辞書を引くと、“動悸”とは「胸がどきどきすること。心臓の鼓動が平常よりも激しいこと。」とされています。動悸がすべて病気なのかと言うと、我々は緊張したり、体を動かしたりしても動悸を感じることがあり、経験的にこれらは病気でないことを知っています。しかし、確かに病気により動悸が生じている場合もあります。

一言に動悸と言っても、実はいくつかのパターンがあることに気がつきます。

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    いつの間にか始まり、それほど速くはないが強く鼓動を感じるもの。
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    脈が飛んで胸が詰まるような症状となるもの。
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    開始がはっきりしており、脈拍も明らかに速いもの。

あなたの感じている動悸はどのようなパターンでしょうか。

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    は身体活動中に感じることは少なく、就寝した時や一人でいる時に感じることが多いようです。心電図を測定しても原因となるような不整脈を認めることはなく、ほとんどの場合は二次的なものか、精神的な要因によって生じています。このような動悸の場合にはあまり心臓の病気を疑う必要はないように考えます。
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    のパターンの動悸もよく遭遇しますが、この場合はほぼ期外収縮という不整脈が原因となっています。基本的には経過観察でよいものですが、最近はあまりに頻度の多い場合には心機能低下の原因となる可能性があることが報告されており、1日中持続しているようであれば、治療対象となることがあります。
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    の動悸は病気(不整脈)である可能性があります。多くは生命を脅かすものではありませんが、失神や血圧低下を伴うものには注意が必要です。動悸が病気(不整脈)であることを証明するには動悸中に心電図を記録することが必要となりますが、動悸の頻度が低い場合、これがかなり難しくなり、不整脈診断における大きな関門となります。1日間のホルター心電図では当然記録はできないため、当院では頻度によって1週間のホルター心電図、イベントレコーダー(携帯型心電計)などを使い分けています。また金銭的に余裕があれば、ご自身でイベントレコーダーをご購入され、動悸症状出現時の心電図を記録される方もいます。

当院で治療した患者さんを御紹介します。50代の女性の方でしたが、受診1年ほど前から動悸を認めるようになりました。当初は持続時間が1~2分程度でしたが、徐々に延長。海外旅行中に2時間ほど動悸が持続したことを機に当院を受診されました。

突然始まり、突然止まるということ、明らかに頻脈(脈が早くなる)になることから不整脈による症状が強く疑われました。受診当時は動悸の頻度が2~3か月に1度ほどでしたので、1週間連続記録ができる特殊な心電図でも動悸時の心電図を記録することはできませんでした。

そのため、イベントレコーダーを用いたところ、動悸がの心電図が記録できました。解析の結果、『心房頻拍』の診断に至ることができました。その後さらに動悸発作頻度が増加したため、カテーテル治療(アブレーション)を予定しました。

一般的に不整脈では心臓内の電気の流れが異常になっています。この方の場合には、右心房の一部から異常な電気信号が起こっていることが頻脈の原因でした。さらにその場所は心臓内の電気伝導に大切で、通常通りの直接治療(異常発電部位の焼灼)では追加治療としてペースメーカーが必要になる危険性が高いことがわかりました。そこでこの患者さんには、対側にある血管の中から間接的に治療を行いました。この治療は無事に終了し、患者さんの動悸症状は消失しました。

辞書のように動悸を一括りにしてしまうと、その中には様々なものが含まれてしまいますが、それがどんな動悸なのか、もう少し詳しく観察してみると、それが病気なのか、そうでないのかを解くきっかけとなるのではないでしょうか。

2020年8月

東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科 牧原 優

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