波(エコー)検査
乳房全体にゼリーを塗り色んな方向から超音波をあてて撮影します。痛みもなく、若い方や乳腺の発達している乳腺密度の高い方などに有効で放射線被爆もなく、妊婦の方や妊娠の可能性がある方、授乳中の方も受けられる検査です。1cm前後の小さな腫瘤の発見に優れ、腫瘤内部の状態も観察することができます。


○検査で悪性が疑われたら?
実際に疑いが強い場合は細胞や組織を取り、顕微鏡で詳しく見る精査に進みます。
・細胞診
採血と同じ太さの針を腫瘤に刺し吸引して細胞を取りガラスに吹きつけたものを染色して顕微鏡で観察します。
・組織診(生検)
細胞診より太めの針で取るため、局所麻酔をして検査を行い組織の一部を取り標本化し、顕微鏡で観察します。また、悪性の場合は乳癌の性質や薬剤の感受性予測などについても診断します。
どちらとも顕微鏡標本作製に日数が必要な為、結果が出るまで約1~2週間かかります。
市の検診は30歳以上の方に奨められますが、住んでいる地域によって検診の内容や条件が異なります。毎年検診を受けていても、稀に進行が速い種類もあり発見が遅れてしまいます。年に何回検査を受ければいいか正解はありません。また、時間がとれず検診を受けられない方もいらっしゃるかと思います。検診を受けていないからといって全く診てもらえないことはありません。各施設によりますが、診察や検査が可能である病院を聞くのも手だと思います。
時にはセルフチェックを行うことで早期発見に繋がることもあります。とはいえ、急に触れても乳腺の表面が凹凸していて分かりづらいことも多々ありますので、検査で自分の乳房がどうなのか、変化がないか、新しいしこりができていないか時々チェックすることによって早期発見できる可能性もあります。少しでも自分の胸に気になる症状がある方、どうか乳癌の検査を受けて下さい。