集中治療室(ICU)からの第7回web通信は、当ICUにおける回診スタイルについてです。
われわれの回診は、集中治療科、各診療科の医師、看護師、薬剤師、リハビリの療法士、臨床工学技士を含めた多職種が集まり、それぞれの患者のベッドサイドで状態を確認しながら行っています。
第1回web通信にもあったように、当センターのICUはクローズドICUというシステムで、ICUに常在する集中治療医が中心となり、ICUに入院するすべての重症の方の治療管理をしています。
そのために、われわれ集中治療医が中心となり、多職種が力を合わせて、患者さんにとって最良のゴールが達成できるように、治療方針を密に話し合っています。
ICU入室時、病気の状態が変化したときはもちろんですが、毎朝ベッドサイドで行っている回診が、特に重要な治療方針の決定の場となります。
多職種のチーム全員で毎日ベッドサイドを回診することの重要性
この回診は、ベッドサイドで、多職種で行うということに意義があると思っています。
集中治療医はプレゼンテーションをする前に、身体所見、朝までにおきた出来事や検査所見を確認し、その日必要と考えらえる治療のプランについて提示できるように準備をしています。
米国式の標準的フォーマットに乗っ取り、各臓器で見落としがないようにプレゼンテーションを行います。
そのプランに対し、各専門家やからもそれぞれの立場からの意見をいただき、最終的にその日に行う治療方針を決定していきます。
もちろん、各専門家も回診前にそれぞれ患者に会い状態を確認していますが、ICUに入院している重症患者は刻々と状態が変化しているので、話し合いを離れたカンファレンスルームで行うよりも、実際にベッドサイドで行うことでその時点での状況がわかります。
さらに、複数の人の目で確認することにより、一人では気付けなかったことに気づくことができます。
また、気になることがあれば身体所見を取り直したり、ベッドサイドで行うことができる検査(エコー)や薬剤への反応性を確認したりすることができるので、よりリアルタイムに治療方針を適切に決定できます。
クローズドICUでない一般的な日本のICUでは、主治医とそれぞれの各職種で、患者さんのその日の予定などを話しあいますが、ベッドサイドに全ての職種が集まって回診するということは、通常行われません。
またクローズドICUであっても、多くは集中治療医とそれぞれの専門家のみで、治療方針が決定されます。
当センターICUの大きな特色として、多職種が毎朝回診に参加し、患者本人や家族の気持ちや看護上の問題、リハビリの問題点、薬剤使用上の注意なども鑑みて、より患者の現状に即した治療方針を決定することが挙げられます。
ICUに関わるスタッフ達に聞く!東京ベイICU回診の魅力
「その場で診察できる、呼吸器設定やエコー、身体所見、患者に触れることができる」(集中治療医、7年目)
「ベッドサイドで診察を教育することができ、それがスタッフの記憶に残りやすい」(集中治療医、13年目)
「今日やること、治療ゴールの共有ができる」(心臓血管外科医、8年目)
「看護師、リハビリに現在の状態をすぐに聞くことができる、薬剤師に薬剤の投与法や投与量のことなどをすぐに相談できる」(心臓血管外科医、13年目)
「医師の考えがわかる、本日の治療方針が確認出来る、看護師としての考えを伝えられる場面がある」(看護師、9年目)
「回診時に当日のタイムスケジュール(リハビリ、透析、検査、清潔ケアなど)を組むことで看護業務がスムーズに行える」(看護師、13年目)
「(疾患ごとに)その分野のスペシャリストに聞くことができる」(看護師、22年目)
「(その日の治療における)TO DOを確認できる」(看護師、17年目)
「主治医グループがくるのでその場で方針を共有出来る」(看護師、5年目)
「リハビリと方針を踏まえた1日の流れの調整ができる」(看護師、7年目)
「医師に自分の意見をすぐに言うことができる(患者の意見を代弁できる)」(看護師、19年目)
「その場のアセスメントをすぐにでき情報共有がすぐにできる」(薬剤師、5年目)
「実際を直接(患者さんを)みて判断ができる」(薬剤師、4年目)
「病態がどう変化しているか、治療がどう変化しているかをまとめて理解できるので、それをリハビリ計画ができる」(理学療法士、4年目)
「看護師も含めてリハビリの計画をたてることができる」(理学療法士、6年目)
「(患者さんの)その日の方針がわかる」(臨床工学技士、10年目)
文責:救急集中治療科(集中治療部門) 鍋島 正慶/Tadanori Nabeshima
【関連記事】
◆ 真のプロフェッショナルが管理する集中治療室
◆ 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(集中治療部門)