今回はICUから、”外部レジデント”についての紹介です。
そもそも、ICU(アイシーユー、集中治療室)ではどのような医師が働いているのか、ご存知でしょうか。ICUは病院の中でも特に重症な方、人工呼吸器や血液透析など特殊な機械を用いる治療が必要な方が入院される病棟です。東京ベイ・浦安市川医療センターのICUには計14床のベッドがあり、救急外来(ER)、病棟、手術室から集中治療を必要として入室される方々の治療に、昼夜問わずスタッフは尽力しています。多くの薬剤や機械を扱い、刻一刻と変化していく病状を察知して最善を尽くす、そんなICUの医師たちは、当センターでは”アテンディング”、”フェロー”、”レジデント”の3段階に分かれています。
“アテンディング”は、米国では臨床研修を終え、専門分野の認定資格を持ち、独立して働いている医師のことを指します。日本では”指導医”と呼ばれることが多く、その名の通り、後進の医師たちに専門的な”指導”をする立場です。当センターICUでは部長の則末(のりすえ)ら2名の医師がアテンディングとして、ICU全体の診療から病棟運営、教育まで手掛けています。“フェロー”は、一般的には大学教員や研究員などの研究職をしている人に与えられる職名やその称号ですが、当センターICUでは各々の得意な基礎分野をもった若手のうち、さらに集中治療を専門として勉強している医師です。現在は3名の医師がフェローとしてICUのチームを統括し、診療とレジデントの指導に当たっており、いずれはアテンディングとなる存在です。
さて、今回の本題である”レジデント”は、かつて病院に”居住(resident)”して臨床訓練を受ける医師とも言われた、いわゆる研修中の医師です。日本の病院では病院ごとに違いがあり医師国家試験に合格して初めて働き始める初期臨床研修医(通常2年間)を”ジュニアレジデント”、その後に専門領域の研修を行う後期研修医(通常3年目以降)を”シニアレジデント”と呼んだり、後者をシンプルに”レジデント”と呼んだりしています。
当センターICUのレジデントは、卒後3年目以降の後期研修医が大半を占めていますが、その中身は多岐にわたります。大きく分けると、院内と外部からのレジデントが在籍しています。“院内レジデント”は内科、外科、ERなどの各科から研修ローテーションの一環として、重症患者への対応を学びにきた医師です。ICU管理を自ら経験することで、ICUの医師の考え方・やり方を知り、外来・一般病棟管理に活かされていきます。また自分の科の知識をICUで役立てたり、ICUと顔の見える関係となって連携が強まったりと、東京ベイ・浦安市川医療センター全体の診療能力向上に繋がっています。
そして、今回ご紹介する”外部レジデント”は、院外から当センターICUに集中治療管理を学びにきた医師です。北は秋田から南は沖縄まで、全国各地から集まるため、まるで自分が千葉にいることを忘れてしまいそうなくらい、各地の方言が回診やベッドサイドで飛び交います。地域によって頻度の違う病気や感染症もあり、それぞれの経験が活かされる場面もあります。また、卒後学年は上が医師10数年から下は医師3年目までと幅広くなっています。しかし出身大学や所属病院、学年に関係なく、全員が同じ”レジデント”という立場で働いています。
外部レジデントについて特筆すべきは、その人数の多さです。レジデント全体では毎月10~12人が在籍しますが、その中で3人、多い時には5人、つまり半数近くが外部生になります。数か月の短期研修がほとんどのため、入れ替わりが多く、年間を通せば10数人になります。これだけ多くの外部レジデントが集まる理由、それは当センターICUの特徴に他なりません。
外部レジデントが、当センターICUでの研修を希望した理由には、アテンディングやフェローと共に行われる教育的なベッドサイド回診で、鑑別診断の能力や、病態生理の理解を重視した内科的アプローチを学べることがありました。回診プレゼンテーションはシステマティックに行われるため些細な抜けも見逃されず、ともすれば忘れてしまいがちな基本的な生理学的知識を重視しているため、回診中にアテンディングからのミニレクチャーが突然始まることもしばしばです。また、診療中に生じた疑問について即座に検索・解決する対応能力を磨き、互いに教え合う環境があります。他にも、時には大学病院にも引けを取らない心臓血管外科の手術後の方や、重篤な方への診療を経験できることも魅力の一つと言えるでしょう。
そんな当センターICUへ、それぞれの目的を持って集った“外部レジデント”たちは、数か月単位での研修の間に、東京ベイ・浦安市川医療センターのICUの考え方・やり方を知り、やがて戻った自分の病院で、その経験を多くの方を救うために活かしています。そして、ICU研修で得られた”東京ベイICUレジデント”の繋がりを大切にし、千葉から遠く離れた地にあっても互いに切磋琢磨しています。
この経験と繋がり、両方の大切さを知っているからこそ、当センターICUは”外部レジデント”にも広く門戸を開き、”外部レジデント”もまたその門をくぐって、今日もまた当センターICUで研修をしています。