集中治療室に薬剤師??〜集中治療室の薬剤師の仕事〜

皆さんはICUに薬剤師がいることをご存知ですか。薬剤師の仕事といえば服薬指導がまず思い浮かぶと思います。しかし、ICUに入室する重症患者さんに服薬指導をすることは人工呼吸器装着中、鎮静薬で眠っているなどの理由から困難であることが多いです。ではどのような業務を行っているのでしょうか。今回は具体的に薬剤師がICUで日々のどのような業務を行っているか紹介していきます。

・薬剤選択、薬剤投与設計

ICUでは重症患者さんが多く、薬剤の体内での動きも常に変化しています。このため、個々の患者さんに合わせた薬剤選択や薬剤投与量が必要になります。そこで薬剤師は薬剤の特性や排泄経路などを考慮した上で、集中治療科や他科の医師を含む他職種と協議し、薬剤選択や投与設計を行っています。

・投与経路(ルート)管理

重症患者さんでは内服が困難、全身状態を保つ為などの理由から、多くの注射剤を投与していることがあります。しかし、投与経路は限られているため、異なる薬剤が同じ投与経路から注入されることも少なくありません。性質の異なる薬剤を同じルートから投与すると沈殿物が生成される、薬剤の効果がなくなるなどの現象が起こることがあります。このようなことを防ぐため、薬剤師は同じ投与経路から注入しても安全な薬剤の組み合わせの情報を提供しています。

・薬物相互作用の確認と情報提供

薬剤は組み合わせによってはそれぞれの効果を減弱させたり、増強させたりすることがあります。これを相互作用と言います。特に重症患者さんでは前述したように多くの薬剤が投与されているため、相互作用を引き起こす薬剤を投与せざるをえない場合があります。薬剤師はそのような組み合わせの影響をできるだけ少なくする薬剤の提案や相互作用に関する情報提供などを行っています。

・副作用モニタリング

薬剤を投与していると治療に必要な作用(主作用)だけでなく有害な作用(副作用)が現れることがあります。ICUでは多くの薬剤を使用しているので副作用が現れる可能性も高くなります。薬剤師は検査値や薬剤血中濃度等のモニタリングを行うことで副作用の回避、軽減などに努めています。

その他にも多職種全員での回診やカンファレンスへの参加、持参薬の確認、薬剤管理などを行っています。ICUの薬剤師はこのように専門性を活かしながら、チームの一員として他職種と連携しています。

ICUスタッフから見た薬剤師

「ICUにいる患者は腎機能などで薬剤投与量を微調整する必要があるが、その際にこちらからではなく、薬剤師から自主的に投与設計をしていただけるので、大変助かっています」(集中治療医 8年目)
「医師では見落としやすい薬物相互作用を薬剤師の視点で確認してくれる」(集中治療医 8年目)
「薬剤師のおかげで薬の副作用や使い慣れない薬剤の投与方法・投与量、薬剤血中濃度のモニタリングを行った際の投与量調整が朝の回診中にできる」(集中治療医 13年目)
「薬剤師が持参薬の確認や薬剤血中濃度や副作用のモニタリングをしてくれるので、治療に必要な情報をタイムリーに共有できる」(内科系レジデント 5年目)

◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(集中治療部門)

メニュー